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妖霊退治忍!くノ一妖斬帖  作者: 辻風一
第十二話 岩魔!外宇宙から来た妖怪
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魔獣大戦争

 瓦偶巨人の両腕両足は巨大アンモナイトの触腕に雁字搦がんじがらめにされ動けない。


「ばに゛ゃあ゛ぁ!!」


「おのれい、小癪こしゃくな岩魔め……はなさんかい!」


「デュウゥゥゥ~~ン!」


 マントルワームの三叉に分かれた口が粘土巨人の頭部を噛み砕かんと襲いかかった。


 松田半九郎が粘土巨人の右肩から右腕に、伴内が左肩から左腕に飛び降りた。


「させるか……霊剣・一刀両断!!」


「神気光明剣!!」


「ぐわぁぁ!!」


 巻貝獣の触腕が切り裂かれ、粘土巨人の両腕が動く。


 瓦偶巨人甲型は丸い孔の眼を三角にして、迫る地底怪虫の上顎と下顎をつかんで防いだ。


「デュグブゥゥ!!」


「そのまま引き裂いてやるんじゃい!!」


「ばに゛ゃあ゛ぁぁぁぁ!!」


 瓦偶巨人が力をこめて口を二つに裂いた。


「デュルブワァ!!」


 たまらずマントルワームが胴体の拘束をといて、地中に潜って逃げた。


 その間に半九郎と伴内は粘土巨人の肩によじのぼる。


「俺をおいて逃げるな……岩魔三号!!」


「いまが好機じゃい!」


 残された岩魔十号の残った触手を数本つかみ取り、瓦偶巨人が力まかせに引っ張り、巴投げにして地面に叩きつけた。


 アンモナイトは触手を貝殻に引っ込めて無傷だ。


「なんじゃい、貝殻にヒビひとつつかんとはのう……なんちゅう硬さじゃい」


「うひひひ……おりゃあ、遊星兵団第二位の装甲の硬さをほこるんでい!!」


 アンモナイトのカラストンビが開いて黒いすみを吐き出した。


 墨は黒煙のごとく大気に広がり視界を閉ざす。


「うわっ……煙幕攻撃だ……」


「まるでタコのようなやっちゃ!!」


「これではどこから来るかわかりませぬぞ!」


「なあに……忍術師匠のこのわしに、煙遁の術は効きませぬわい……」


 伴内が片膝ついて巨人の肩に両手をつくと、瓦偶巨人も同じ動作をして、大地に手をついた。伴内の手の平と連動して、巨人の掌も輝く。


 大地に棒状の巨大な土塊が盛り上がり、長さ十丈もある巨大な古代のほこが作られていく。


「天摩流土術・天魔反戈あまのまがえしのほこ!!」


 伴内が眼を閉じ、察気術で気配を探った。黒煙の向こうから妖気を感じ取り、瓦偶巨人が持つ魔を打ち返す霊戈れいかをそこへめがけて戈先を繰り出した。


「うぎゃあああああっ!!」


 墨による黒煙が霧散していき、宇宙アンモナイトの口内に天摩反戈が突き刺さっていた。


 岩魔十号の体がボロボロに砕けて岩の破片になっていく。


 穂先が本体である赤い輝石を砕いたのだ。


「おおっ……煙幕の中で命中させるとは……お見事!!」


「わはははは……わしと瓦偶巨人甲型が本気を出せば、ざっとこんなもんじゃい!」


「ばに゛ゃあ゛ぁ!!」


 伴内が鼻の下の口髭を人差し指でこすると、瓦偶巨人も同じ動作をする。


 ズズズズズズ……


「この振動は……」


「デュウゥゥゥ~~ン!」


 瓦偶巨人の背後の地中から、土砂を吹き上げて怪体節生物は鯨のような頭部を出した。


 鯨が水中の音を追跡できるように、このマントルワームも地中や地上の振動音を聴き取って相手の位置を探ることができるのだ。


「岩魔三号め……生きておったんかい!?」


 粘土巨人に二つに裂かれたはずの頭部は元の姿に再生しており、三方向に口が割れた。


「元の姿に戻っている!」


 粘土巨人が天摩反戈を構えて、振り向いて斬ろうとするが間に合わない。


 地魔は口から周囲の空気が螺旋状に歪む超振動波を発した。


 マントルワームは口腔から超振動波を発することで硬い岩盤をも砕いて地底を掘り進むことができるのだ。


 広い岩盤層を粉砕したさいの衝撃で地震が多発していたのである。


 伴内は長年の勘から、


「これはいかん……松田殿、飛び降りて下され!」


「う……わかった!!」


 伴内と半九郎は近くの森林の木の枝めがけて飛び降りた。


 瓦偶巨人の上半身が空間を歪めるほどの超震動波につつまれ、微粒子にまで粉砕されてしまった。


 ざらざらと砂粒になって崩れ、残った脚部が後方に倒れた。


「瓦偶巨人!!」


「まさか、あんな奥の手があるとは……ぬかったわい……」


 地魔が三方向に開いた口を大木の枝につかまった半九郎と伴内に向けた。


 第二の超振動波を浴びようというのだ。


「くっ……これまでか……」


「南無三じゃい……」


 その時、マントルワームの背後の空間が陽炎のように揺らめき、巨大な帆船の姿が出現した。


「あれは!?」


「天空丸じゃい!?」


 空中帆船のへさきの船首像にはズー号の名前の元になった獅子の頭にわしの身体を持つ怪獣ズーが飾られていたが、その下部が丸く開き、中から円錐螺旋状の穿孔錐ドリルが迫り出した。


 ギュルルルルルルルルッ!!


 舳のドリルがマントルワームの胴体を串刺し、そのままぶち抜いた。


「デュグワァァァ!!」


 地下のマントル層にまで掘り進む大怪虫の身体に大きな空洞が生じ、岩の破片となって砕け散った。


 本体の赤い輝石を粉砕したのだ。


 天空丸の矢倉から紅羽、竜胆、黄蝶、金剛が出てきた。


「無事か、小頭! 松田の旦那!!」


「お前達かっ!?」


「おおぉぉぉ……ふう、間一髪、お陰で助かったわい」


「秋芳尼さまはどうしたのですか?」


「それが……亀石壱岐守が岩魔一号でな……」


「秋芳尼殿は奴の手につかまり、富山に連れていかれたんじゃい……早く追いかけんと……」


「それに半刻後に地震爆弾とやらが地の底に向けて発射されるんだ!!!」


「ぴええええっ!? あっちもこっちも、大変なのですぅ!!」


「お二人とも早く天空丸に乗ってくだされ!」


「よぉぉし、みんなで岩魔の本拠地に殴り込みだぁ!!」


 天空丸はその雄姿を、東の富山にある岩魔の本拠地に向けて舵をきった。



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