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妖霊退治忍!くノ一妖斬帖  作者: 辻風一
第十二話 岩魔!外宇宙から来た妖怪
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巨龍と岩魔征服

「ぎょっ、まだこんなに伏兵がいたのか……」


「ざっと、数百体はいるのじゃ……」


「こうなったら、斬れるだけ斬りまくってやろう……武士道とは、死ぬことと見つけたりっ!」


 半九郎が同田貫を青眼に構え、紅羽が比翼剣を左右にひろげ、竜胆が薙刀を聖眼に構えた。


 恐鳥フォルスコラスが半九郎の頭に噛みついてきた。


「霊剣・横一文字!」


 半九郎の横斬りが肉食巨鳥の首を切断。


 紅羽が火焔弾を打ち出し宇宙ヴェロキラプトル群を破壊し、竜胆が冷気で岩石人間兵士を凍りつかせた。


 たちまち岩魔兵士たちの数が減っていく。


「もう、観念するでござる、岩魔一号!」


「頼みの五ツ首竜も姿を見せない事だしな!」


「ふっ……五ツ首竜だと? 見せてやろうではないか!!」


 岩魔一号が合図すると、一羽の肉食怪鳥がそばに駆け寄り、総司令官はひらりとその背中に飛び乗った。


「岩魔兵士どもよ、陣形を組め!!」


 遊星兵団総司令官の命令一下、大勢の岩魔兵士たち大地に正方形型に並んで四つん這いになり、その背中に同じ姿勢で並び、さらにその上に積み重なり、またたく間に巨大な岩魔の山が出来上がった。


 組体操の人間ピラミッドならぬ岩魔の三次元ピラミッドだ。


「なんだありゃ!?」


「見世物の軽業でござるか!?」


 岩魔の三次元ピラミッドに、恐鳥に騎乗した岩魔一号が駆け上っていった。


 そして、岩魔の山のあちこちが「ビカッ、ビカビカビカッ!!」と赤く輝きはじめ、全体が赤く発光しだした。


 ピラミッドの頂点に立った岩魔一号が、


「宇宙妖術・五ツ首竜変化!!」


 岩魔の山が膨れ上がり、五つの竜の長首に、巨大な胴体に太い四足が生え、長い尻尾、背中には蝙蝠のような翼あり、赤い鱗に覆われた体長100メートル以上の多頭巨大龍に変形した。


「ギャオオオオオオオオオ~~~ン!!」


 鼓膜を振るわせるほどの大音声が響き渡る。


「五ツ首竜ネルガルになった!?」


「なんと……ネルガルの正体は、数百体の岩魔の集合体が化けた怪物であったのか!?」


「ギャオオオオッ!!」


 大地が轟く咆哮をあげ、巨竜が四つん這いで紅羽たちに迫った。


 大地が揺れるほどの巨体だ。


 その動きがピタリと止まり、五つの首が一斉に後ろを向く。


 巨大な尻尾を瓦偶巨人乙型がつかんだのだ。


 左肩に松影伴内が乗っている。


「ばに゛ゃあ゛ぁぁ!!」


「あのときの怪物竜じゃな、まかせんかい!」


「小頭!!」


「伴内殿!!」


「ぎはははは……食らえっ!! 五重炎獄衝ごじゅうえんごくしょう!!」


 巨大魔獣の五つの首から灼熱の火炎が粘土巨人にむかって吐き出された。


 伴内が巨人の肩に両手をつき、


「天摩流土術・土塁壁どるいへき!」


 瓦偶巨人の手前の大地が盛り上がり、巨大な土の防壁が迫り出した。


 土塀は猛火炎を防ぐが、高熱により真っ黒な熔融痕ようゆうこんが出来てボロボロに崩壊した。


 土壌がわずかの間に溶解し、天然ガラス化してしまったのである。


「なんちゅう高熱じゃい!!」


「ギャオォォゥ!!」


 大地を揺るがし、五ツ首竜が牙を剥いて粘土巨人に噛みついてきた。


 巨人は尻尾を放して、真ん中の首を両手で押さえるが、他の首が肩や胴体に噛みつき、穴を穿うがった。


「ばに゛ゃお゛ぅ!!」


「おのれぃ……天摩忍法・牙礫弾がれきだん!」


 瓦偶巨人の上半身に鋭い牙のような槍穂が生え、魔獣に連射された。


 粘土巨人の体を泥岩のごとく圧縮させ、飛礫の弾丸に変えたのだ。


 しかし、赤い巨竜の全身を覆う鱗は鎧竜や宇宙アンモナイトの貝殻よりも硬く、すべて跳ね返してしまった。


「ギャオオゥ!!」


 ふたたび灼熱の火炎を吐き出した。


「ここまでかっ!!」


 伴内が森の枝にむかって飛び降り、瓦偶巨人乙型は燃え上がって、真っ黒な天然ガラスとなって崩壊した。


「天摩流氷術・雪狼ゆきおおかみ!!」


 巨竜の背後から竜胆が、薙刀から極寒の氷雪を吹きだし、十頭の雪の巨狼となってネルガルに迫る。


 五ツ首竜は雪狼に火炎を吐き出した。


 が、その火炎が雪狼に触れると凍ってしまい、虹の橋のような物体となった。


「莫迦な……火炎が凍っただとぉ!?」


「雪狼たちよ……力を合わせるのじゃ……凍土を駆け抜ける氷原の王者・雪狼王になれ……氷術奥義・青狼牙せいろうが!!」


 十頭の雪狼が航跡をひいて宙で合体し、大きな青い体毛に腹と脚の内側が白い巨狼の姿になった。


 氷原の王者が牙を打ち鳴らし、寒波となって五つの首を凍らせた。


「やったか!?」


 氷像と化した五ツ首竜を見上げ、静寂に包まれる。


 が、氷から湯気を出して溶け出した。


「ギャオオォォ~~ン!!」


「駄目か!?」


 その前に女剣士がこつ然と立つ。


りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん!」


 紅羽は裂帛れっぱくの気合をこめて呪文を唱えた。


 文字ごとに指が複雑に交差し、組み直される。それは独占印・大金剛印・外獅子印・内獅子印・外縛印・内縛印・知券印・日輪印・穏形印という複雑なものだ。


 最後に息を吹き入れ、結印を解き、右の中指と人差し指を立てて刀で切る刀印とういん

 

 左手は鞘にみたて、腰におく。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」


 ふたたび男は同じ呪文を唱えながら、指の刀で臨を横に切り、兵を縦に切り、闘・者・皆・陣・烈・在・前を五横四縦に切り払った。


 紅羽の下丹田に蓄積された〈神気〉は、下丹田から中丹田(心臓)、上丹田(脳)の泥丸宮へ送られ小川、つまり十二本の神気の通路〈径脈〉から、全身に〈神気〉がみなぎっていった。上に昇るほど、心象世界が田園から山岳へと移り変わる。  


 そして、集めた神気を凝縮して、両手で抜刀した比翼剣に集めた。


「金剛兄はいっていた……陽気発ようきはっするところ金石きんせきもまたとおると……ありったけの神気よ、比翼剣に集まれ!!」


 紅羽が高く跳躍し、臍下丹田に蓄積した〈神気〉を解放する。

 

 全身に赤い闘気が陽炎のように螺旋にうずまいた。


「おおっ……紅羽がいつもに増して神気の炎をまとっておるのじゃ」


 巨大魔獣は力強く羽ばたき、大音声をあげ、紅羽めがけて強襲してきた。


 剣客娘は両手の太刀を下段に交差させて構えた。


「ギャオオオオオオ~~~ン!!」


 ――比翼剣よ……あたしが一点集中し、全身全霊をかけた神気をまとえっ!!


 交差させた比翼剣を正面に向けて左右に広げ、霊剣からひときわ明るく輝く赤い斬撃破を邪竜に向けて放った。


 斬撃破は翼をひろげた黄金に光り輝く神鷲わしの姿になる。


「天摩流火術・金翅鳥斬こんじちょうざん!」


 金翅鳥とは、美しき翼を持つ鳥で、炎のごとく光り輝き、高熱を発する神鳥・迦楼羅ガルーダの事だ。


 古代インド神話においてガルーダは蛇や竜などナーガ族を退治する聖鳥として崇拝されている。


 金翅鳥斬は五ツ首竜ネルガルの真ん中の首を横一文字に両断し、そのまま胴体から尻尾まで真っ二つに切断していった。


 五ツ首竜の避けた身体が再生しようとするが、全身にヒビが入って再生できない。


 大地に降り立った紅羽はガクリと膝を地面につけた。


「ギャオオオオッ!!!」


「おおっ!! ネルガルの硬い鱗の装甲を切断してのけたでござる!!」


 ふたつになった五ツ首竜の巨体が大地に激突し、岩塊になって崩壊していく。


 岩塊が蠢き、再生しようと他の岩塊とくっ付くが、さらなる崩壊が始まり、細かい粒子となって粉砕していった。


「やった……五ツ首竜を倒したのじゃ!!」


 竜胆と半九郎が駆けつけると、紅羽はふらりと倒れ、竜胆が支えた。


「どうした、紅羽!?」


「気を失っているぞ!?」


「……ありったけの神気を使い果たしたんじゃい……寝かせておけい」


 そこへ伴内がやってきて解説した。


「金翅鳥斬は今の紅羽の実力以上の技じゃい……よもや、この技を極めるとは……末恐ろしい弟子じゃいな……」


 伴内はニヤリと笑った。



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