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妖霊退治忍!くノ一妖斬帖  作者: 辻風一
第四話 対決!雷音寺一門
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三毛猫丁吉

「く、曲者ぉぉ~~~~!!」


 叫ぼうとする梢の口を半九郎が口を塞いだ。梢は真っ赤になって押し黙る。

 中西忠蔵は槍を曲者三人に向けた。隙のない構えは、さすが一刀流中西派の総帥。


「お前たちは何者であるか?」


「「「ひええええええええっ~~~~~~!!!!」」」


「お待ちください、先生! この者たちは決して怪しい者たちではございません!!」


 松田半九郎が槍穂の前に進み出て、土下座した。


「……むっ、半九郎の知り合いか?」


 そして、三人が鳳空院の者であり、臨時内職で日本橋の絹物問屋・井筒屋のお内儀から三毛猫のお玉探しで、道場の天井裏に勝手に忍び込んだことを告白した。


「ほおお……これが噂の鳳空院の者たち……」


「はい、寺社奉行所で仕事を頼んでいる者たちでして、どうか……どうか、大目に見てやってくださいませ……」


「「「申しわけありませ~~~~ん!!!」」」


 半九郎、紅羽、竜胆、黄蝶が土下座して謝った。


「まあ、半九郎の知り合いなら、矛をおさめよう……」


 中西忠蔵が槍をおさめた。そして、破壊音を聞きつけ、何事かとやってきた中間や郎党に、「大工の源さんを呼ぶように」と指示する。


 一同は客間に移動して話をつづけた。もう正午になったので、半九郎と紅羽、竜胆、黄蝶は昼食をご馳走になった。

 当時はテーブルも卓袱台ちゃぶだいもなく、一人ずつ箱膳を台にして食べていた。

 食事はご飯、みそ汁、漬物、という一汁一菜の素朴なものだったが、ありがたいものだ。


 もともと日本人は一日二食であったが、江戸時代元禄以降に三食となったといわれている。

 これは江戸中期以降にさまざまな産業が発達し、流通が盛んになったためだ。


 そして、明暦の大火の復興計画で各地から大工・左官などが集まった。だが、一日二食では肉体労働者がもたない。

 だが家に帰るのは面倒。そこで江戸のあちこちに屋台や飯屋ができたのが、日本人の一日三食の始まりだとする説がある。


「それにしても、天井板を壊したのに、食事までご馳走になって……中西先生、ありがとうございます!」


「いやいや、あとで修理代を鳳空院に請求するでな……よろしく」


「しょんなあ~~~~~!!! 小頭にまた叱られるぅぅ~~~…」


「それにしても、お玉を無事にみつけたはいいが、高くついたものじゃ……」


 三人娘はがっくりと頭を垂れる。


「でも、お玉は傷ついてないですぅ~~」

「ちょっと、お待ちになって……その三毛猫はうちの飼い猫ですわよ……」


 中西梢が割って入った。


「えっ、まさか……」

「第一、丁吉は珍しい牡猫おすねこですし……」

「えええええええ~~~っ……」

「骨折り損どころか、借金が増えたとは……なんということじゃ……」

「小頭に叱られるぅぅ……」


 三毛猫はほとんどがメスであり、ごく稀にオスが産まれる。その確率は三万匹に一匹の割合だから、かなり珍しい。

 なので、オスの三毛猫を船に乗せると福を呼び、遭難しないという言い伝えがある。

 江戸時代に高額で取引されたともいう。

 縁起をかつぐ招き猫が三毛猫をモチーフにされることが多いのはそのためかもしれない。


 黄蝶が三毛猫の丁吉を両手でかかげ上げ、確認した。


「確かにオスなのです、三毛猫のオスって、初めてみたのですぅ~~」

「黄蝶……繁々と検分するでない……」


 たしかに猫相書きにある赤い首輪に金の鈴ではなく、組紐の首輪に『丁吉』と名札が書いてあった。


「この中西道場が江戸で一番になったのも、この丁吉のお陰ですのよ……ほほほほほ……」

「そりゃまた、すごい福猫だなあ……うちの尼寺にも欲しい……」

「招き三毛猫なのです!」

「いやいや、梢……一刀流中西道場は丁吉を飼う前からな……」

「いえいえ、御父上、さらに福を呼んだのは丁吉のお陰ですわ」


 どうも、中西忠蔵は娘に甘いところがあるようだった。


「んんぅ? でも……『丁吉』って名前は……」


 紅羽が眉をよせて腕をくんだ。


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