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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第1章

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74話 おかえり




澪桜は自分の胸元をずーっと折りたたみの手鏡で見つめる

それを横目で見てクスッと笑う結城


「……それ、そんなに気に入った?」


キラキラした表情で澪桜は食い気味に返す


「もちろん!!!物凄く気に入った!!!

あああああああ。こんな濃くて綺麗なネオンブルー。お目にかかれるなんて夢のようだよ。」


「そんなネオンブルーって珍しいの?その石。全部一緒じゃないの??」


「ちーがーうーよー!!

全然違う!これは多分希少なブラジル産の……」


ガサガサとショップ袋から鑑定書を取り出す


「うおおおおおおおおお!!!マジか!!!マジなのか!!!!」


澪桜が取り乱す

結城は不安になって慌てて聞く


「えっ!?何!?なんなの!?なんて書いてあったの!?」


「これ……幻の……パライバ産のトルマリンだ……結城さん……一体いくらしたの?」


顔面蒼白になる


「えー??知らないなぁ???レシート捨てちゃった☆」

またてへぺろ。

男の癖に無駄に可愛いからムカつく。


「おかしいと思ったんだよ……ネオングリーンでまだ濃い物があるのは分かる。でも……ネオンブルー。パライバの中でもかなり希少なはずなのに。

うおおお。余計に付けて出歩けない……恐れ多いよぉぉ」


恐る恐る首から外そうとする

それを結城は制止した


「だめ!!!購入者権限で拒否します!

今日から毎日仕事に行く時付けてください!服の中入れてていいから!」


無茶苦茶を言う結城


「えええええええ!?そんなぁ!?クラックが起きたらどうするんだよぉぉぉ!!!」



「……じゃあ、明日またジュエリーショップついてきて?割れないダイヤモンドのネックレス選びに行こ☆それなら代案として許すよ」


「ただただ付けないという選択肢は───」


「ありません!せっかく誕生日プレゼントであげたのに、付けて貰えなかったら悲しいじゃん!」


速攻で拒否られた

「ううう。……もう買わなくていいよぉ。

悲しいけど……付けるよぉぉ」


「……そんなに悲しいなら……やっぱ明日ダイヤモンドだね☆はい!決定!」


「なんでだぁぁぁぁぁ!!お前のさじ加減かぁぁ!」


澪桜に選択肢無し。

悲しいかな結城の強制プレゼントのイベントは続く。

結城はデートがしたいだけ。

そして毎日安心して付けて貰えるものを渡したいだけ。


それ以外に

下心も打算も無い。

だから余計にたちが悪い。


純粋な顔でニコニコ楽しそうにする結城を見つめて

頬杖をついた


「……あんまあたしなんかにお金使わないでよ。

……もっと大切な人ができた時に使いなさい」


母親のように諭した

結城はムッとして返す


「安達さん以上に大切な……親友なんて出来ないよ!だからいいの。俺の金は俺の好きに使うんだよ」


いつのも道に差し掛かる

もう家の近く

チラッと目線をやるとまだ拗ねたままの結城

……澪桜は空気を読む


「ネックレス、嬉しかったんだよ?本当に。ただ退色して欲しくないから付けられないだけで」


優しく説明し直す


「分かってるよ。だから代案立てたんだよ。その子の代わりになる強い石。

……つまりダイヤモンド。それなら毎日付けられるでしょ?

俺はさ、気兼ねなく毎日付けて欲しいんだよ。だからきっとダイヤモンドを先に買ってたとしても、

そのパライバを安達さんが気に止めた時点で両方買ってたよ。

……ただ、それだけの事」


結城はそこまで言うと


澪桜の困った顔にハッと我に返る

少し不安そうな顔をして声を弱めた


「……ごめん。俺、強引すぎたね……迷惑だったよね……本当にごめん。」




そんな悲しそうな顔で謝らないでよ───


「そんな事ないよ?……わかった。有難く気持ち受け取るよ……でもなるべく安い物にしてね?恐れ多いから。」


もう折れるしかない。

観念した。


その瞬間

ぱぁぁぁぁっと明るくなる結城

幸せそうに微笑んで

何度もコクコクと頷いている


「うん!!そこはまぁ……善処しますっ」


「……この場合の善処ってどういう意味だよ」


澪桜は笑ってため息をついた。


結局いつもこうなる

結城の強引さも

わがままも

可愛くて許してしまう。

腹が立っても

何故か笑顔を向けられたら

無かったことになる。


たまに大人で

綺麗で

気高くて

それなのに純粋で

真っ白で

ちょっとポンコツで───

結城という人間は色んな一面を見せてくる。

だから仲良くなれたのかな。


これが親友のなせる技なのかな

あれ?


……親友ってなんだっけ?


「着いたよ」

思考の途中で結城の声に遮られた


「うん。ありがとう」


大切そうにショップの袋を手に取り

結城が開けてくれるドアを

当たり前のように出る


「あのね、ずーっと考えてたんだけど」


結城が照れくさそうに言う


「ん?どうしたんだい?」


「俺、安達さんが1番美味しいって思うカレーが食べたい。それを共有したい」


澪桜は結城の子供のようなリクエストに笑ってしまう


「なんだいそれ?……そうだなぁ。

私はバターチキンカレーが好きかな。それでいいかい?しこたま野菜入れて作ろう。……カシューナッツあったかなぁ。」


パアッとまた弾ける笑顔で結城は答えた


「バターチキンカレー!?お店みたいなやつ!?」


「ブレンダー使うから近くはなると思うよ。カスリメティも入れるからね☆」


「……何その呪文」


そんな会話をしながらいつものサビサビの階段を登っていく。

そして澪桜は結城にドアを開けてあげた


結城は何も言わずに入っていく。

もう、お邪魔しますなんて言わなくなっていた。

それがとても嬉しい。


おもむろに手を洗いに行く結城を眺め澪桜はゆっくり部屋に入る。

いつもの自分の家

サンダルソープの香る部屋。


そこに微かに香る

アンバー。

結城のいるいつもの空間。


手を洗って上機嫌で戻ってきた結城に声をかけられた


「安達さん!ご飯は俺が炊くから任せてね!米くらいもう余裕で炊けるからね!」


最初の頃はお米すら研げなかった結城。

自信満々に腕まくりをしてお米を研ぐ準備をテキパキとこなそうとする


澪桜は優しく声をかけた


「……結城さん。」


「ん……何??」


しゃがんだ体制で澪桜に目線を向ける


「……おかえりなさい」


穏やかな笑顔で心から言った


また、会えた。

優しくて少年のように純粋だった結城に。

失ってなかった……

ただ、隠れていただけだった。

彼は離れて無かった。


私はまだ、嫌われてなかったんだね。



「……ただいま??」


意図が分からない結城は

へにゃっと笑って返事した




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