表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

たいくつなおひめさま

作者: からばれ

 お姫様だからって理由だけで塔のてっぺんに閉じ込められて、あたしはとっても退屈しています。窓から眺めるお空の色は、今日も綺麗な水色でした。

 おもちゃはたくさんあります。お父様やお母様があたしが退屈しないようにと、お人形さんをたくさん買ってくれたのです。たくさんのお人形さんに囲まれて、今日もあたしは、窓からお空を眺めていました。


「たいくつだなぁ。ねぇ、くまさん、たいくつだよね」


 ベッドにおいてある一番大きなくまさんのお人形さんに、あたしは話しかけました。退屈になったとき、ひとりぼっちがさみしくなったとき、あたしはこうしてお人形さんに話しかけます。くまさんは答えてくれないけれど、退屈やさみしさは小さくなります。

 くまさんが頷いたような気がして、あたしはちょっぴり満足しました。くまさんをポイッと投げ捨てて、あたしはベッドに転がりました。やっぱり退屈でした。


「いたいなぁ」


 その時でした。誰もいないはずの部屋から声が聞こえてきたのです。びっくりして声のほうを振り向いてみると、お人形のくまさんが腰に手を当てて、あたしのほうを見ていました。


「わっ! くまさんがしゃべってる!」


 驚く私の横を歩いて行ってベッドから飛び降りて、くまさんは窓際に立ちました。丸くて黒い瞳でこちらを見ながら、くまさんはあたしに言いました。

「たいくつかい?」


「うん。すっごくたいくつ!」

「それじゃあ、こっちにきてごらん」


 くまさんが手招きをします。あたしはそれに導かれて、そのまま窓際に行きました。青い空に白い雲。もう見飽きた風景でした。


「たいくつは、きらいかい?」

しばらくしてくまさんが言いました。あたしは首を大きく大きく、縦に振りました。退屈はだいっきらいです。


「それじゃあ、ぼくにまかせてよ! おもしろいところにつれていってあげよう!」

「ホントに?」

「ああ、まかせて。それじゃあちょいとまほうをかけるから、めをつぶってよ」


 あたしはくまさんに言われるまま、そっと目を閉じました。窓から入ってくる風が顔を叩いて、何となく気持ちがいいです。


「いち、にぃ、のぉ、さん!」


 くまさんの声が聞こえたと思ったら、あたしの身体はふわりと浮きました。思わず目を開けるとあたしは空を飛んでいました。あの塔の窓から、地面に向けて飛んでいました。



 久しぶりに、楽しい思いをしました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ