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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉


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68話 未来は未定

ただただ、二人でスーパーに行って、買い物して駐車場の車に乗り込む……それだけのお話。



カサカサ……

カゴの中を綺麗に整理しながら商品を入れていく


「……これで全部ですか?」


最後に卵をカートの中に入れて結城は微笑んだ


「……うん。ありがとう、いつもごめんね」


申し訳なさそうに澪桜は頷く


(……どうしたんだ。なんでそんな顔するんだ)


不安になる。

それでも結城は自分のせいとは気付かない。

守ってるつもりだから……


テクテクといつもの感じで歩く澪桜

だけどどこか距離があるように感じた。

結城はなるべく傍を歩こうとする

不安で仕方なくて

だけど……無意識に保たれてしまう距離。


それは自分が作った距離なのに。

結城は澪桜を大切に思う余り

その事に気付けなかった。


結城の横顔に少し後ろから目線を送る

気付かれないように、そっと。


いつも通りの穏やかな彼

冷たくされた訳ではない

だけど何処か遠い存在になってしまった。

出会った頃のように。


元々自分から彼と友達になりたいと求めたとしても、本来ならば関われるような人ではない。


生きる次元が違う人

それは頭で理解が出来る。

経済力も社会的地位も別次元なのだから。


もし、もしもがやって来たとしても受け入れないと

ちゃんと、受け入れないと……

何度も自分に言い聞かせる


澪桜の思考は最悪をシミュレーションする。

それは彼女が生きていく為の防御本能。

止めたくても……思考は止まってくれない。


レジに並ぼうとする結城に

澪桜は堪らず後ろから声をかけた


「……もし、もし私と友達をやめたくなったら言ってね。ちゃんと受け止めるから。」


結城は目を見開き反射的に後ろを振り向く

澪桜は目線を合わせない

下を向いていた


「何……言ってるんですか?」


怖くなる

彼女を失いかけてる……?

どうして……


話しかけようとした瞬間


「お次のお客様どうぞ〜」


急かされるレジ

仕方なく購入したものをカウンターに出す

澪桜は反対側に回り……支払いをした


いつもなら……結城に任せるはずの支払い


(なんで会計まで……?俺……何かした……?)

会計が終わった品を運ぶ澪桜


「よいっ……しょっと!」


エコバッグの中に入れていく

結城は言葉が出ない


少し離れて立ち尽くしたまま声もかけられずにいた


離れてしまった距離

何故だか理由が分からない

怖い

どうして


不安で不安で堪らなくて

張り付いた喉を無理やり開く


「……安達さん。……俺……何かしましたか?」



振り返った澪桜は眉を下げて言った


「……どうしたんだい?何もしてないよ。ただ、いつも奢ってもらうのは申し訳ないなと思っただけだよ。」


手際よく詰め込む澪桜の手元を見ながら呟いた

「でもそれは……俺の役目でしょう?晩御飯もお弁当も作って貰ってるのに……これじゃ何も返せません。」


「じゃあ……次はお願いするよ。ね?」


そう言ってエコバッグを持とうとする澪桜の手から

結城は流れるように奪い取る

触れないように


なるべく彼女の役に立ちたい。


「はい。……約束ですよ。」



それより……

レジの前で言われたさっきの──────

別れの暗示のような

到底受け入れられない言葉。


「それと……先程の……あれはどういう意図で?」


「……」


澪桜は何も言ってくれない

別れを想定しているそんな表情


やはり気のせいじゃなかった。

結城は耐え切れず必死に伝える


「……俺はっ……安達さんとの……友達という関係を終わらせるなんて絶対にしません。

どこにも行きません。どうしてですか?なんであんな事言ったんですか?

ずっと傍に居るって約束したじゃないですか。」


それでも崩れない敬語に

澪桜は心が擦り切れていく


やっと……仲良くなれたと思ったのに

喪失感が……襲う


「……約束は確定ではないよ。……未定。

未来に確約なんて存在しない。……絶対なんて有り得ないんだよ」


寂しそうにそう呟いた


「何でそんな事言うんですか。

……俺と居るの……嫌ですか?

昨日……俺があんな事してしまったから……?」


車に乗り込んだ結城は

泣きそうな声で呟く


「それは……私の方だよ。ごめん、あんな声出すつもりはなかった。不快にさせたね。

……結城さんは女を出されるのが嫌いだと知っていたのに。」


頭を下げて謝った


「違う!!違う!!そうじゃない。そうじゃないんです!!

俺がっ……俺が悪いんです。調子に乗ったせいで……安達さんは何も悪くありません。……だから俺なんかの為に謝らないでください……」


必死に否定した

助手席の澪桜が軽く顔を結城の方に向けた

目線を合わせないまま


「……今でも……友達かい?」


「……親友ですよ。もうただの友達じゃない

……未来は未定なんて悲しい事言わないでください。

確かに確定なんて無いのかもしれない

でも……俺は死んでも約束を破りません。

安達さんを裏切らない。それだけは言えますよ」


震える結城

真剣な目で視線の合わないままの彼女に縋るように伝えた


「……そうだね。結城さんに……軽蔑されてなくて良かったよ」


「する訳ない!!!安達さんをそんな風に思うことなんて一生ありません!!」


食い気味に否定した

それを聞いて少しホッとする澪桜


「そっか……それなら良かったよ。」


やっと分かって貰えて少し安心したのか

結城は胸を撫で下ろした


「……分かって貰えて良かったです。親友を失ってしまうのかと……ヒヤヒヤしましたよ」


場の空気を温めるように冗談混じりで言った


でもやはり……変わらない。

澪桜は目を閉じて深呼吸しポツリと呟いた


「……また仕切り直しか。まぁ、時間はあるゆっくり元に戻っていこう。」


自分に言い聞かせるように──────


「……え?なんの事ですか……?」


無意識なのか

結城は気付いてくれなかった。

でも澪桜は指摘しない。


離れてしまった距離

それは自分のせいなのだから。


「何でもない。……ランチ、結局どこにすることにしたの?」


いつものテンションになるべく戻す

私を軽蔑してない。

彼の言葉は真剣だった。

さっきの言葉に嘘はないと思う。


それが分かっただけで嬉しかった

結城さんを失わずに済んだのだから。


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