第19話: 特殊防具がほしい。
「こんにちわ、ドルネコさん」
「いらっしゃいやせ、ミリアお嬢様」
魔封石の製品を探しに来た俺達を、装備屋のドルネコさんは相変わらずのゴマすりのポーズで迎え入れてくれた。
「今日も奥の部屋を見させてね」
ミリアはマリアちゃんを連れて一直線に奥の部屋へと行ったが、俺はドルネコさんに呼び止められる。
「ダンナ、こりゃまた可愛い子をお連れで……」
マリアちゃんのことであろうか? 確かにマリアちゃんは可愛い。
お淑やかなうえに膨よかな胸。
なおかつ萌キャラ要素まで持ち合わせたパーフェクト美少女である!
「ダンナ! 両手に華でやんすな。さすがでやんす」
「いや、そう言うのじゃないですよ」
「リュージ早く来て、今日はマリアの服を見てもらうわ」
「え? わかった、今いくよー」
俺の魔封石製品を買いに来たはずが、マリアのファッションショーに変わっていた。どうしてこうなるかな……。
「マリアはもうちょっと色っぽい服着たほうがいいわよ、いつも幼いカッコじゃだめよ」
「いやですよ、私にはそんな服似合いませんから」
ちょっと待て! マリアちゃんにそんな際どい服を着させる気か!
「ほら、更衣室で早く着替えて!」
「……お姉さまこれ短すぎます、これじゃパンツ見えちゃいます」
スカートに手を当てて、恥じらいながら出てくるマリアちゃん。
これは……! ギャップ萌え!
「これならリュージなんかイチコロよ!」
「そうですか? リュージさんって、こういうのが好みなんですか?」
「いや~その~」
認めたくないものだが……お前は正しい!
「じゃ次」
「もうイヤです」
「勝負は私が勝ったんだから言うこと聞きなさい」
「もう~これが最後ですよ~」
まだ続くのかよ……、と思いつつも見たいという欲望が俺を襲う。
そして気がつけば真横に居るドルネコさん!
ドルネコさんは軽くうなずいてくる……、心が通じ合った……、そんな瞬間である。
「ところで、アレの効果はどうでやす?」
「あれって?」
「魔封石パンツっすよ」
「ああ、効果ありすぎて、あの子に悶絶喰らいました」
あのパンツは見事な封印力で俺の全身強化を邪魔してきた。
あんな使えないものは捨てちまったぜ! なんてことは言えないな……。
あれ?……もしかしてパンツの返品出来たかな!?
「ドルネコさん、他に魔封石が使われてる防具ってあります?」
「そんなに気持ちよかったでやんすか。えーと、ココらへんの盾と防具が魔封石製でっせ」
「う~ん、……アクセサリーとか小物系は無いかな?」
「そこの箱のガラクタ品ぐらいしか無いでやんす」
「ドルネコさんこれは! 『手錠』じゃないですか!?」
「はい、手錠でやんす。衛兵にでもなるんでやんすかい? ダンナ」
「それは秘密! 特殊な使い方をするんでね」
「わかりやすぜ、オラにはわかってしまいやんす。フフフ」
本当にわかっているのかな?
うーん、実験の為に予備はあったほうがいいな……。
『ガラガラ、ガサガサ』 実験のために予備があったほうが良いと考えた俺は、かさばったアイテム達をどけながら手錠を探し出す。
「で? ダンナ。……どちらの子と使うんでやんす?」
「――あった! 2個目あったよ!」
「おおお、ダンナ。そういうことでやんすか!」
「そう! 2個貰おうかな……おっちゃん幾ら?」
(お前は既に負けている!)
値段交渉は最初が肝心である!
まず1個めを値切りに値切って、その後に「2個買うから安くしてくれ」と更に値切るチャンスを俺はのがしてしまった。
後手を踏んだ俺は、またボッタクられると落ち込んでいた……
「ダンナとは気が合いそうでやんす! 今日だけはアニキと呼ばせていただきやす」
なんだ?
「アニキからはお金は頂けやせん。無料でいいでやんす!」
「なにっ! 無料でいいのか!?」
タダより怖いものはないと言うが、きっと俺の交渉スキルが勝手に発動したに違いない! 異世界と言えばチートスキルは付きものだ。これは俺のパッシブスキルなのだろう!
「アニキ! ムチもつけちゃいやんす、もちろんサービスでやんす」
洋物映画にムチ使う主人公は居たが、俺にはエクスカリバーがある。
異世界冒険といえばやっぱりカッコイイ武器と相場は決まっている!
しかし今のところエクスカリバーをうまく使えないから、当分は己の体を武器とするしかないけどな。
「ムチは要らないよ、俺にはもっとすごい武器があるんだ。それは己の肉体!」
「よほど自信のブツを持ってるんでやんすな、アニキ!」
ドルネコのおっちゃんは言葉のナマリで聞き取りにくいし、話が噛み合わない事が多々ある気がするが……まあいいか。
「リュージ、買物は終わった?」
「おう、もう終わった。早く実験したい、やりにいこうぜ」
この手錠を使ってこれから実験だ。
俺の感が正しければ、これで一皮むけるはずだ。
「じゃ、私が最初にご相手してあげましょうか?」
「おう、いいじゃねーか! 俺の技で腰抜かすなよ」
「ハァ! ハァ! ハァ! ハァ!」
「ドルネコさん? 息が荒いですが、大丈夫ですか?」
「勿論、大丈夫でやんす……」
帰り際にドルネコさんは握手を求めてきた。
俺は右手を差し出すと、ドルネコさんは両手で手厚く握手してくる。
「ありがとう、やんす! がんばってくれやんす」
タダで頂いた上に、手厚いお礼までしていただけるなんて……。
最初はこのおっちゃんに騙されそうになったけど、実はいい人だった。
俺はドルネコのおっちゃん、好きになったぜ!