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妖霊退治忍!くノ一妖斬帖  作者: 辻風一
第四話 対決!雷音寺一門
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天井裏の女忍

(おぉぉぉ……松田の旦那に好意をもっていそうな娘が登場したぞ。あたしの女の勘が当たったみたいね)


 小躍りしそうな紅羽を、忌々しげに流し目を送る竜胆。


(ふむう……たしかに……じゃが、松田殿は気づいておらぬようじゃなあ……)

(それより、話題がそれて良かったのです。松田殿が天摩忍群をさぐりだしたら、厄介なのです!)

(おおっ、黄蝶のいうとおりだ……あたしたちは市井の妖怪退治屋ってことになっているからな……)


 天井裏で紅羽たちは冷や汗をぬぐった。




「そういえば、忠太殿は道場ですか?」

「いえ、兄は所用があり、今日は留守でございます……」


 梢の兄・中西忠太子啓なかにしちゅうたつぐあきは梢より一回り離れた二十七歳の若先生で、のちに中西道場三代目を継ぐ人物だ。半九郎とも親交がある。


「そうですか……話をしたかったですが、後日また……」

「ええ……ええ……いつでも道場へ寄ってくださいな。それより、この度は寺社役同心に就任おめでとうございます……」


「ありがとうございます、梢殿。なにせ江戸は久しぶりでして、いろいろと御教授ねがいます」

「まあ、御教授だなんて……そんな……」

「よかったな、梢。半九郎とはいつでも会え……痛っ!」

「まあ、御父上ったら、また腰痛ですか? 按摩を呼ばなくてはいけませんね。おほほほほ……」


 ふたたび梢は袖の影で父の太腿をつねったが、半九郎は気づかない。


うぅぅぅ…………でだな、半九郎。練丹法についてだが……」




「うえっ!! 話が戻ったぁぁ~~~!!!」

「こらっ、紅羽。声が大きい!」


 竜胆が慌てて紅羽の口を塞ぐ。二人とももつれて、天井板を叩いてしまった。そして、梁の上から落ちそうになったが、黄蝶が竜胆の帯を引っ張って事なきをえた。




 天井下では、半九郎・中西父娘が上を仰いでいた。半九郎には聞き覚えのある声で、額に冷や汗がながれる。さっき別れたばかりの妖怪退治屋の三人娘だ。


(な、なぜ……紅羽たちが中西道場の天井裏に……)


「なんでしょうか……人の声がしたような……物音も……もしや、泥棒では……」

「まさか……こんな白昼堂々と、当道場に盗人が忍び込むとはなあ……」

「いやいや! お二人とも、きっと猫ですよ……猫はときとして、人の声に似た感じで鳴きますしな……」




「にゃ、にゃあ~~~ん……」

 黄蝶が機転をきかせて猫の鳴き真似をする。竜胆と紅羽が心のうちで拍手。




「なんじゃあ、猫か……わははは……」

「きっと、丁吉ちょうきちですわね……ネズミを捕っているのかも……」


 天井裏の三人娘と半九郎がほっと胸をなで下ろす。中西忠蔵は笑いながら立ち上がり、鴨居に飾ってある槍を手に取り、電光の速さで天井板を貫いた。天井に鈍く光る槍穂が突き上げられ、紅羽達は悲鳴をあげる。


「きゃああああああああ~~~…」


 梁から落ちた三女忍が、天井板を破り、埃を巻き上げながら青畳に落下した。中西忠蔵・半九郎はもとより、梢も武芸のたしなみがあるようで、素早く壁際に避難した。


「ふぎゅうううう~~~~…」


 紅羽を一番下に、竜胆が覆いかぶさり、黄蝶が三毛猫を両手にもって、チョコンと座っていた。


「二人とも……どいてぇぇ……アンコが出るぅぅぅ~~」


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