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第17話: 全身強化をしたい。

「気づかれましたか?」


 気がつくと、またマリアの膝枕の上にいた。

 なんか気持ちいい夢を見ていてスッキリした気がする。


「うん、また膝枕ありがとうね、おかげ様ですごくスッキリしたよ」


 ん? あの後何が起きたんだっけ?


 俺は下半身を確認する。

 大丈夫だ! 痛みは消えている。

 

 うん、覚醒もしていない。


「マリアはすごいな、鉄壁ディフェンスだと思ったのにどうやって崩したんだ?」「ちょうどそこだけ逆三角形の形して魔力が薄いんです……まるでパンツみたいな形してました」


 パンツの形? もしかして装備屋の特殊パンツじゃないのか!?

 そういえば『封印石』入りで魔力を抑える効果があるとかなんとか言ってたな……。恐るべしパンツだ。


 せっかく買ったのにこれは使えない、絶対捨ててやる! うぅなんか悲しい。

 1000ゼルあればガチャ2回は回せたな……。


 でも、技のほうは完成しそうである。クエストの時にこの技が完成していれば、楽勝だったに違いない!

 これがあればあんな恥をさらさずに済んだのに……


「ミリアに見せてあげたいよ。クエストの時はミリアに助けられちゃったからね。今度は俺が助ける番だ」

「まあぁ~素敵。それはミリアお姉(・・)さま喜ぶと思います」


 そうか喜んでくれるか……。

 どうも主導権を握られている感じで調子が狂うんだよな。

 成長した俺を見せつけて、大きな口叩けないようにしてやる!


「今度こそ見てろよ~、あの『ドヤ顔』女!」


 思わす口に出してしまったのは失敗であった。

 その時――、忍び寄る黒い影に俺は気づけなかったのである。



 『ドスン!』 ――強烈なカカト落としから~のお腹グリグリ。



「ドヤ顔女っていうのは誰のことかしら~? リュウジ――くん!」


 俺はうかつだった、ミリアがそばに居るのに気が付かなかったのだ。

 そして不意打ちのかかと落としはキツすぎる。

 きっとミリアの逆鱗に触れてしまった……もしかして俺、ヤバくない?

 

 なんか言い訳をしないと……!

 

「いや、違うんだ、マリア――じゃなくてミリアのドヤ顔も――可愛いいな、とか言ってたり言わなかったり、あれ?」


 言い訳になってない……しかも名前間違えたし、最低だ……。

 『ミリア、マリア』 よく見たら1字違いじゃないか! 紛らわしい。


「ふ~ん、マリア、マリア、マリアって、マリアは可愛いいもんね~。で? 私の可愛い『妹』に何させてるのかしら? ちょっと居ない間にナンパとか、あなたって最低ね」


「ミリアお姉さま、私が悪いんです。怪我させちゃったので治療してました」


「マリアはいい子ね――でもねこの(ケダモノ)には近づいちゃだめ!」


 そう言ってミリアは俺を突き飛ばし、マリアを守るように抱きしめる。

 

 『妹』なのか?

 

 びっくりした、似てない……ん、似てるかな?

 いや膨らみが全然違う!

 そもそも、性格が全然ちがうだろう!


「このケダモノはね、竹槍を振り回す野蛮人なのよー」


 これは相当怒っている気がする……。


「へー竹槍ですか! 聞いたことあります! 東洋の神秘ですよね? あーワクワクしちゃう。リュージさんってやっぱり面白い(かた)ですね。悪い人じゃないですよ」


 マリアはいい子だ……ホントにいい子だ。

 このまま大人へ成長してくれることを願う!


「マリアは、もぉ! そういう好奇心の固まりみたいな所を、直したほうがいいわよ」


 おお、それについては同感。……意見が合ったな!


「俺もそう思ってたんだ! ミリアとは意見が合うな~ハッハッハー」


「バカ! ケダモノは黙ってて」


 あぁ~怒っている……。

 今は何も言わないほうが得策である。


「お姉さま、リュージくんはすごい強化魔法を覚えたんですよ。殴っても全然平気なんです」


 おお、マリアいいぞ!

 話をそらすチャンスだ。


「へー、殴っても平気なんだ! じゃあ、私にも殴らせてもらえないかしら?」


 そうそう、魔法と呼べるかわからんが俺は強化魔法を習得したのだ。

 ついに俺の修行の成果を見せるときが来たな!


 ミリアにいいところ見せて、「リュージくんすごいわ、ケダモノなんて言っちゃってごめんなさい。」と言わせてやるからな!

 


「おう、いいよ、見たら驚くぜ」

「へー、どんな必殺技なの?」


「ん~、そうだな、体全体から漏れるようにして強化する技なんだ! 名付けて……『魔力ダダ漏れカチカチ防御』、今思いついた」

「……で? もう殴っていいの?」


 《悲しかな、華麗なスルー、俺のボケ。》

 5、7、5決まったぜ!! なんて、遊んでる場合ではない。

 

 それにしてもミリアの目は怖い……俺のケモノセンサーがそう言っている。

 いわゆる野生の勘というやつだ。

 まあそれも俺の強化魔法をみたら変わってくるだろう。



「おう、今やってみせるから、どんとこいやー」

「fu~fu fu~~♪ fu~fu fu~~♪」


 ミリアは嬉しそうに鼻歌を歌いながら、訓練所に置いてある棍棒(こんぼう)を手に取った。

 

 ああ、ご機嫌が良くなってきたようで、良かった良かった。

 

 今思えば、ミリアの『ミニスカ』に『ニーソ』姿は非常によく似合っている。

 そして魔法防具である鉄壁スカートは見えそうで見えないという、なんとも男心を揺さぶる防具である。

 

 そう言えば今日はシマシマではなく青でも無いと言っていた。一体どうなっているんだろう? ……気にしちゃダメだ!!



「この棍棒(こんぼう)でいいかしら? 私のレイピアじゃ威力ありすぎるから怪我させちゃうもんね。……私って優しい♪」


 鼻伸ばしてる場合じゃない! 修行の成果を見せなくては。


 俺は魔力を放出し全身強化を始めると、慣れてきたのかスムーズに出来るようになっている。そして全身がオーラで包まれ始める頃、ミリアは躊躇(ちゅうちょ)なく全力で殴りかかってくる。


『ドカッ、ドカッ』……『――ドカッ――ドカッ――ドカッ――ドカッ』


「ウフフ、私怒ってないわよ」 『――ドカッドカッドカッドカッ』



「ミ、ミリア様? なんか一打一打に殺意を感じるんですが……」

「そんなことないわ! これでも手加減してるのよ。こんな楽しいこと、簡単には終わらせません――!」


『――ドカッドカッドカッドカッ』


 ミリアは獲物をもて遊ぶかのような目で棍棒を振り回し、とても正気を保っているとは思えない。

 これはやばい気がする……。


 ――興奮したミリアは棍棒に魔力を込めだした。


 とても静かだ……。

 まわりの鳥や虫達が怯えて隠れているようだ……。

 

 音が一切聞こえず静寂の時を刻んでいる。そしてミリアの棍棒に魔力がどんどん集中してく感じが伝わってくる。



 (ヤバイ!)



 今の俺には分る、あれがどれだけキケンなものなのか。

 受け止められるか?

 だめだ、もっとパワーを上げなくては。

 全力でやっても足らないかもしれない!


「準備はいいかしら? ……惜しい人をなくしたわ、さようなら」

「うぉぉぉーーーーーーーーー! やるしか無い、全力防御だー」


 ミリアの魔力と俺の魔力が干渉し空間が揺れる。陽炎のように燃える俺の回りでは、上昇気流が発生し辺り一面を揺らす(・・・)? まるで……、台風が生まれる瞬間のようである。


 俺の感覚は研ぎ澄まされ――

 見えないものまで――



   『 見えそうだ((<●><●>))! 』


   (ヒラ、ヒラ、ヒラ……)



 この場を取り囲む微風(びふう)が、ミリアの鉄壁スカートを()らしている。



 ゆらゆら~と、上がったり~、下がったり~、上がったり~。



 俺は前世の記憶である禁断の呪文を思い出してしまった。その呪文を口にした者は、妄想世界から帰還できなくなるという(うわさ)である。

 更に人生を棒に振った男を俺は知っている。


 比率は『4:1:2.5』で配置されており、その中央に位置するは……



 ――『どかーん』 俺は集中力をかいて全身強化を失敗した。

 

 爆風がミリアに襲いかかり、そしてミリアの鉄壁スカートはルールを破った。



 テステス、聞こえますか? ……(本日は、 (じゅん) (ぱく) なり)



 おかげさまで謎は解けたよ……!

  冥途のみやげが出来たよ……!

   脳が真っ白になったよ……!



 ……《気絶3回目》……




「ほら、お姉さま」


 俺はまた気絶したのか、そしてまた膝枕の上なのか?

 マリアには何度も何度も感謝しきれないよ。


「もう、これ以上は無理。なんで私がこんなことしないといけないの。こんな男ほっとけばいいのよ」

「わかりました、変わってください」


 あれ? 膝枕が移動した? じゃ、さっきの膝枕は誰のだ?


「お姉さまったら、素直じゃないんだから……そういうところ、直したほうがいいですよ。リュージさんはお姉さまを助けたいって、すごい頑張ってたんですよ」


「えっ、そんな……私の為に? 私はなんてことを……」


「リュージさんお目覚めですよね? 魔力の流れでわかりますよ」


 さすがマリアちゃんだ、お見透視なんだな。


「あ、うん、今気がついた。俺はまたやってしまったのか……」


 静かに目を開いた先に飛び込んできたのは、ローアングルからのミリアの姿であった。計算式で表現すると《スカートの丈:絶対領域:膝上ソックス》の比率が『4:1:2.5』の黄金比率で構成されているとても危険な領域である。



 (『呪い』は本当にあった!)



「あわわ、リュージさん鼻血が出てます」


 認めたくない……、これが呪いの力だというのか? なんと恐ろしい呪いだ。このままでは妄想世界に囚われてしまう……!?


 今の救いはマリアちゃんが居ることだ、マリアちゃんを見ていると俺は落ち着くんだ。


「鼻血、治療しますね」


 願わくば、『呪い』の方も治療出来ませんかね? マリアさま~。




「リュージ……ごめんなさい……リュージ聞いてる? 私、その……誤解してたわ。 ……ねえ聞いてる?」

「聞い――てる――よ」


「どこ見てるの……、こっち見てよ……。――ちゃんと私を見て!」


 悪魔の(ささや)きが聞こえる。いまミリアの脚を見たら俺は領域の彼方へ引きずり込まれるに違いない。マリアちゃんから目をそらすわけには行かない!!


「いや――今はダメ――見たく――ないんだ」



 ……『ドスン!』 再び、かかと落とし!



「バカ!」


 《どのみち呪いは発動していた。俺はそれに気づいていない》


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