表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖霊退治忍!くノ一妖斬帖  作者: 辻風一
第三話 邪眼!百の目をもつ通り魔
43/429

三白眼の武士

「おい、俺はこんななりをしているが、れっきとした藩の武士だ。諸国を武者修行した帰りでな……松田半九郎まつだはんくろういう……丹後牧野藩たんごまきのはんの藩士だっ!」


「主持ちの藩士が庶民の女にふしだらな事をしようとは、藩主が怒るぞ!」


「だから、誤解だというのに……」


「問答無用!」


 頭に血ののぼった紅羽が眼前の武士に集中しているとき、背後から忍び寄ってきた腕が胸のふくらみをむんずとつかむ。そして、もみしだく。


「にゃあああああああああああっ!」

「待つのですっ、紅羽ちゃん!」


 黄蝶が紅羽の背後から羽交いじめにしようとしたが、手が届かず、胸をつかんだのだ。


「女……であったか…………」


 三白眼の侍も赤面し、気勢をそがれて立ち止まる。


「あら、女だったの!?」


 緋鯉のお吉が少しガクリとする。


「あいたたたたたっ!! なにすんだよ!」


 巫女姿の竜胆がかけつけ、背後から緋鯉のお吉の腕をつかんでねじった。


「待て、紅羽……この女狐は掏摸すりだ。黄蝶、帯を!」

「はいなのですっ!」


 栗鼠りすの素早さで黄蝶がお吉の帯から男物の財布を取り出した。


「あっ、本当だったのか……」

「だから、始めからそういっておるだろっ!」

「くっ……このお姉さんにだまされたのか……」


「まったく、紅羽は考えもなしに……我らの役目を忘れたか……」

「いや、とっさのことでさあ……綺麗なお姉さんと目つきの悪い浪人を見較べたら、つい見かけにだまされて……」


「……この三白眼は生まれつきだ!」


 若い武士は袂に両手をつっこんで腕組みし、口をへの字にまげておかんむりのようだ。紅羽はガクンとしおれて、頭を下げて松田半九郎に謝った。


「まあまあ……とにかく、この女を自身番に引き渡して、財布を元の持ち主に返そうではないか……」

「おっと、そうはいかないぜ……」


 突然、第三者の声が割り込んできた。人相の悪いやくざ者が三人、真ん中の頰傷があり、筋骨隆々した男がねめつけている。わずかな通行人が関わり合いを恐れて遠巻きにする。


「俺は浅草界隈を縄張りにしている黒駒の仙八だ。お吉をこちらに返してもらおうか……」

「仙八親分! やっぱりこういう時は頼もしいねえ……」

「さては、掏摸の仲間だな……」


 お吉が竜胆に開放されて仙八に駆けこんだ。松田半九郎が仙八をにらみつける。


「察しがいいガキは嫌いだよ……痛い目にあいたくなけりゃ、その財布とお前等の小遣いも渡してもらおうか……」


 取り巻きの子分達が下卑た笑いをして懐に手を入れる。匕首あいくちや道中脇差を持っている。


「ほう、この俺をおどす気か? 掏摸の親分さんよ……」


 松田半九郎が鞘を改めて腰に差し、鯉口をきった。キラリと刀身が日光に反射する。


「ここじゃ人様の迷惑だ……あっちの普請場ふしんばへ行こうじゃねえか……」


 掏摸の親分が半九郎に顎で指図する。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ