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妖霊退治忍!くノ一妖斬帖  作者: 辻風一
第十二話 岩魔!外宇宙から来た妖怪
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妖術・結晶眼

「なんじゃとぉぉ!!」


「えっ、なに? ゴンゴン星雲ナンタラの按摩あんまだって!?」


岩魔がんまだ!! 腐った眼と耳で、よっく覚えとけ!!」


「なんだとぉ!!」


 紅羽の憤慨をよそに、栄六が両腕を斜め十字に胸前で交差させる。


 全身の肌が灰色の岩肌に変形していき、眼も鼻も口もない、全身が岩石におおわれた怪物に変身した。


「石の怪物になったのですぅぅぅぅ!!」


「もしや……天狗てんこうが知らせに来た災いとは、こやつのことか……」


 岩石人間の眼と口の当たりに切れ目が入り、赤い眼が輝き、口が開いた。


 口は鮫のように尖った牙がずらりと並ぶ歯列がある。



「がははははは……地球の原始人どもめ、思ったよりも、やるではないか!!」


 岩石人間は丸太のような腕を横の壁に叩きつけた。


 破砕音がして薄い壁板に穴が開き、外に出た。


 こんな大騒ぎにも、長屋の住人が出てこない。


 万が一のため、事前に長屋の住民を避難させていた。


「待てっ!!」


 紅羽と竜胆が十字手裏剣を岩魔に次ぎ次と打った。


 が、見た目どおり、岩のように硬い岩肌は、金属の手裏剣をかつ、戞、戞、とはじき返す。


「はね返した……なんて、硬い肌だ……」


「俺にまかせろ!!」


 黒羽織の影が前に飛び出した。


 ガシッ!!!


 松田が同田貫どうたぬきの峰を岩魔六号の左肩に叩きつけた。


 が、これも弾きかえされ、相手は痛痒も感じないようだ。


「つぅぅ……なんて硬い体だ……まるで生きた甲冑かっちゅうだぞ……」


「そんなもの、屁でもないわ!!」


「ならば……天摩流火術・鬼火矢おにびや!」 


 紅羽が赤い神気で包まれた太刀を交差させると、交点から炎の神気があふれ出し、炎の矢となって放たれた。


 夜闇に火箭を引いて飛んだ鬼火矢は岩石人間の顔面にあたり、妖怪は苦しげに呻いた。


「なにぃぃ……銃火器もないのに、急に火焔弾が生じたぞ……こいつも呪術師か!?」


「呪術じゃない、忍法だ!」


「なんでもいいわい……まとめて始末してやる!!」


 岩魔六号の眉間に切れ目が走り、第三の赤い巨眼が大きく見開かれた。


 その眼から一閃の赤い光線が走り、竜胆と紅羽に放射された。


「なんだ、この光は……」


「これはまずいのじゃ!!」


 天摩忍者として戦ってきた本能が、これはまずいと左右に飛び退いた。


 赤い怪光線のあたった井戸の屋根や桶、木材などが透き通った石英に変化してしまう。


「ぎょっ!!! 木材が水晶になったぁ!!」


「あれに当たれば、我らも水晶人間にされてしまうぞ!!」


「がはははは……全員、結晶体に変えてくれるわい!! これぞ宇宙妖術・結晶眼けっしょうがんよ!!!」


 岩石人間が第三の眼から結晶化光線を連続照射して黄蝶や半九郎を狙う。


 だが、長屋の壁などに隠れ、なんとか躱す。


 長屋の建物や便所、井戸などが次々と結晶化していき、周囲は水晶の世界と化していく。


 ギリシア神話に登場する怪物ゴルゴーンは髪の毛が蛇で、青銅の手を持ち、イノシシの牙が生え、黄金の翼をもつ怪物であり、その顔を見た者は石化されるという。


 この宇宙の妖怪・岩魔は邪眼の力で有機生命体を結晶体に変えてしまうのだ。


「くそぉぉぉ……このままでは手詰まりだぞ……」


 物陰に隠れた半九郎がふと、水晶化した井戸のあたりを見ると、紫紺の忍者装束を着た影が薙刀を構えて立つ姿が見えた。


 これでは岩石妖怪のいい的だ。


「竜胆!! 物陰に隠れろ!!!」


「がはははは……あまりの恐ろしさに身動きできないか!!」


 岩魔人間の第三の眼が輝き、恐怖の結晶化光線が放たれた。


「岩魔六号とやら……私と出会ったのが運の尽きじゃったな!!」


 竜胆は薙刀を斜めにあげ、両手で回転させた。


 青い神気が円を描き、車輪より大きな円形の氷を形づくっていく。


 円形の氷は鏡となり、結晶化光線を受けた。


「天摩忍法・氷面鏡ひもかがみ!!」


「おおっ!! 竜胆のあの術か……」


 鏡は可視光線なら即座にすべて反射する。


 赤い結晶化光線が反射され、岩魔六号めがけて降り注ぐ。


 慌てて光線を止め、身を避けた岩石人間。


 だが、避けそこない、右肘から手の先まで腕が透明な石英と化し、動かなくなった。


「なっ……結晶眼が破られた……莫迦なぁぁぁ!!」


 絶対の自信を持った妖術・結晶眼を破られた岩魔六号が、愕然として立ち尽くす。


「やったぞ!!」


「さすが、竜胆ちゃんなのですぅぅ!!」


 喜びにわく妖霊退治人をよそに、岩魔六号は不敵な笑いをみせた。


「ふふふふ……原始人と侮っていたが、やるじゃねええか……かくなる上は俺も本気で遊んでやらあ!!」


 岩石人間は両手を胸前で斜め十字に交差させた。


「妖術・岩猿変化いわざるへんげ!!」


 岩魔六号の体が光り輝き、ムクムクと身体が膨れ上がっていった。


 腕が長くて太く、胸板の厚い、身長一丈(約三メートル)もある、全身が赤く毛深いゴリラのような巨獣になった。


 長毛下の皮膚は岩石のように硬い。


 岩ゴリラが両手で胸を太鼓のようにドラミングする。


「ガッシュ、ガラガラ!!」


 その姿はアフリカ大陸の密林に棲む大猩猩ゴリラと、古代に絶滅した史上最大の霊長類ギガントピクテスを合わせたような、類人猿の怪物であった。


 竜胆たちは知らないが、牛飼い座ミュー星の高山地帯に住む岩石猿ガーロックにそっくりである。


「巨大な怪物になったのですぅぅ!!!」


「戦いのお時間だぜ!!」


 巨大岩猿は前肢を地面につき、四つん這いで竜胆に襲いかかった。


「おのれ……氷術・花冷はなびえ!」


 薙刀をふるった斬撃破にのって、青い神気が氷の結晶と化して岩石猿をしもで覆い、氷漬けにした。


 身動きが止まり、氷柱と化した岩石猿。


「やったか……」


 四人が氷柱となった怪物の前に出て見上げた。


「なんというデカい怪物だ……しかし、長屋の衆には迷惑だろう。これは寺社奉行所で引き取るか……」


「松田のお兄ちゃん、氷が動いているのですよ!!」


「なにっ!!」


 危険を感じ、四名が後方に逃れる。


 怪物は両手を左右にふるって氷の檻を破砕した。


 長毛がはがれたが、岩石状の身体はどこにも裂傷がない。


「ガッシュ、ガラガラ!! そんなものは効かん!!」



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