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新谷の拳  作者: Kei.ThaWest
第1部 拳雄割拠編
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第1話 新谷、その横暴

まいど!

作者のワイから諸注意やで!

この作品は何年も前から書いてるさかい、序盤なんかは特にやんちゃでわやくちゃな表現が多かったりするねんけど、大目に見たってぇや!


新谷教授、日本の大学で2番目に名門である、国立K大の講師だ。

性格は厳格、規律を重んじ、自分の講義に一秒でも遅れるような生徒は人として扱わない。

時間すら守れないクズどもめ、忌々しい。

つい先日も、正課である先端医療技術Ⅰに3秒遅刻した生徒がいた。

新谷は当然ながらその生徒が講義室のドアまで猛ダッシュしている目の前でドアを閉めてやった。

愚かなやつだ、憐れみを含んだ呟きが自然に漏れた。


いつも通りの光景である。

新谷の講義では。

だがその日ばかりは、様子が違った。

新谷はすぐにその異変に気付いた。

ドアが、みしみしと鳴っている!?

そして次の瞬間、堅いオーク材のドアが枠ごと、びしぃ、とはずされたのだ!


「むっ!」

新谷はとっさに飛び退いた。

ドアが内側に倒れる。


「待てよ、新谷」

ドアを破壊した男を見て納得した。

こいつはK大柔道部主将、獄道大厳(たけみちだいげん)だ!

とんでもない腕力の持ち主なのだ。

いずれはオリンピックでメダルすら狙えると言われている男なのだ。


「獄道くん、なんのまねだね?」

「それは自分のセリフすよ!

たった3秒じゃないすか!

それなのにドア閉めちまうなんて酷いじゃないすか!

酷いじゃないすか!

止めてやる!こんな大学!

あんたを倒してからな!」


獄道が構えた。

新谷は溜め息をついて、

「やめたまえ、君ごとき男が私に勝てると思っているのかね?」

と言った。


「問答無用!ていや!」

獄道が膝蹴りを繰りだしてきた。

新谷は頭を後ろに反らしてかわす。

しかし、一発目の攻撃は囮だった。

折り畳まれていた獄道の足が、鎌をもたげるカマキリのように伸びる!

伸びきった足先は、予想以上のリーチで、新谷の鼻頭を叩いた!


ぐじぃ!と鼻の軟骨が潰れる嫌な音がした。

「けひぃ!」

新谷は哭いた。

折れて右側にひんまがった鼻からどろりとしたゼリー状の血が流れだす。


「じゃっ!」

獄道の拳が唸る。

それが新谷の顔面間近まで迫る。

当たればKOは免れない。


だが…。


ぱしっ。


新谷の左手の掌が、獄道の掌を捕まえていた、寸前で。

「お前は、俺の中の餓えた狼を呼びさましてしまった。

もう、どうなっても知らんぞ」


ぎちちちちっ!


「げむ、げむむむっ」

新谷は握力だけで、獄道の掌を、握り、潰した!


次の瞬間、新谷の右足がはね上がった。

それは獄道の股間に深く深くめりこんだ。

「ひぎゃあああ!」

情けない悲鳴をあげながら獄道は股間を押さえつつのたうち回った。

その場の誰もが戦慄したであろう光景だった。


そして後日……


「君は一体何を考えておるのかね?

我が校の財産、いや、ひいては日本の財産にもなりうる獄道くんになんてことをするのだ」

K大学長、霧島霞史郎(きりしまかすみしろう)は怒鳴った。


だが新谷は涼しげにその言葉を受ける。

「甘いですね、学長。規律とは時に力でもって示さなければならないものなのです」


「だがなにも腕の骨を折ったり股間を蹴ることはないだろう」

医学部長、召須原治雄(めすはらはるお)がもっともなことを言う。

「あなたがたは弱腰だ、だから学生ごとき虫どもにも馬鹿にされるのです。

 いいですか、私のこれまでのキャリアと獄道のキャリアを秤にかけてみなさい。

 どちらがより、この大学にとって貴重か、おわかりになるでしょう」


「し、しかしだね、新谷教授…」

「学長、あなた以前、ある学生と夜のホテル街を二人で歩いていたそうですね?」

「な、なぜそれを?」

学長は愕然としていた。

新谷は満足そうに頷く。


「心配なさらないでください、お二人とも。

 私がいる限りこの大学の評判は落ちない、それどころかいずれ世界の大学の頂点に立つことすら…」

室内が沈黙に包まれた。

新谷は一礼して部屋を後にした。


「学長、彼は危険です、はやく手を打たなければ」

召須原が言った。

「仕方がない、あいつに頼むしかない、か」

「あいつってまさか…鉈落断宗(なたらだんしゅう)ですか!?」

「彼しかいるまい、新谷と互角に渡り合えるのは」

重苦しく学長が言う。


その日の夜。

新谷は自宅のソファでくつろいでいた。

最近発売された缶入りカクテルをちびちびやりながらお気に入りのモーツァルトを聞いている。

しかしこのカクテルは美味である。

このどすぐろい色といい、生臭さと表面に浮かぶ見たこともない異物といい、どれもこれもが目新しくていい。

味はクセが強く大人向けだ。

そこいらの青臭いガキどもが飲んだら、田舎のトイレの臭いがするとかいいながら観葉植物に話しかけてまうかもしれないくらい危険でエッジの効いた味なのだ。


そんなことを考えているとき、携帯電話が震えた。

愛人からだろうか、と番号も確かめずに取った。

「はい、もしもし」

「モーツァルトに気をつけろ」

プツッ…それだけ言って、相手は一方的に切ってしまった。


新谷の携帯のディスプレイには非通知と表示されている。

「モーツァルトに気をつけろ、だと?」

そう聞こえた。

どういう意味なのか、この時には皆目検討もつかなかった。

新谷はこの時点で、とんでもない事件に、巻き込まれようとしていた…。


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