あとがき
あとがき
「くノ一妖斬帖 第十二話 岩魔!外宇宙から来た妖怪」を読んでいただいてありがとうございます。
くノ一妖斬帖は基本的にお江戸が舞台ですが、たまに江戸から出た話もあります。
以前、六話で奥多摩の山を舞台にしたので、今度は海を舞台にしようと思って、房総半島か三浦半島を考えていました。
ちょうど、構想を練っているとき、ブラタモリで木更津と館山を特集していたので、房総半島に決めました。(単純)
お話の時系列は七月初めで、執筆時もちょうど同じ七月で、珍しく時間が重なりました。
夏に海の話を書くと涼しい気がして、書いていて楽しかった。
でも、完結編は翌年の一月で雪が降っているね……
今回は天摩衆と宇宙から来た妖怪・岩魔との戦いを描きましたが、発想のもとは映画「カウボーイ&エイリアン」ですね。
西部劇に宇宙人が侵略にやってくるという映画で、それを時代劇に置き換えました。
当初は宇宙からの犯罪者妖怪が三人の予定でしたが、軍団にしちゃったので、伸びに伸びて今までで一番長い話になりました。
岩魔の数が増えたことで、書いている岩魔が何号だったか忘れたりして、確認することしきりで……間違えたりして、申し訳ありませんでした……
遊星兵団は日本SFの父といわれる海野十三先生が戦前に書かれた子供向けSF小説の「火星兵団」が元ネタです。
これ以外にも、ある方法で紅羽たちが火星に転移させられて、火星王国で妖術師や妖怪と戦うという「火星のプリンセス」的な腹案もありましたが、紅羽たちの忍法は元々魔法系統のものだし、作風がファンタジーよりになってしまうので却下しました。
やっぱり、江戸情緒とかがないと駄目だなぁ……と思いましてね。
ほかにもさまざまなSF映画や怪獣映画が元ネタになっています。
でも、古めのネタが多いので、全部わかる人いるかなあ……
あと、今作の形式は、忍者小説のパイオニアの一人である山田風太郎先生の忍法帖の設定のひとつ、「忍法対科学」がモチーフでもあります。
山田風太郎先生は忍法帖シリーズで、忍者対忍者(「甲賀忍法帖」など)、剣士対忍者(「江戸忍法帖」など)、アマチュア対忍者(「風来忍法帖」など)といった様々な形式設定の小説を書かれていますが、なかには科学対忍法という設定の話も書かれています。
「飛騨忍法帖」、「銀河忍法帖」、「海鳴り忍法帖」などがそうですね。
なので、「岩魔!外宇宙から来た妖怪」はそれにあやかり、忍法対SF科学兵器という異種格闘技的な戦いが、裏テーマとしてありました。
そういえば、話はそれますが、「海鳴り忍法帖」は戦国時代の自由自治都市・堺が舞台で、松永弾正率いる一万二千の根来僧兵が攻めようとする話でして、呂宗助左衛門も登場します。
昨年からBSで再放送している「黄金の日々」は呂宗助左衛門が主人公で、堺が織田軍に包囲される出だしで「海鳴り忍法帖」に非常によく似ております。
なので、山田風太郎先生はこの大河ドラマを見て「海鳴り忍法帖」を書いたのかと思ったのですが、今回調べてみると、「海鳴り忍法帖」は週刊現代に「市民兵ただ一人」の題名で1968年11月から1969年8月まで連載して、「海鳴り忍法帖」に改題して1971年に講談社から本として発行されてました。
そして、「黄金の日々」は1978年1月から放送されたので、「海鳴り忍法帖」の方が先でした。
こちらが先だったのね。
もしかすると、あるいは冒頭だけ、山田風太郎先生の小説を参考にしたのかもしれないですね。
でも、冒頭以外はまったく似たところがないので、ただの偶然かもしれないけど。
ちなみに十二話の作中にロボットが出てきますが、映画で初めて登場したロボットは奇術師フーディーニが出演した1919年の連続活劇映画「人間タンク」だそうです。(見てない)
もっとも、カレル・チャペックが「ロボット」の造語を作るのは1921年なので、作中では自動人形と呼ばれていますが。
日本映画では1926年のマキノプロの時代劇映画「怪人狼」だそうです。残念ながら、フィルムが残っていないので詳細は不明。
昔の深夜番組で「怪人狼」の一部を再現したのを見た事があるだけ。
もしかしたら、「人間タンク」のヒットで便乗したのかもしれないなあ……
さて、「くノ一妖斬帖」はいったん、終わりにします。
公募小説を書くのに集中するのでね。
でも、まだまだ書きたいネタがあり、特に海辺や川辺の妖怪を夏の内に出しておきたいですね。
冬は厳しいので。
それでは皆様、また、お元気で。
辻風一




