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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第1章

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72/100

72話 制約の歌



「めっっっっっっちゃくちゃ……良かったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


涙目になる結城


「そ……そうかい?……そんな大袈裟な」


しどろもどろになって返事した


「ありがとう!ありがとう!!!歌ってくれて本当にありがとう!!!」


尋常じゃないくらいにお礼を言われて何が何だか訳が分からない


「????そんなに好きになったんだねあの曲……」


「凄く!!!この世で1番好きな歌かもしれない!!!」


即答する


「……ところであれ、どんな歌詞なんだい?」


一瞬静まり返る部屋

結城はしどろもどろになり……嘘を並べた


「えっと……幻の秘宝を永遠に追いかける……歌?」


適当な事を言う


「ああー。なるほど。なんかの漫画みたいだね!!納得!それはロマンがあっていい歌だ!そうなんだ!ふーん」


全く分かってなくてホッとした。

そしてそんな興味も無さそう。

……この感じならスマホで調べたりされなさそうで安心した。

澪桜は興味があるなしが分かりやすかった。


スっと渡されるパネル。

彼女の歌声の余韻にまだ浸って居たかった結城は一気に現実に引き戻された。


「ふふふ。ほら、結城さんの番だよぉ?」


不敵に笑う

その笑顔で更にプレッシャーがかかる結城


「うわぁ!!!……どっ……どうしよう!?自分から誘っておいて今更だけど……俺、家で死ぬほど練習しておけば良かった……このままじゃあだっ……安達さんの耳が腐れ落ちるぅぅぅ」


頭を抱えてパニックになる

そんな結城の肩をバシバシ叩きながら慰めた


「あははははは!大丈夫!下手くそだったら笑うよ!腹抱えて!」


「やめてよぉぉぉ!!!何その大丈夫って!?

俺立ち直れなくてこのままここで頭かち割って死ぬよぉぉぉ!?」


物凄いツッコミ

澪桜はいつもの結城のポンコツに会えて

嬉しくて堪らなくなった。


「……大丈夫、笑ったりしない。冗談だよ。聴かせて?」


優しく……目線を合わせ静かに呟いた

結城は澪桜に見蕩れる

声が出ない


「ほら、何歌える?誰が好き?」


(だ……誰が好きって!?あだ……安達さんですけど!!)


動揺する。

アホか、アーティストだよ。

深呼吸してなるべく自分を落ち着かせ

答える


「……そうだなぁ……」


アーティストを見ていく

見ているのは……洋楽

これも卑怯だと思ったが

できたら言葉がわからない曲を選んで

澪桜に愛を囁いて見たかった。


今日だけ許してください。


「……洋楽?……そうか!結城さんは英語が堪能だから歌も余裕だよね!……もし知ってたらなんだけど……リクエストしてもいい?」


キラキラとした目で結城に聞いた

そんな顔をされて断れる訳がない


「っ……誰の曲?……俺、知ってるかな」


澪桜の期待に応えたい

結城は純粋にそう思った


「Stone Riot……知ってる?」


「……Stone Riot……」

澪桜の口からそんなバンド名が出るなんて

正直驚きだった。

彼女の知識はどこまで広いんだろう。

計り知れない


日本ではかなりマイナーで、欧米で人気のあるバンド

結城は留学していた時に出会い、好きでそれから結構聞いていた。


「……知ってる。曲は……どれにしようかな……」


結城が好きな物を澪桜が知っていた

それが嬉しいような照れるような

そんな表情で検索する。


「……through。」


澪桜が呟く。

それはStone Riotの代表曲であり……唯一のバラード

曲の意味をわかってないはずなのに

なぜその曲を選ぶんだ


歌える……歌えるけど。

歌っていいの……?君に。


愛を囁く。そんな甘い曲じゃない。

これは……永遠に続く愛の制約の歌


「……歌えるよ。これが……いいの?」


震える声で確認する

澪桜は満面の笑みで応えた


「本当かい!?この曲を知ってる人初めて見た!

嬉しい!聴かせてくれるかい??」


「下手だよ。それだけは覚悟しててね」


そう言って曲を入れた


緊張しすぎて指が震える

高揚しすぎて胸が苦しい

澪桜の視線が……心に刺さる


全てを見透かされているような感覚


低く甘い抑揚の付いた美しい歌声が広がる



澪桜を見つめ

彼女の為だけに

誓うように

真剣に……歌う


歌詞に結城の感情全てを込めて──────


───

俺の知ってる世界はただ残酷だった

孤独で……無機質で

何も無い世界


そんな中でただ1つ

光を見つけた

届かないガラスの向こう

たった一つの美しい星

それが君だった。


君の為に何が出来る?

俺の世界の真実は君一人

気付かなくていい。

知らなくていい

届かない君に

触れられない君に永遠の愛を誓う。

俺は君の為なら死すら厭わない。


君は俺の管理者

俺は君だけの奴隷


永遠に君の元に跪く俺を蔑んでくれ


───


高音キーは出ない

結城の甘く低い声は最後のトーンでシャウトになる


澪桜は歌い上げる結城を見て

固まった


「すごぉい」


パチパチと手を叩く

珍しく澪桜の語彙が死んでる

結城は我に返り急に恥ずかしくなった


「っごめん!下手だったよね!?耳が……死んだ!?」


耳を真っ赤にして結城はワタワタと慌てた

澪桜はポカーンとしたあと笑い出す


「なんでそんな必死なの!?いや、普通にめっちゃ上手いじゃないか!びっくりしたよ。シャウトまで出来るなんて……オリジナルより好きだったよ!結城さんの歌のが!」


結城は堪らなくなって立ち上がる

「っ……!飲み物!喉乾いたでしょ!?何飲む??」


「ミルクココア!冷たいの!」

はいはーいと手を挙げた


「了解っ!」


まだ震えている手で電話機を持った

(……オリジナルより好き!?……そんな事軽く言わないでよ。やばい……心臓が爆発しそうだ)


震える声で注文した後

ゆっくり深呼吸しながら戻ってきて


おずおずと澪桜の隣に座る


「結城さんめっちゃ歌上手かったからびっくりしちゃったなぁーマジで!あれだね!完全にただの謙遜だったね!

本当の音痴の人にボコられるやつ!」


楽しそうに暴言を吐く

結城はなんだか気が抜けてしまい

眉を下げた


「ボコられるの?俺。

めっちゃ嫌なんですけど。あれはたまたま歌いやすかっただけだよ。

でも安達さんの耳が腐らなくて本当に良かった」


「なんだそれ!……さぁて……何歌おっかなー?次は!?」


そう言って楽しそうに検索する

心から楽しそうにしてくれる澪桜が愛おしい。

歌も……聴いて貰えた。

想いも伝えられた。


「……次は何聴かせてくれるの?」


柔らかく微笑んで

少しだけ傍に寄り添った


「これ歌う!!いひひひひ!さぁて!久しぶりに”地声”出すか!結城さんがあんなカッコいいシャウト出すから!

私も出したくなった!」


澪桜が喉の辺りを触りゴキゴキ鳴らす

意味が分からない


「……地声??……シャウト??」


すると……先程のアリアとは打って代わり

物凄く激しいビートが鳴り響く

男性のビジュアル系のパンクロックバンド。


……男性の……曲?

女子が男性の歌を歌うのはまぁある事だと思う。

ただ振り幅が酷い。


この曲はなんか、真っ暗でギラギラした狭い箱の中でジャンプしながらヘドバンしまくるようなやつ。


「これは……モノマネしながら歌わねば」


そして立ち上がり

歌い始める


結城は耳を疑った。


腹の底から

いや、地を這うような低い声で歌い出す

美しいビブラート

フォール

こぶしを使いこなし

まるで本物の男性歌手のような声で熱唱する


結城……息をするのを忘れる


「え?……ちょ……まって?え?」


目の前に可愛い顔をした結城が惚れているはずの……男性がいた。


「おるぁぁぁぁぁ!!ノッてるかぁぁぁぁ!!」


拳を上げシャウトで叫ぶ

結城はまたひとつ澪桜の違う一面を見てしまった。


一応合わせて拳を上げてみる優しい結城。


「……なんでこんなカッコイイの。おかしくない?」


静かに呟いた


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