第11話: パンティーは飛ばない。
ミリアの必殺技は本当にすごかった。なんとしてもあの必殺技を俺も習得したい。俺は一生懸命やり方を聞いたが、ミリアはこのように言っていた。
『うーん、どうやってやるのかって? ぐぅーーー、どきゅーん、バーンってやるの』
うん、わからん! 何を言っているのか全く理解できません。
しかしこれを無理やり通訳してみると、魔力を剣に注ぎ込み、貯めに貯めたエネルギーを一気にぶつける。といったところだろう。聞くまでもなかった...
ともかく魔力の集中と、繊細な魔力コントロールが必要な気がする。
今の俺では魔力を出すことすら困難で、それをコントロールするなんて到底無理である。
ところで、俺の魔力はちょっとおかしい。
普通ならば冒険をしてレベルを上げると魔力があがるとか、そのようにして魔力を上げていくものであろう。しかしそういうのに関係なく最初から強力な魔力があるような気がする。その辺は転生が関係しているのだろうか?
今は考えてもわからないので、裏庭の掃除をすることにした。
昨日散らかした竹を片付けておかないと、踏んで転んでシマシマが危ない。
「居た居た、リュージくーん」
あ、ミリアだ……。
彼女は今日も元気に手を振りながら、軽やかなステップで向かってくる。
元気なのは良いが、まだ竹が転がっているのに大丈夫か? 心配である。
「ミリア、足元注意しろよ!」
「大丈夫よ、私がそんなドジするわけないでしょ」
俺、今、ドキドキしている?
何か事件を期待している……?
そもそもラッキースケベというものは、物語の中だけの特権なのである!
リアルでそういうことはありえないのだよ!!
と、俺は自分に言い聞かせる。
するとミリアは俺に近づき45度の前屈みで問いかけてくる。
「――何か期待した?」
「なんの事だろ……?」
これはまたミリアの小悪魔が発動してるに違いない……。
「言っとくけど、今日はストライプじゃないわ」
「な、な、なんのことかな、……今日は空が青いね~」
「ぶっぶーハズレ、青でもないわ」
「ミリア! からかうのは止めてくれよ!」
「ウフフッ」
困った女だ。なに色なのか気になってしまうじゃないか……。
「それじゃ早速行きましょう!」
「え? どこにいくの?」
「あなた防具が必要でしょ? 買いに行きましょう」
ああ、俺が防具無しなのを気にしてくれたのか。
気が利くじゃないか!
そうだクエストでの収入があるから、防具買えるかも!
しかしな……!
「フフッ! 防具か……当たらなければどうという事はない!」
決まったぜ!
ついでにドヤ顔も決めてやったぜ!
どうだ、ミリアの反応は?
「何してるの、早くいくわよ!」
おいおいスルーかよ、ひどい仕打ちだ。
「イヤ、防具はまだいいよ……、先に修行したいんだ……」
「ねぇ、冒険者カードほしくない?」
「えっ! ほしいけど、何年もかかるのでは?」
「もし、すぐ手に入れる方法があるとしたら?」
「なんだと!? どうやるの?」
「ふっふ~ん、じゃー黙って私についてきて!」
もったいぶりおって!
しかし本当にすぐ取れる方法があるのだとしたら、これは乗らない手はない。
てか、このパターンってまたキケンが迫っているような?
「それじゃ、まず装備屋へ行きましょう」
異世界の冒険を一人で堪能しようとしていたのに、この女のペースに乗せられっぱなしである。
前世の記憶が甦った今の俺に、異世界の美少女の誘惑は刺激が強すぎる。
しっかし、今日のミリアは何色なんだろう……気になってしょうがない。
ああ~やばい! 幻想が見えてきた。
パンティーが空を飛び回っているじゃないか!
どんどん俺壊れだしてる? ……もはや病気の域である。
「リュージくん今日は元気が無いのね、しっかり前みて歩かないと事故に遭うわよ」
「うん、わかった」
空のパンティーはまだ消えず優雅に宙を飛び回る。
その中には苺柄のパンティーまで飛んでる!?
そしてその苺パンティーはどんどん近づいてくではないか!
ちがう!? これは本物だ……。
「ぎぃゃぁ~、そこあぶないにゃ~」
上空から悲鳴のような叫び声が聞こえる。
前にもこんな事があったような?
――それに苺パンティーには見覚えがあるぞ!?
――『少女が空から降って来た!?』
思い出したぞ!
今度は屋根上からダイブしてきやがった!
俺はまた顔面にドロップキックされる恐怖感を感じ、めいいっぱいののけぞりでかわそうとする。
のけぞりしたことで顔面ドロップキックコースは回避したが、見事なミゾオチ着地を食らった。
「下に人がいるとは思わなかったニャ」
フフッ、前回より痛かったが、同じ攻撃を2度はくらわないぜ!
戦闘を経験し俺は、反応速度が上がっているのだ!
「大丈夫そうだニャ? それじゃニャ」
「ちょっと待ってくれ~」
「だめにゃ」
またスタスタスタと逃げられ少女は去っていった……。
「リュージくんはああいう子が好みなの? 追っかけようとしたでしょ?」
「違うんだ。ちょっと聞きたいことがあっただけなんだ」
「ねぇ……、リュージくんはどんな子が好みなの?」
俺はどうなんだろう……?
前世の好みと現世の好みが入り混じり混乱している。
そうだな、やっぱ胸の大きい子がいいよな~。
イヤイヤまてよ、俺はちっぱい派だったようなきもする。
そう言えば、見た目だけならミリアはスタイル抜群で、残念なのそのまな板のような胸だけである。
――おっと! あぶない。
胸の話だけは触れないようにしておこう……。
そうなると顔かな?
可愛い笑顔とかは俺は大好きだ。
まてまて、ドヤ顔おんなを前にそんな事いったら嫌味を言っているようにしか思われないぞ。
あぶない……上半身は避けよう!
「そうだね、好みは足かな~。きれいな足には可愛いスカートがよく似合うしね」
「ふ~ん。――どんなスカート?」
無難な回答だぜ、これなら危険は無い。
――と思ったが追求が来たぞ……!
「清楚な感じの方が好きかな……。でもミリアみたいなコスプレじゃなくて、ヘソ出しレースクイーン風もいいと思う!」
「レースクイーン? それって馬車レースのあれ?」
おっとまずい。
レーシングカーなんてこの世界にはないじゃないか。
「あ、それそれ、そんな感じだけど。わかりやすく言えばチアガールかな」
「あなたって時々わからない言葉を言い出すわよね」
これはちゃんと記憶を整理しないとまずい。
これからなにか言うときは、ちゃんと考えて言わないと……。