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妖霊退治忍!くノ一妖斬帖  作者: 辻風一
第四話 対決!雷音寺一門
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三味線堀騒動記

「なんだあ……珍妙な髪形をした小娘め……文句でもあんのかっ!」


 猫捕り二人組が黄蝶に凄んでみせる。


「……あなたたちは五代綱吉公の時代なら、生類憐みの令で極刑なのですぅ!!!」


「けっ……確かに犬公方の時代ならな……だが、今は十代家治公の時代で、そんな悪法はないぜ……」


「悪法じゃないのですっ! それは後世で歪められた悪評なのです。生類憐みの令は、捨て子をしたり、病気の旅人を道に捨てたりした、戦国時代の冷たい風習を変えるのが目的だったのです!」


 やっと、紅羽と竜胆が空き地の入り口に駆けつけた。


「おおっ!! 黄蝶が難しいことを語りだしたぞっ!!」

「……綱吉公は愛猫家や愛犬家に人気があるからのう……」


「ほかにも、日本で生類憐みの法があったおかげで、日本国から犬鍋や猫鍋といった野蛮な風習がなくなりつつあるのですよ」


 日本には江戸時代まで、庶民のささやかな楽しみとして犬食けんしょく猫食びょうしょく文化があった。弥生時代に大陸から伝わった文化らしい。

 綱吉公の法令で武士階級は食べなくなり、町人たちも次第に食べる風習がなくなっていった。だが、現在も中国の一部地域や朝鮮半島、ベトナムなどに犬食・猫食文化が残っている。


「……んなこたぁ、どうでもいいんだよ。俺たちゃ法に触れることはしてないしな……」

「さっき、飼い猫の首輪を切っているのを見たのですぅ!」


 猫捕り二人組が「ぎくっ!!!」と背筋をのばした。


「……るせいっ、小娘がっ!」

「つべこべ抜かすと、女子供でも容赦しねえぞっ!」


 番九郎と阿平が匕首をひらめかせた。黄蝶も帯から円月輪えんげつりんを取り出す。


「おっと……匕首を出すなんておだやかじゃないな……」

「どうやら、破落戸ごろつきどもの小遣い稼ぎのようじゃな……」


 いつの間にか、黄蝶の両隣に腰にさした太刀の濃口を切った男装剣士の紅羽と、薙刀の石突を地面についた巫女剣士の竜胆がいた。


「加勢がきたか……やばいんじゃね!?」

「なに、俺にまかせろっ!」


 番九郎が左手にもった投網を三人娘に放った。とっさのことであり、三人一緒くたに捕まった。網がからめば身動きができないし、刃物で一挙に斬ることも難しい。


「ややっ……」


 投網に包まれたはずの人影が、紙風船のように凹んでいく。番九郎は三人娘があまりに素早く飛び退いたので、残像を捕獲したのであった。


「紅羽ちゃんと竜胆ちゃんにも手を出すとは許せないのですぅ!!!」


 猫捕り二人組の背後にいつの間にか三人娘が移動していた。


「いつの間にっ!?」

「狐か狸に化かされたか?」


 黄蝶が印をくみ、円月輪を羽ばたかせる。


「うぅ~~~~~~、やぁ~~~~~、たぁ~~~~~~!!」


 黄蝶を中心に、轟々と音をたて、砂塵をまきあげ、中規模の空気の渦巻きが発生。天摩忍法つむじ風である。


「おいよせっ、黄蝶……」

「一般人に忍法をつかうでない……」


 二人の停止も遅く、忍法つむじ風が番九郎と阿平を吹き飛ばした。


「のえええええ~~~なんで、急に旋風がっ!?」

「異常気象じゃねっ!?」


 地面にドサリと落下して気絶する猫捕り人たち。


「……まあ……気がついてないようだし、いいか……」

「……悪党の破落戸だったしのう……」


 黄蝶たちは捕まった野良猫たちを開放した。八十一匹にゃんこ大脱走である。だが、その中に三毛猫はいなかった。


「三毛猫のお玉はどこにいったんだ?」


「さあ……なのです……」


「三毛猫なら、練塀ねりべい小路の道場の屋根瓦に一匹いたよ……」


「えっ!! 教えてくれて、ありがとうなのです!」


「にゃんのにゃんの……助けてくれた礼さ……」


 黄蝶は大八車の空の檻の上にのぼった黒猫に礼をいった。猫は二本足でたって、手をふっている。


「「ええぇぇ~~~~猫がしゃべったぁぁぁぁ!?」」


 紅羽と竜胆が仰天した。


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