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第13話: 魔法学校行きたくない。

「それで次はどこいくの?」

「魔法学校に行くわ、ついてきて」


 この大荷物を魔法学校に配達するのか……。


 まさか俺を魔法学校に入学させる気じゃあるまいな?

 おれは学校に行きたいんじゃなくて『冒険がしたい』のだ。ちゃんと分かってくれているのか?

 

 ミリアは冒険者カードを「すぐ手に入れる方法がある」と言っていた。だから魔法学校で何年も勉強させると言うことはないはず……。

 

 ともかく冒険者カードはクエストはもちろんのこと、ダンジョンで狩りをするときも使うらしいので、冒険をする上ではどうしても必須なアイテムになってくる。 手っ取り早く入手する方法があるのであれば、これをのがす手はない!



「そろそろ教えてくれよ」

「何を?」


「冒険者カードを手に入れる方法だよ」

「フフ、仕方ないわね。一発試験を受けてもらうわ」


 なんと、自動車免許みたいだな。

 そんな方法があったなら早く教えてほしかった。


「おおお、やる、それやるよ!」

「一発で受かる人はなかなか居ないけれども、3回もやれば受かるわ」


 なるほどそういう事か、3回ぐらいで取れるならいいかもしれない。


 何年も勉強させられて『冒険はおあずけ』なんて辛すぎるからな。





 魔法学校についた俺達は、ミリアの案内で理事長室に入った。

 

「荷物運んでくれてありがとう、そこに置いてちょうだい」

「え? ここに置くの? というか勝手に入ってきて大丈夫?」


「何言ってるの、私はここの理事長なのよ! あれ、言わなかったっけ?」

「えっー!?」


 そう言ったミリアは奥の立派な椅子に足を組んで腰かけた。

 ただ者ではないと思っていたが、そんなお偉いさんだとは思わなかった。


「学校で使っている装備はあそこから買っているのよ」

「――それで装備屋のおっちゃんが低姿勢なのか!」

 

 そういえば、父には多額の借金があると言っていたが、魔法学校の理事長ならお金持ちじゃないのか? もしかしたら、俺には想像できないぐらいの借金があって、返せないほどたくさんあるということなのだろうか?


 これについては深入りしないでおこう……。



「そこに座って。 ハイ、これにサインしてね」


 応接セットの椅子に腰掛けると、ミリアは書類をテーブルに広げて俺にペンを渡してくる。

 

「ここにサインすればいいのかな?」

「うん」


「ところでミリアは一発試験で冒険者カードを取得したのか?」

「え、私? 私は特別(・・)よ♪ 理事長だし、強いし、美人(・・)だからね、特権ってやつだわ」


 だから美人はよけいだって!

 ちょっとまて、理事長の特権って職権乱用じゃないのか?


「俺も特別に……なんとかしてくれないかな?」

「それはダメよ、不正はよくないわ!」


 おいおい、自分のことは棚に上げといて、よくそんなことが言えるものだ。


 まあそんな焦らなくてもいいか……。

 そうだ、その前に魔法習得しよう!

 そうでないと、『魔法が使えない冒険者』などと呼ばれてしまうからな。



「サインしたよ」

「どれどれ……いいわ。 それじゃ次一発試験の申込書にもサインして」


「えっ? じゃ今サインしたのは何?」

「それは入学書」


 なんだとー。よく読まずにサインしてしまった……。


「冒険者組合と、うちの学校は提携を結んでるの。うちの生徒になれば、試験官を呼んで一発試験を受けることが可能になるわ。だから一時的にでも入学してもらいます」

「なるほど、ミリア頭いいな! 俺ミリアをみなおしたよ」


「まあねっ!」


 なるほど一発試験のためだけに仮入学する感じでいいんだな。勉強の成績もなにも気にする必要がないし、その間に魔法習得だけに力を注げるな。


 サインを終えると、後ろからほんのり甘い花の香りが俺をかすめる。

 その甘い香りはミリアが手にしている紅茶の香りであった。


「またそうやって、後ろからこっそり差し出すの止めてくれよ!」

「フフッ、ハイどうぞ。私からの入学祝いよ」


 ミリアは紅茶のウエルカムドリンクで俺を迎え入れてくれた。

 

 ミリアの言うとおりにしていると、ろくでもない事ばかり起こると思っていたが、この時のミリアは優しくとても頼もしく感じたよ。俺は褒めちぎったよ!

 そしたら調子に乗りやがって、「これからはミリア先生と呼んでね」とかいい出したから……、さすがにそれは拒んだね!


「おいしい?」

「うん」


「でしょ! その紅茶はね貴重で高いのよ」

「そうなのか、「また報酬から引いておくね。」とか言ったりしないよな?」


「まさか! そんな細かい事でケチケチしないわ」


 そうだよな。俺だって紅茶ぐらいでそんなケチケチしないさ。


「ところでリュージくん。――入学金の事なんだけど……」

「ギクッ」


 なんと巧妙な罠を仕掛けてくるのだ、俺はうかつだった。

 まんまとサインしちまったじゃねーか……


「俺にお金なんて……」

「それは困ったわね……」


 背後から指先が(へび)のように忍び寄ってくる。

 動けない……。俺は睨まれた(カエル)だ。

 首を這う蛇のようなミリアの指先は俺の(あご)を軽く持ち上げ――耳元では囁きが……


「それじゃ、体で払ってもらおうかしら……」


 蛇に睨まれた(おれ)は『ゴックン』と息を呑んだ。

 そ、それはどういう意味なんでしょう……。



「荷物運びに掃除に洗濯。……あと~付き人もやってもらおうかしら」

「おわた……」


 もはや奴隷……。【俺の冒険は終わりを告げたのである...】


「冗談よ、冗談! 無料にしてあげるから、これからはミリア先生と呼んでね」

「はっはい、喜んで……ミリア……せんせい」


「よろしい!」


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