第14話: 二次元を嫁にしたい。
冒険者カードを取得するために俺は短期入学することになった。
俺はミリアに連れられ教室に案内される。
教室に入ると十数名の生徒が座っており、見たところほとんどが女性のようである。
最初は物静かであった教室の生徒たちであるが、ヒソヒソ話を始め今はザワツイているようにも感じる。
ミリアは教壇に立ち、俺はその横で皆に紹介された。
「えーと、今日はみんなに紹介する人がいます。今日から入学する、『竹槍』くんです」
「そうです、私がタケヤリです! ……って、 違 う だ ろー! 俺の名前はリュージだよ!」
突然のボケに、俺は思いっきり突っ込みを入れていた。
物静かだった教室は笑いに溢れてとても賑やかになっていた。
「ハハハ、冗談よ、冗談。ウフフ」
ミリアは楽しそうに笑っている。
俺は謎めいた男を演じ、ニヒルに決めたかったというのに台無しだよ!
「リュージくんはあそこの開いてる席にどうぞ。それじゃ私は、申し込みに行ってくるね」
ミリアの小悪魔的行動には困ったものだ。
いきなりびっくりしたけど、おかげで緊張がほぐれたのには感謝だ。
何より場の空気が和んだのは良いことである。
俺のキャラクター設定が不本意な方向に向かっている気がするが、そう言うのもアリかな? なんて思った。
そういえば、この世界の女子は可愛い子ばかりだ。まるでアニメの中に居るようである。この教室の女性たちだって可愛い子ばかりだ。
この空間はアニメの学園モノと一緒じゃないのか?
ちょっとまてよ、周りの可愛い子達を見てたらなんかドキドキしてきた。
俺はリアル女性など興味はないはず……。
俺の嫁は二次元だけだ!
(でも、もしアニメキャラが現実に現れたら?)
ありえないから……。
(でも、そこに実体化しているのは紛れもない現実だよ!)
空飛ぶパンティーの次は、幻聴まで聞こえるようになってきてしまった……。
と言うか、頭の中で囁くお前は誰だ!?
(俺は俺でお前は俺だ、俺以外の何者でもない)
俺がしゃべっているのか……?
今の自分は前世の俺なのか? それとも現世の俺なのか? 一体どうなっているんだ!!
とにかく俺は『冒険がしたい』のだ。このゲームのような剣と魔法の世界で冒険しないなんて損である。一刻も早く冒険者カードを手に入れてここを脱出しないと……。
見るな見るな周りを見るな。下だけ見て進むんだ。
席に座り机をぼーっと見つめていると……、綺麗な脚たちが3D映画のように飛び出してきては俺の机の周りを取り囲んでくる。
そして美少女達の質問攻めにあっていた――
「ミリア様とはどんな関係なの?」
「ご想像におまかせします」
どうせ俺は付き人さ、イヤ奴隷さ……。ちくしょーあのドヤ顔女め。
「ざわざわ...」
「 ざわざわ...」
「 きゃーーーーー」
騒がしいな……。
「ミリア様との出会いは?」
「 ミリア様のどんな……」
「 ミリア様とはどこまで……」
みんな一気に喋るなよ、わけがわからない。
「ギルドで出会ってミリアが誘ってきたんだ。断ろうと思ったがミリアの誘惑に負けたよ」
「きゃーーーーー」
「 わっーーーー」
「 いゃーーーーん」
そうだ、あのエクスカリバーから地獄は始まったんだ。
でもあんな物くれるって言われたら誰だって……。
「やっぱりミリア様だわ! ――で、どんな誘惑だったの?」
「誘惑? 男があんなの見せられたら誰だってイチコロだろ」
エクスカリバーのことだ、決してシマシマパンツのことではないぞ。
現実化されたエクスカリバー!
アニメやゲームの世界でしか存在しないと思われていた憧れの武器だ。
「きゃーーーーー」
「 わっーーーー」
「 ちょっと! 私にも質問させてよ!」
「 だめ、私が先よ」
一人ずつ喋ってくれないかな……。
「こらー、何騒いでる。授業開始するぞ」
その時、先生と思われる人が教室内に入ってきた。
先生の一言で教室は静まり返り、みんな静かに着席していた。
雰囲気はキャリアウーマンってところだろうか、大人の女性である。
「それじゃ授業を始めるぞ。まずホーンラビットはウサギのようであるが、頭には一角のツノを持っている。 そして………………………………………………………………………………………………………………」
だめだ、眠い。授業と聞くと条件反射で眠くなる……。
「ハイ、授業終わり! ……それと今日の実地訓練は中止だ。自主練なら勝手に使ってくれて構わない。ほらみんな帰っていいぞ、気をつけて帰れよ」
ハッ! 寝てた。やっぱり寝てしまったか。
あれ、ミリアは? ……戻ってくるよな?
待たないといけない、何してよう?
訓練場に行って、ミリアが見せたあの『必殺技』を試してみるか!?
訓練場に来た俺は、あの必殺技について考えていた。
まず整理しよう!
どうやったのか推測すると、2通り考えられる。
1.武器に魔力を送り、増幅させている。
2.元々魔力を持った武器であるから、武器特有のスキルのようなものがある?
う~ん。しかしミリアは素手でも魔力を込めた強烈なビンタをしていた。
となると、『1』で間違いない。
まずは見よう見まねで、魔力を送ってみるか。
ところでさっきから見られているような? なんだろうあの子。
振り向けば隠れるし……まあいいか。
自分の体の魔力は感じている、これを手に集中して……剣に送り込む……。
魔力がどんどん集まってくる。でも何かが変だ。
だめだ、まるで車がエンストしそうな感覚だ。
ぐらぐらして安定しない、どうやったらよいのだ?
やばい爆発しそう……『どかーん』
爆風で俺は後方へふっとばされた。
すごいぞ、すごい威力だ!
これを敵に当てれば。逝けるぞ!
うん、イケルイケル、自分が……『逝ける!』
イヤイヤ、これはイケナイ、自分へのダメージが大きすぎる。
ましてや、動く的に当てること考えたら相当やばい……。
ぼんやりとする中、俺への呼びかけが聞こえる。
「だ、大丈夫ですか?」
「うん、じぇんじぇんふぇいき」
俺は頭がボーっとしていて、ろれつが回らない。
そして大量に汗がしたたり落ちてくる。
しかしそれは血であることに、俺は後で気づく。
「頭から血が出てます、じっとしてください」
俺のまぶたがゆっくりと閉じてゆく...
……