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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉


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64話 アンクレット

すみません、今回長いです。



ふと澪桜が立ち止まる

お土産屋さんの通りから少し外れた場所に

とてもオシャレな建物がポツンと建っていた


四角くて真っ白な外壁。

マホガニーの渋い扉


そこだけ地中海を思わせるような造形で

センスの良さが際立っていた


近寄ってみると

【selectshop NOX】

と小さく書かれているだけ


ムズムズしている安達さん……

でも一向に入らない

なんか躊躇っているの?


「……入りたいんですか?」


一応聞いてみる

すると遠慮するようにコクンと頷いてもう一度店の外観を眺める


「……入りたいけど……敷居が高い……私のような芋が入ったら瞬間にボコボコだよ。きっと」


ひぇぇぇぇ……

昭和っぽい大袈裟なリアクションの後に首を振った


「いや!どんな店ですかそれ!?ないよそんな店!」


ビシッとつっこんだ。

俺のツッコミも板に付いてきた気がする


ずっとソワソワしてる安達さんを見てたらなんか可愛くて誘導してあげたくなるんだよなぁ、俺。


「ほら入りたいんでしょ?……入って?」


扉を当然のように開けた


「ひいいいいい!結城さん勇気ある〜!……ゆうきだけに。」

しょうもないダジャレを言って中に入った


それを聞いて溜息をつきながら結城も中に入る。


洗練された店内。

アクセサリーや洋服、革の靴、バッグなどが美しくディスプレイされていた。


「……いらっしゃい」


アンニュイな男性が座ったまま挨拶をする。


見た目は30歳前後

ウェーブがかった黒髪のロング。

センターで分けた髪が柔らかくハーフのような骨格の顔を浮かび上がらせる

綺麗に整えられた髭がミステリアスな魅力を引き立てていた。


客が気にせず店内を見回れるようにの配慮だろう。

こちらに興味はないようなそんな素振り。


澪桜は楽しそうに店内を隅々まで見て回る

そんな彼女に視線を送り見守る。

ふと店員を見ると……澪桜を目で追っていた


それだけなのに……


何故か無性に腹が立った

店員と視線があったので反射的に逸らす


(余裕が無さすぎて……最近俺、死ぬほどかっこ悪いな)


自覚があるのがまた辛い。

ふと手元にあるアンクレットが目に入る。


シンプルだが美しいフォルムのベネチアンチェーンのマットブラックな品


思わず手に取った

欲しい訳ではない……いや、正確には一人で付けたい訳じゃない。


だけど……友達でしかない俺が買ってお揃いで付けようと言って安達さんに渡すなんて

───到底出来ない。


ゆっくり戻そうとした

「……それ、いいだろ?俺の友達の作品なんだよ。」


気安く話しかけてきた店員

ピクっと肩を揺らす


「……ただ少し手に取ってみただけですので」


冷たく低い声で返す


「……そう?……まぁ少しだけ俺のウンチクに付き合ってよ。……彼女の方は夢中になって店内見てるみたいだし。お兄さん暇でしょ?」


「……。」


無言で返した


「そのアンクレットはさ、炭化チタンってので出来てるアンクレットでさ。毎回デザイン変えるから一点物なんだよ……いや、正確には二点物。必ず対で作るからね。

ハンドメイドだから唯一無二の作品なんだよ。」


力説する店員

買わせたいというより……友達の作品を自慢したい

そんな感じだった


「……へぇ。」


興味はあったが……先程の視線が気になり

冷たく反応する。


ニヤッと笑みを深める店員


「……あの子、お兄さんの彼女?」


確信をつかれた


「……貴方には関係の無い事です。」


目線も合わせず表情も変えず

淡々と答える。

眼光のみ刺し殺すほどの鋭さで


「……ふっ……そうなんだ。……へぇ。」


挑発するような返事

そして目線は澪桜───


カッとなった結城は思わず澪桜に言う

「そろそろ行きましょうか?……ほかの店も見てみるといいですよ。」


革の財布を手に取ってまじまじ見ていた澪桜が振り返って言う


「あ、ごめん!集中してた。ちょっと待って」


そろ〜っと商品を置く

結城は店員の目線が気に食わない。

さっさと店を出ようとした

すると後ろから声がする


「可愛い子だねぇ……モタモタしてると……盗られちゃうよ?お兄さん」


ニヤッと髭を触りながら言った


「……っ!!!」

ギリっと歯を食いしばり睨みつける

これ以上居たら何か暴言を吐いてしまいそうで堪えきれず外に出た


(……しまった……安達さんを置いてきてしまった。だけど今更もうあの店には入れそうもない)


あの店員にもし口説かれでもしたら……と思うと気が気じゃない

だけど……澪桜の前でこれ以上かっこ悪い所を見せるわけにもいかない。

早く出てきてくれ……そう願いながら外で待つ


「あー。せっかちだなぁ……」

そう言いながら外に出ようとした


「……お嬢さんちょっと。」

後ろから呼び止められた


「……?はい?なんでしょうか?」

澪桜は振り返る


「……プレゼント……探してたの?」


「……え!?なんで分かったんですか??」


「だって君、ずっと男物探してたでしょ。……さっきの彼にあげるの?……彼氏かな?」


「すごい!その通りです!!……でも彼氏じゃないですよ?ただの友達です。」


ブンブンと手を横に振った

すると店員は意味深に笑う


「……へぇ……”友達”……ねぇ。」


「そうです!友達!」

ニコニコしながら答えた


「……そのお友達、そのアンクレット見てたよ?気に入ってたみたいだね。」

店員がゆっくり指を指した


「アンクレット?……これ?」

柔らかくしなやかな触り心地、結城に似合いそうな品のあるアクセサリー。


「そうそれ。俺の友達が手作りしてるペア物」


困った顔をする

「……ペアかぁ……1つだけ売って頂く事は可能なんですか?」


不思議そうに聞く店員

「どうして?お嬢さんは付けないの?」


「……ただの友達なのに、私とペアは嫌だと思いますので。」


ふふっと笑って店員は嘘をついた

「……残念。それはペア売りでね。……それに世界に一つだけのペア物。対になる片割れが離れ離れなのは可哀想だろ?そう思わない?」


ぐぬぬ。と思考する


「……たしかに……どうしよう。」


「……あのお兄さん、ペアの方が喜ぶと思うよ?

だって仲がいいんでしょ?

最近はね、友達同士でもペア買ったりするもんだよ。」


適当なことを言う店員。


「……そんなものでしょうか。」


うーんと悩む


「どうする?プレゼント梱包位はタダでやってやるけど。」


商売上手な男、更に澪桜を畳み掛ける


「……じゃあ……ください!!」

まんまと乗ってしまう。


「まいどあり。……お嬢さんにとって大切な友達なんだね?彼は」


「はい。とても優しくて……良くして頂いてるので。

何かお返しがしたくて。」


カードで支払いをしながら


照れたように笑った

頬を少し赤くして


それを見て……店員は確信したように微笑む


「……あのお兄さんは幸せ者だね。

あ、そうそう、いい事教えてあげるよ。

お嬢さんも彼も、”かならず”左足に付けなよ。

それと理由はネットで検索しない事。じゃないとジンクスが逃げるからね。」


手際よく梱包しながら

ニヤッと笑って言った


「左足!……分かりました!!ありがとうございます。」


「お嬢さんは今付けてく?後でオソロってバラして喜ばしてやりなよ」


「……そうします……いやでも……私とお揃いで喜びますかね?死ぬほど不安なんですけど。」


オドオドとしながらも

左足にこっそり付けて

ズボンで隠した


「もし喜ばなかったら『ごめん、私も欲しくなっちゃった』とか言って誤魔化しなよ。……まぁ多分それは無いけどね……あの感じだと」


クックックッと悪者みたいな顔で笑った


「はい……?」

首を傾げる


「ほら!出来た。ところであの彼とお嬢さん、幾つ?」


梱包が終わり商品を手渡す


「28歳です。私は27」


不思議そうに返した


「!!若いねぇ……そうかそうか。42のおじさんからしたら……初々しいよ!

そうか28か……青春してるねぇお二人さん」


そう言って笑って送り出してくれた

よく分からないが楽しそうだなと思う澪桜


外に出ると結城がソワソワしながら待っていた


「……遅かったですね?……何か言われたんですか!?それともされた!?」


慌てる結城

ケラケラ笑って首を振る


「何をされるって言うんだい?店で。店員さんに失礼だよ」


「ぐっ……だって。」


……君を邪な目でみてたんだもん。

言いたいけど言えないよ


「ごめん、買いたいものがあったから買ってただけだよ。待たせてしまって申し訳ないね」


「……そうだったんだ。」


少しシュンとする結城


時刻を見ると夕方の5時前になっていた

澪桜は驚く


「わー!あっという間だったね。もうこんな時間だ」


思いのほかセレクトショップで時間を食っていたみたい


「……そうですね。もう少し見て回る?それとも……もう帰りましょうか?」


「もうお腹いっぱいだし、渋滞も気になるから結城さんの体力を考慮して帰りますか」


ニコッと笑って言う


(俺の体力なんか……気にしなくても大丈夫なのに)

もっと一緒に回りたかった。そう思って寂しそうに返事する


「……そうですね。ありがとう、じゃあ帰りますか」


とぼとぼと歩く結城

駐車場に着くと澪桜が止まった

振り返って首を傾げる


「……?安達さん?どうしたんです?」


「いつ渡そうかと思ったけど……今にしよう。

箱根の思い出は……箱根で渡さないとね」


そう言って後ろに隠していた手を前にやる


シックなグレーの小さい手提げ袋


「……え?」


結城が止まる


「……いつも、優しくしてくれてありがとう。今日もずっと楽しかった。……だから、これはささやかな私の気持ち」


え……?

俺に……?


心臓が……うるさい

震える手で受け取った


「……開けてもいいの?」


上ずる声

澪桜は優しく微笑んで頷く


梱包を開ける

箱の中から

あの……アンクレットが出てきた


「……これ……」


「店員さんが言ってた。結城さんがこれ、ずっと見てたよって。だから……買ってみた」


しししっと笑う澪桜を見て……胸が苦しくなる

俺を思って……?


それと同時に虚しさが押し寄せた


(違うんだよ……安達さん、これは……俺だけ付けても意味がなかったんだ。ふたりで……付けたかった)


気持ちを押し殺してお礼を言おうとした時

済んだ声が響く


「……見て?」


目線を澪桜に向けた

足首に……鈍色のライン───

まさか……


目を見開いた


「……私もお揃いにした。店員さんが友達同士でも最近は付けるって。結城さんに「頑張れ青年」って伝えろって言われた。……なんの事だろうね?はははは!」


(あの野郎……)


ムカつくような有難いような……複雑な心境

だけどそれより……


ものすごく嬉しい。

澪桜からの……3度目のプレゼント。

俺は臆病で何も……

何もあげられてないのに。


「ありがとう……。付けていい?」


「もちろん!あ、店員が2人とも左足に付けろって言ってた!ネットで調べたらジンクス逃げるからやめろとも言われたよ!!」


しなやかなアンクレットが結城の一部となる

足首で揺れる黒いアクセサリーに視線をやり

目を細めた


……男女ペアで左足にアンクレット……

それは配偶者か恋人の証。


一生叶わない俺の夢───



「……そうですね。調べない方がいい。夢が叶う為に」



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