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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第1章
88/117

88話 理性と狂気



静かにドアを閉める

焦げ茶色の見慣れた扉に手を添え

部屋の中の君を抱き締めるように額を当てた

ドアの向こうから……咽び泣く声が聞こえた気がした。


そんなはず……あるわけない。

安達さんが俺のために泣くなんてそんな幻想

俺はどこまで自惚れているんだ


「……安達さん。」


その名を呼んだ瞬間、肺の奥から熱が噴き出す。

苦しくて胸を抑える……

固く目を閉じ………君を想う。


本当は

今すぐこの扉を開けて……

大きな目を見開きびっくりする君の細い腕を引き寄せ腰に手を回し抱き締めたい。

そしてその絹のような髪に指を回し、小さな頭を優しく包み可憐なその唇に何度も何度もキスをして熱い吐息を感じながら、トロンと惚けた顔をする君に愛を囁きたい。


そしてそのまま君を抱えベッドに───


いつもの……呆れるようなシミュレート。

俺の中で定番だった想像


君を送る時

デートしてる時

部屋に入った時

ご飯を食べてる時

コーヒーを飲みながら雑談してる時

いつだって……

ふと頭をよぎるんだ。

突然にやって来る

俺を襲う衝動。


何度も。

何度も。

俺の腕の中で激しく乱れて喘ぐ。

快楽に溺れる君を想像してた。

耳に吐息がかかった時の……

あの声を反芻しながら興奮する自分がいた

優しい顔をして、君を騙して───


本当は……ピアスの件の遥か前から

君とBALで再開したあの頃から……

ずっとそうだった。

ただ、認めたくなかった。


頭の中でこうやって何度も君を犯してきた事を

そんな欲を向ける自分を。


彼女のくれた"親友"という椅子にすがりついた醜くて汚くて卑劣な男。


何が……友達だよ。

何が親友だよ。


「……ああ、本当に最低だな俺は」

ギリっ

血が出そうなほど強く唇を噛む。


安達さんが描いてくれた、あの写真みたいな絵には……俺の気持ちがそのまま写っていた。

隠してる気でいた自分が滑稽で……

だから笑った。あんな顔で。


唖然とする君を置いたまま、ただ立ち去るしかできなかった。

あのまま部屋に居たらきっと、安達さんを奪ってしまうから。



(君を俺から守ったつもりで……結局、君を失いたくない”自分を守った”だけじゃないか)

どこまでも自分本位で愚かだと思う。

罪悪感や後悔ももちろんある。

それでもこの選択は間違ってない。


純粋な君を守るためにはこの方法しか存在しないのだから。


このまま俺の気持ちに蓋をするんだ。

君を傷つける前に、穢す前に。

今のままでは……安心して友達を続けられない。

だから、少しだけ待っててほしい。

君を絶対に守るから。


……ごめん。安達さん。

自分勝手で本当にごめん。

でも……愛してるんだ。


オレは勝手に君を愛してる。


この気持ちだけは君に知られる訳にはいかない。だって……軽蔑するだろう?

親友だって───

信じてたのに……そう思うだろう?

だから待ってて。

必ず自分を律して……すぐ君の望む姿に戻るから。

完璧な親友の俺に───


駐車場に着き

晴れ渡る空を見上げた

雲ひとつ無い吸い込まれるような空


澪桜に似合う鮮やかな青

彼女のような柔らかく優しい風

結城は見上げたまま

澪桜に

ここには居ない彼女に語りかける


「安達さん。───君を心から愛してる。」


泣きそうになる結城

会いたい

今すぐ戻りたい……君の傍に。


グッと堪え目を閉じて深呼吸した。


次の瞬間、覚悟を決めた男の目付きに変わる



安達さん。

君の為ならどこまでも優しく、永遠にして唯一の理解者になるよ、何もかも君の全てを肯定しよう。

世界で俺だけが安達さんの味方。


だからどうかお願い。

俺以外君の瞳に入れないで。

誰とも恋なんかしないで。

彼氏なんか……作らないで。

親友の俺さえ居れば他には何も要らないはずだよね?


もし俺から君を奪いさろうとする奴が現れたら……

俺たちの"俺たちだけの世界"を壊すやつは必ず消す。

跡形もなく。

安達さんに気づかれないようにそっと、静かに。


君が俺無しじゃ生きられないように、優しく優しく包むから。


もう一度深呼吸し

長いまつ毛が揺れた

ゆっくりと澪桜の部屋の方向に振り向く


そして醜悪な”本音”を心の中で囁いた


一生をかけて君に尽くすと約束するよ

君が望むならなんでもする。

命さえ賭けても構わない。


だから……ねぇ、安達さん

俺に

溺れて

依存して

狂って

執着して

……愛して。


親友として永遠に───


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