灰色の始まり
今日もいつものように起きて、部屋に籠ってゲームをする。はじめは全然興味のなかったゲームだったが、今では日課であり趣味であり特技でもある。画面の中でゴチャゴチャと重そうな装備を身に着けた私の周りにはたくさんのキャラクターたちがいる。それが架空の世界の話だと分かっていても、そこに自分を重ねてしまう。そう、二年前。二年前まで、私の周りにはたくさんの友達がいた。
「茜~一緒にお昼食べよ!」
「茜ちゃん、一緒に帰ろう!」
「茜っ、風邪大丈夫だった?」
私の名前が飛び交う教室。私は人気者だった。あの転校生が来るまでは。
「滝川万梨阿です。よろしくね」
気の強そうな瞳、膝上までしかないミニスカート。一目でこの子がリーダー格の子になりそうだと思った。そういう子とは早めに仲良くなっておいたほうが得だ。
「滝川さんの席は佐々木さんの隣ね。佐々木さん、色々教えてあげてね」
「はい」
しかも私の隣の席。私は精一杯の笑顔を作って言った。
「私は佐々木茜!このクラスの学級委員よ。よろしくね」
彼女は私を一瞥すると、不愛想に「よろしく」と一言残して正面を向いた。かなり気まずかったので、もう一つ訊いてみた。
「あ、滝川さんのこと、何て呼べばいいかな?」
「なんでもいいけど」
また不愛想に返されてしまい、戸惑う。
「あっ…そっか。じゃあ万梨阿って呼ぶね!いいかな?」
万梨阿は今度は答えず、ため息を一つついて私に告げた。
「私、そういう人が嫌いなの」
「え…」
「ほんっと無理。なんかウザいじゃん?学級委員だか何だか知らないけどさぁ、いちいちやめてくれる?」
そう言って万梨阿はまた正面を向いた。周りの女子達が何かをヒソヒソやっていたが、それが耳に入るほど私に心の余裕はなかった。
次の休み時間。万梨阿の周りにはたくさんの女子が集まっていた。万梨阿は笑顔で、何か言っては周りを感心させたり笑わせたりしていた。
「万梨阿ちゃんって最初不良みたいだと思ってたけどほんとはめっちゃ面白いじゃん!LIME交換しよっ」
万梨阿は愛想よくニコニコと笑っていた。本当はこの時から始まっていたのかもしれない。
…私の周りには誰もいなかった。
初投稿です。文章や設定も稚拙ですが、よろしくおねがいします。