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SSランク万能ギルドのドジっ娘メイドが、実は最強の【掃除屋】だった件  作者: 早見 羽流


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第5話 そんな初級魔法でオレたちが倒せるかよ!

 ヘレナの合図と共に男たちが仕掛けてくる──ことはなかった。

 じっくりとこちらの様子をうかがっているようだ。私の構えから判断して、ジョブを拳闘士(グラップラー)とでも勘違いしてくれているのかもしれない。確かに私が拳闘士なら、こちらが仕掛けたところをトルステンが居合でカウンターするだけで勝負がつく。リーチも向こうが有利だ。


 だが、残念ながら私のジョブは魔導師。魔導師相手の場合は、魔導師側の準備が整わないうちに速攻を仕掛けるに限る。時間をかければかけるほど不利になるのだ。


 実際、私は既に2人の攻略方法を両手両足の指では数え足りないほど思いついていた。


「……【ファイヤーボール】」

「なにっ!?」


 私が魔法を唱えると、傍らに小さな火の玉が浮かび上がる。2人は驚きの表情を浮かべたが、すぐに勝利を確信したようにニヤニヤ笑いを浮かべた。


「そんな初級魔法でオレたちが倒せるかよ!」


 まったく、【ファイヤーボール】でも十分倒せると思ったから【ファイヤーボール】使ってんのよ。そんぐらい考えろやバカ。

 私は右手でパチンと指を弾く。すると、火の玉は一瞬にして無数に分裂した。今度こそ男たちの顔が恐怖に歪む。でも後の祭りだ。私に時間を与えすぎたのが悪い。


「……じゃあ頑張って避けてね」


「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」

「うわぁぁぁぁぁっ! あづっ! あづぅっ!」


 あとはもう一方的なものだった。一斉に発射された火の玉は男たちの身体の至るところに命中し、男たちは悲鳴を上げながらのたうち回った。ちなみに、私が彼らに酒をぶっかけていたせいか、2人の薄い頭髪は瞬く間に炎上し、焼け野原になってしまった。


「こ、降参だぁぁぁぁっ! 助けてくれぇぇぇっ!」

「降参! 降参するぅぅぅっ!」

「──【ウォーターシャワー】」


 2人の降参の宣言を聞くと、私は両手に瞬時に水を生み出して、消火してやった。残念ながら、2人の髪を救うことはできなかったけれど、命が助かっただけでもよしとして欲しい。


「はい、ではアニータちゃんの勝ちということでいいかしら?」

「だからアニータちゃん言うなって」

「はいはい」


 ヘレナは私の言葉に頷くと、素早く2人の怪我の具合を確認した。そして、両手を使って頭の上で大きく丸印を作る。どうやら重傷にはなっていないらしい。だが、彼らの身体は無事でも、心に大きな傷を負わせてしまったかもしれない。──なにせ、プラチナランクの冒険者2人がアイアンランクの冒険者1人に完膚なきまでに叩きのめされたのだから。


 事実、彼らは放心したようにその場に座り込んで天を仰いでいた。しかし、私は彼らの心境なんて知ったことではない。ちゃんと約束は守ってもらわないとね。

 放心した様子の2人に歩み寄ると、手を腰に当てて言ってやった。


「……じゃあ、私とリサちゃんに謝ってくれる?」

「……なに?」

「約束でしょ? 守りなさいよ、男なら!」

「チッ……! どうしてオレたちがこんなやつに……!」


 男たちは文句を言いながらも、そこはやはりプラチナランクの冒険者、しっかりと約束を守って、私とリサちゃんの前に膝をつき頭を垂れる。


「「も、申し訳ありませんでしたっ……!」」


「わかればいいのよわかれば……」

「ひ、ひいぃっ! お、覚えてやがれっ!」


 お手本のような捨て台詞を吐いて、男たちは這う這うの体逃げ出し始めた。もっと誠心誠意謝って欲しかったところだが、バカバカしかったので追わなかった。


「お嬢ちゃん、よくやった!」

「アイツらの逃げ惑う様を見たか? 傑作だったぜ!」

「あの2人、最近調子に乗ってたから目障りだったんだ。……でもこれでせいせいしたな!」


 野次馬から掛けられる労いの声。王宮魔導師として先輩のパワハラを受けていた時には決して掛けられることのなかった甘美な響きに、私はなんだかお尻の辺りがむずむずしてきた。



 居心地が悪くなって視線を逸らすと、傍らのリサちゃんは驚いた様子で私を見つめていた。


「あ、アニータさんってものすごく強いんですね!」

「そりゃあまあ、一応魔法学校の首席ですから。私より強い人を探す方が難しいと思うよ」


 私が得意げに言うと、リサちゃんもくりくりと人懐っこい目をキラキラと輝かせながら、尊敬の眼差しを向けてきた。


「プラチナランク冒険者を2人まとめて倒しちゃうなんてすごいです! お陰で助かりました。なんとお礼をすれば良いか……」

「あー、いいのよお礼とかは。私もムカついたから喧嘩売っただけだしさ」


 純粋な賞賛と感謝の念がこそばゆい。私は照れくさくて、右手で頭を搔いた。すると、いつの間にか近くにいたコルネリアが睨みつけてきた。


「気に入らないからといって、誰彼構わず喧嘩を売るのは賢い人のすることではありませんわ」

「……なに?」

「一時の感情に突き動かされていては、判断を誤ることがあるとわざわざ教えて差し上げているのですが、聞こえませんでした? それともバカなんですの?」


 なんなの、この期に及んでこいつは私にケチをつけるつもりなのだろうか。確かに、コルネリアの言っていることは正しいかもしれない。でも、正論ばかりに従って生きていてはコイツみたいな小姑(こじゅうと)のようなつまらない人間になってしまうのだ。


「コルネリアさんは、あの男たちの行いを黙って見逃せとおっしゃる?」


 私はコルネリアの蒼い右目を見つめながら問い質す。こいつがもし正論を言うことしか脳がないクソ厨二女なのだとしたら、私の先輩と大差ないクズだということになる。嫌いな人間リストにぶち込まないといけない。

 しかし、コルネリアは一切表情を変えずに答えた。


「いいえ、わたくしがあなたの立場でも同じことをしたでしょう」

「は? だったらなんで……」

「……少しはやるようですわねあなた」


 コルネリアは私の脇をとおりすぎざまにそんな言葉をかけてきた。偉そうに私の肩に手をポンと置いて。何こいつ!



「コルネリアはあなたの事が心配だったのよ、アニータちゃん」

「アニータちゃん言うな」

「……アニータちゃん。あなたはクビにはしないわ。むしろ、これからもずっとこのエスポワールで働いてくれると嬉しい」


 金髪巨乳店主のヘレナは相変わらず不気味にニコニコと笑いながらそんなことを言ってくる。てっきり勝手なことをして怒られると思っていた私は、彼女たちの反応に少し戸惑いながらも、頷いた。


「……こんな私でもよければ、使ってください」

「ええもちろんよ。改めてよろしくね、アニータちゃん」

「だからアニータちゃん言うなって」


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