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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第1章

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76話 君は光



クレストリンク


新規事業開発部


無機質な空間に広がる硬いキーボード音と

テンプレのような電話対応の美しい女性の声


1番南向きの計算された優しい光が照らすデスク


長いまつ毛が揺れる。

英字の書類に目を通しながら片手でキーボードをタップする。


合間にスマホを駆使し仕事に打ち込む男性

マネージャー 結城周


新しいプロジェクトに誰を起用するか頭で精査しながら既存の仕事をこなしていた


まだ新入社員は入って2ヶ月満たない。

だいぶ育ってはきているものの使い物にならないのが現状。

頭を抱える。


そこに若く可愛らしい女性が近付いてくる。

「マネージャー、頼まれたデータ送信したのですがご確認頂けましたでしょうか?」


女性に軽く目を向ける

そしてパソコンのタブを閉じ転送されたデータを確認した

確かに届いている。数十分前に───

色んなことに頭が行ってしまって新入社員に頼んだ軽めの仕事をすっかり忘れていた。


「すみません、気付かなくて。……数十分前に送信して下さっていたんですね……」


申し訳なさそうに女性に謝罪し、

データ内容を確認していく。


一瞬の儚い顔に社員は凍りつく


「いっいえ、とんでもないです!!」


内容を確認した結城は

優しい笑顔で次の指示を出す

「ありがとう。佐々木さん。次はこのデータを送りますので、よろしくお願いしますね。

このデータの期日は……そうですね、23日金曜日までにしておきましょうか。翌週火曜の27日にある会議の為の参考資料作成です。なので期日厳守でお願いしますね。あ、印刷も忘れずに。僕覚えないといけないので。」


まだ手を付けていないデータを転送した。

今度は先程のデータとは違う、新入社員がギリギリこなせる程度の難しい内容。

それを簡単に頼む結城

こう見えて実はかなりスパルタ。

一切の甘えは許さない男

なまじ言葉が優しいだけにたちが悪かった。

だか、新入社員は気づかない

結城の優しい笑顔に絆されて───


「はっはい!!分かりました!」


慌てて戻っていく社員。


それを目で追うこともなくすぐさまパソコンのタブを開き直す。

ふと……腕時計を見る

12時半。

(安達さん、今頃ご飯かな?少しだけLINUしてみよう)

周は今週から休み時間を返上し仕事に明け暮れていた。

1つ……一日のルーティンに”タスク”が増えてしまったから。

先程仕事しながら食べた澪桜の弁当。

優しい味付けの……俺を気遣うような手作りのおかずと雑穀米。


親友としてだろうが……それがたまらなく嬉しい。

彼女の為に健康でいなければ……そう、最近常々思う。

彼女と共に生きると決めた俺の唯一の責務。



昨日、もう一度宝石店に出向いて今度はダイヤモンドのネックレスを購入した。

希少なグリーンゴールドの質のいいダイヤモンドのネックレス。店員が現存するダイヤモンドの中では1番の質の石だと言っていた。

澪桜に気づかれないように、レアストーンに目が行ってる間に店員にその話をさりげなく聞いて、そのネックレスにわざと意識を向かわせるように誘導し、試着して貰った。

案外気に入ってくれたようだったので、安心して澪桜にプレゼントした

店員は言っていた、巨匠と呼ばれる職人がたった一人で作った手製だと。

だからあのネックレスは世界に一つ。

俺が貰った……アンクレットと同じ価値。


値段は覚えていない。

というか見てもない。

店員が慌てていたからまぁまぁしたのだろう

そんなことは関係ない

ただ……安達さんに毎日つけて欲しい。

あのアンクレットと同じように。


箱根の店員に言われたこと。

あの言葉が頭から離れない。

君を誰かに盗られる───?


安達さんは決して誰にも渡さない。

誰かに譲る位なら死んだ方がマシだ。


彼女の背後には”男”が居る。それを匂わせることが出来ればそれだけで十分。

最初は誕生日プレゼントとして渡したいだけだった結城の心に黒い感情が混じり濁っていく

でももう、止められない。

止めるつもりも無い。


澪桜から返信が来た。

少し……口角を上げる

(安達さん……君は俺だけの……光。)


返信をすぐに打ち返し

またパソコンに目を向けた


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