悪役令嬢に転生したみたいだけど、知った事ではありません。
最初に謝っておきます。
短編で書こうと思ったら予想以上に伸びてしまうは、書き足りない物が出てきてしまうはとなってしまいました。
なので、これを元に近い内に中編~長編できちんと書こうと思います。
物凄い中途半端な出来かと思われますが、ご容赦頂ければ嬉しいです。
私が前世の記憶と言う物を思い出したのは12歳の頃だろうか。
特にきっかけがあった訳でも、熱が出るとかそう言う事もなく、ただある日寝て起きたら思い出していた。
人格は、上手く混ざり合ったと言うか何と言うか、ともかく違和感等を覚える事もなく私は私と開き直る事に成功。
いやー、不思議体験をしたとは思うけど、だから何だって話だしね。
そして、不思議な事にこの世界が私が前世の頃にやっていた乙女ゲーに限りなく類似していて、それはもう喜んだものだ。
それはそうだろう、自分の好きな世界に転生出来たんだから。
もっとも喜ばしい事は、その作品で所謂ライバルキャラにてカマセキャラに転生した事だろうか。
何故なら、一番近くで見る事が出来るし、面倒くさい男どもに追い掛け回されるとかもないだろうから。
いや、そりゃぁ前世では萌えたり楽しんでプレイしていたのだけど、現実の世界ではごめんこうむる相手には違いない。
と言うか、政略結婚とか己の意思よりそれぞれの家の思惑や国の意思の方に遥かに重みがあるのに、それを無視してヒロインを優先したりする訳だ。
ゲーム越しならご都合主義のハッピーエンドで終わるけど、現実ならば絶対そんな事はありえない訳で。
そもそも、この世界の貴族社会もひたすらに面倒なんだ。
どう転んでも苦労を背負い込むのが確定している主人公になんて、本当に転生しなくて良かった。
もししていたら、全力で全フラグを折りに行っていた所である。
それを考えれば、原作では結構悲惨な終わりを迎えるライバルキャラだったりするのだけど。
現実世界では単純に下手な真似さえしなければ良い訳だ。
そして、何より重要なのが――。
「結婚確定とか最高だろ」
いかん、テンション上がりすぎて口から溢れてしまった。
いやはや、自由恋愛とかマジでクソくらえだよ。
前世でよく言われた事が、お前は俺が居なくても大丈夫だからとか、お前は強いからとか、俺より給料いい女はちょっととか。
マジでふざけんなって話だよ!
そして、男と来たら明らかに作っている女の言動にホイホイ騙されるし……まぁ、私はそんな事出来なくて、だからこそ寝取られたりしたのだけど。
ああ、いけない、折角未来は明るいのにネガティブな事を考えてても仕方ないわね。
ともかく、恋愛出来るかは別として少なくとも今世では結婚出来るし。
もう毒女とか言われなくて済む、まぁネットがない時点でそんな造語ある訳もないのだけど。
で、とりあえず私が立てた目標として、旦那様をばっちりサポート出来る完璧な嫁を目指すと言う物だった。
うん、今世では前世と違い努力しても褒められるから凄く助かる。
いや、前世でも学生のうちまでは褒められたりしたのだけど、社会に出たら逆にドン引きされたりそんなにたくさん資格を取ったり女捨てて昇進したりとかあああ、ダメダメ、またネガティブっちゃってる。
深呼吸を数回しつつ心を落ち着かせる。
寝る前にこうやって色々考えるのは日課にして、ストレス発散だったりもするのだけど。
これじゃぁ逆にストレス溜まっちゃうからね。
うんうん、よし、落ち着いた。
「まぁ、考えなくても王妃とかくっそ面倒くさい事は分かりきっているのだし、そんなのは主人公ちゃんに任せるのが一番ね。
私は自分と釣り合う相手と結婚して、それなりにやって行きましょう」
最終目標を口にして目を瞑る。
うん、今のところ順調に来ているし。
それに、記憶が戻る前の私とかから考えてゲームの時にどこまでも近いこの世界の事だ、多分主人公ちゃんがゲームの時のように学園に来たら、勝手に現私の婚約者様も惚れてくれる事だろう。
後は上手く立ち回って婚約解消して、後腐れなく勝手に幸せになって貰えば良い。
そして、私は未来の旦那様を探し当ててお父様におねだりしなきゃ!
ゲームの時と同様私にベタ甘だからねー。
結構強引に殿下の婚約者の座に押し込むくらいには権力も持っているみたいだ……し……。
気付けば日の光が差し込んでいて、今日も気分よく起きる事に成功する。
すぐに最低限身嗜みを整えて侍女を呼び、本格的に準備を開始。
うんうん、彼女達との仲も大分改善されて言う事なし。
記憶戻ってすぐは本当に恐れられてたからねぇ。
いや、本当に酷かったけど私。
「お嬢様、今日もお美しいです」
「ありがとう。
貴方達の腕のお陰だわ。
それを誇りにして今日も頑張りなさい」
いつものように偉そうに言うと、嬉しそうに微笑みを返してもらう。
いやー、この笑みを引き出すまでどれだけ苦労したやら。
だからこそ毎日見れるようになった今、その度に喜びを感じている。
うん、やりすぎた意識改革も革命も私の知る所ではないので、現状の貴族社会から逸脱しない範囲で自分に取って都合の良い様になるよう努力した甲斐があるってものね。
多分詳しく知られると逸脱していない訳ではないのでしょうけど、傍から見る分には分からないでしょうし、問題ないと自分でも思っている。
まぁ、そのせいで割りとお母様とバトったりしちゃったのだけど、それも今やいい思い出だもんなぁ。
何だかんだ仲直りしたのに、ずっとお母様にイヤミ言われる羽目にはなっちゃったけど。
無論、毎回言い返しているけどね。
いやー、上手い具合に前世と今世の価値観が混ざり合って良かったわぁ。
今思えば前世の私はただのお人好しと言うか、単に良いように利用されるおバカで。今世の私は文字通り傲慢なおバカで。
混ざり合って何か上手くバランスが取れたように思える。
うん、どちらか片方だったら確実に不味かったように思うし、そう考えると記憶戻って本当に良かったわぁ。
「お嬢様、今日は殿下がいらっしゃるそうです」
「あら、それでは早く準備しなくちゃね」
考え事をしていると侍女に声をかけられ、微笑み返しながら口を開く。
んー、そう言えばちょっと予想外な事に、よく殿下が遊びに来るようになったのだけど。
うーん、記憶取り戻してすぐは色んな思惑の下月に1度会うのが決められていて、それを凄く嫌がっていた筈の殿下がちょくちょく遊びに来るようになった事だけど。
まぁ、主人公が来るまでだろうし無理に嫌われる必要もないだろう。
と言うか、今後国の最高権力者になる可能性が高い殿下に嫌われているとか、中々にマズイ事態ではあったからこれも寧ろ良かった事かしら。
さてさて、それじゃぁ未来の旦那様の為に磨いているお菓子作りに励みましょうか。
その為の味見係が殿下とか、知られたら不敬罪とかでとんでもない事態になりそうではあるのだけど。
別にバカ正直に言う必要も無ければ殿下も嬉しそうだから良いよね。
寧ろずっと食べていたいだなんて言うくらい気に入って頂いているようだし、ライバルキャラの私が転生者なら多分主人公も転生者だからそれは大丈夫でしょう。
もし違っても主人公に教えれば良いだけだしね。
そんな訳で、今日も手作りのお菓子を披露する訳だけど。
基本この時代の貴族の女の子は家事なんてする訳もなく、他の事に精を出さなきゃな訳で、案の定お母様にイヤミを言われる。
殿下のお気に入りに口を挟むとは、お母様は本当に凄いお方ですねって言い返して黙らせたけど。
へへ、ざまぁ。
……いや、何と言うかお母様と単なる悪口言い合う悪友的ポジションにお互いなっちゃっているのはやはり改善するべきかもしれない。
この時ばかりは周りの空気が凍りついちゃう事もあるしね。
お母様とはお互いにどこが限界か分かり合っているから、ここは平気とか分かっているのだけど他人はわかんないしね。
うむ、立派な淑女を目指すならば直さないと……カッコ笑いみたいなものだから、別にいいっか。
嫁に行ったらお母様とは会いたくても会えなくなるわけだし、そう思うとちょっぴりさみしいかなぁ。
「ほぅ、今日はクッキーか」
「はい、久しぶりに準備してみました」
因みに、正確に言うとクッキーもどきの訳だが……まぁ、味も似たようなものだしそれで押し通している。
同じ材料がない以上完全に前世と同じものは作れないからね。
最初は物凄く苦労したのだけど、今ではある程度再現に成功しているし、今世のお菓子から色々アレンジするのにも成功している。
実はこっそり料理長に料理の方も提案していたりとかしているのだけど、何かこちらの方では前世どころでは無い程女人禁制的な空気だったので、こちらは黙っている。
何でも一般の家庭では女性が料理して、だからこそ卑しい身分の者はとか馬鹿げた風潮すらあるくらいだしね。
「ほぅ、今日のもまた良い出来だな」
溜め息を吐き出しながら、嬉しそうに口にする殿下。
流石攻略キャラ、お菓子食べている姿も様になっていますね。
じゃなくて、ちゃんと返さないと。
「恐れ入ります」
深く頭を下げる。
うん、勿論味見している訳だけど、褒められるとやはり悪い気はしない。
「うむ、そなたの菓子は本当に美味だな」
しみじみと言う殿下に改めて頭を下げておく。
いやー、まさかこんなに気に入るとは思わなかったなぁ。
設定で甘いもの好きとかあったかしら?
「それはそうと、今日はどんなご用件で?」
一通り談笑した後、メインの用事を聞く事にする。
これでお互いある程度立場もあれば、それに合わせた対応を求められる立場でもある訳で。
年齢と共にそれは増えるのも頷けると言うものだ。
実は、当初殿下がやたら家に来るのが増えた時に、流石に疑問に思って聞いてみたらしどろもどろに説明されたのだけど。
当時はこいつお菓子に目がくらんだなと微笑ましく見たりしつつ、ただ、あながち全てが嘘と言う訳でもなく本当に忙しい時は忙しいのも分かった今となれば、何故しどろもどろだったかも理解できる。
多分突然言われて困惑していたんだろう。
じゃなきゃ、面と向かって嫌いだと言い切れる相手に会いに来ようだなんて思うわけもない。
と言うか、それでご冗談をと言える今世の私の精神力ぱねぇ。
どこから湧いてたのだろう、その無駄な自信は。
今では考えられないわぁ。
「うむ、えっとだなぁ……」
殿下にしては珍しく言いよどみ、急いで違う事を考えていた頭を切り替える。
これは、かなり重要な事なのだろう。
うん、聞き逃さないようにしないとね。
流石にこれまで積み上げて来た物を崩す真似とかしたい訳ないのだし。
根気強く待っていると、チラチラと私の方を数回見た後、若干視線を外して口を開く殿下。
「私達も今年で成人だろう」
「はい、そうですね」
殿下のおっしゃる通り、私達は今年で16歳になり国に1人前の年齢に達したと認められる事になる。
まぁ、この辺は変に乙女ゲーと混じり合っているから、ぶっちゃけカオスなんだけどね。
なんで1人前と認められたのに後2年も学校があるのかとか、ツッコミどころ満載にも程があるわ。
「でだ、正式なお披露目をと言う話が上がっている」
顔を若干赤くしている殿下に、なるほど、そりゃぁ幾ら本気で恋をしている訳ではない相手とは言えそう言う事は照れるよねと同意する。
私だって恥ずかしいもん。
「そうなのですか。
ですが、私達はまだ学生の身分で少し早いのではないかなと思います。
寧ろ、卒業に合わせた方が良いのでは?」
なので、そう返しておく。
まぁ、実際はそうなるだろう。
お父様もそうおっしゃっていたし、何て思っていると何故か不機嫌になる殿下。
ああ、好きでもない女と一緒になるのはやはり嫌なのかな?
大丈夫ですよ、最終学年になれば主人公が転校してきますし。
となれば、下手に今お披露目をするとマイナスになりかねないですしね。
「……分かった」
何故か不機嫌そうにそう呟く殿下に浮かぶクエスチョンマーク。
うーん、なんでこんなに不機嫌になるのかしら?
流石におかしいなと思いつつも、フォローの意味を含めて口を開く。
「大丈夫です。私は逃げたり何てしませんし、後数年なんてあっと言う間ですよ。
それからはずっと一緒にいられる訳ですしね」
逃げると言うか、捨てて行くのは殿下だし友情は互いに思っていれば会えなくなろうとも途切れないと思っているから嘘ではない。
すると、嬉しい事に機嫌を直してそうだなと頷いてくれる殿下。
うん、友情はきちんと育めているようだし、何より何より。
多分殿下的には1番マシな女を王妃に据えたいと思っているのでしょうけど、今はまだ主人公に会っていないしね。
大丈夫ですよ! 私全力で応援しますから!
何て心の中で力強く思っていると何故か怪訝な顔をする殿下。
その上、何か勘違いしているような気がするのだが、私の気のせいか何てなんでおっしゃるのでしょう?
気のせいですよと勿論返してたけど、おかしいのー。
その後また殿下と談笑し、習い事の時間となってお開きとなる。
さーって、どう転ぼうとも貴族の社会には居る訳だから気合入れて頑張らないとね!
さぁ、今日も頑張りましょー!
前書きで書きましたとおり、私の実力不足で短編にまとめきれませんでした。
とても悔しいので連載でリトライしようと思います!
ただ、自分の今出せる実力を尽くして書いてはいますので、短編も公開させて頂きました。
ご容赦頂ければとても嬉しいです。
それでは、ご閲覧誠にありがとうございました。