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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉


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63/70

63話 最高のご褒美



「はあああ!いいお湯だった!なんかHPが回復した気がする!!」


一人でティンティンティリリン♪とどこかで聞いたことのある回復音を歌う澪桜


「ごめんね、温泉卵無くて……リサーチ不足だった」


後ろからとぼとぼ歩き

しょげる結城


「とんでもないよ!!足湯しながらのランチ!

サイコーだったよ!!むしろ温泉卵より良かった!」


楽しそうに振り返った

それを見て安心し

笑みを深めた


「……良かった。楽しんでもらえたなら。

また何時でも連れてきてあげるよ」


まるで恋人のような会話。

どんどん自分の口から甘い台詞が紡がれていく事に

気付かない結城


「うん!また来ようね!!次は……私が奢ります!」


ふんすっと澪桜が息を巻く。

結城は眉を下げて冗談交じりで返した


「……土曜日の昼飯は俺の奢りの約束でしょ?

今更何言ってんの?いっつも晩御飯作ってくれてるでしょ?」


「だって!!遠くまで運転させて奢ってもらうなんて

申し訳ないじゃないか!!」


食い下がる澪桜

首を振って返す


「いいの。これは俺のわがままだから。

…ね?…聞いてくれるでしょ?安達さんなら。」


甘い囁きに

澪桜は反論できなくなった


「むむむ〜。」


「はい。この話は終わり、さあ車に乗ってお土産屋さんが沢山ある通りに行こうか。」


駐車場に着いた結城は助手席を開けた。

いつの間にか当たり前になる光景。

澪桜も慣れたのか、ありがとうと言いながら普通に乗り込む


変わりゆく景色を見ながら澪桜は車から流れるBGMにあわせて鼻歌を歌う

それを聴きながら結城は機嫌良く運転をしていた。


「……さっきの足湯、気付かなくて良かったね……ふふふ」


おもむろに話しかける澪桜

顔がニヤニヤしている。

なんか……このタイミング、嫌な予感がする


「……な……何が?」


「カミキリムシがいたんだよ……結城さんのすぐ隣にね

気づいたら悲鳴をあげるだろうと思って結城さんの尊厳を守るためにあえて言わなかったけどね……ふふふ。」


「ぎゃああああああ!!カミキリムシいたの!?言ってよ!!速攻で言ってよ!!!尊厳とかどうでもいいから言ってよ!!!」


「いやぁ、カッコイイ個体だったよ!樹上性の虫なんだけど芝生にいるのは珍しい。……多分あれはメスだね。」


「性別どっちでもいいよ!!!俺の話聞いてた!?ねぇ!!!」


フッと笑いながら澪桜は言った


「……教えたとしても君、カミキリムシ触れないだろ?」


「……あ……安達さんが取ってくれたらいいでしょ。」


不貞腐れたように結城が言った

女性に頼るのはかっこ悪いかもしれないけど、触れないから仕方ない。


「私は虫は好きだけど……触れない!!!キーキー鳴くから怖い!持つ時の力加減も分からない!力入れすぎて足が折れでもしたら可哀想だろ!?」


ものすごく胸を張って誇らしげに言う。触れない理由も詳しいけど様子がおかしいし、矛盾がすごい。


「威張って言うな!!!!なんだそれ!?知識無駄すぎでしょ!?」


盛大につっこんだ

ケタケタ笑う澪桜

結城のツッコミでツボに入ったらしく涙を流している


パーキングに停め

お土産屋さんが並ぶメインストリートに向かいながらため息をついて呆れた顔で聞いた


「……触れもしないのに、なんでそんな虫好きなの?」


隣を歩く澪桜に目線を落とし

優しく聞いた


「うーん。何でかなぁ……理由はその生態かな。

完全変態の虫が特に好きなんだよだね。不完全変態も好きだけど。」


結城を見上げながら笑顔で答えた



「ん?完全変態?……生態?」


「蝶とか、クワガタとか、カブトムシとかテントウムシとか。……ようは幼虫から蛹、成体に変わる虫だよ。すごいよね。命懸けで自分の体の組織を一旦溶かして全て作り替えるんだから。私には想像も出来ない、遺伝子の神秘だよ……ロマンだねぇ」


土産屋の品を覗きながら楽しそうに言う


そう言われると……何故か納得してしまった


「……たしかに。死ぬ覚悟で蛹になって蝶になる。それは凄いことかもしれない」


振り返った澪桜は

理解して貰えた事が嬉しくて更に応える


「しかもね、孵化したからと言って終わりじゃない。

逆さになって、体液を羽に送り広げてから、乾燥させないといけない。そこで失敗したら終わり。羽化不全を起こして死んでしまうんだよね。……自然界とは残酷だよ、せっかく生まれたばかりなのに。」


「……それは過酷だね」


澪桜の話は淡々としているのに

何故か……聞き入ってしまう。

虫なんて嫌いなはずなのに。

心に響く


「そう、だから儚くて美しくて……好きなのかもね。」


物思いにふけるような声で答えた


「……ちなみに、カミキリムシはどっち?」


「完全変態!ちなみにさっきいたゴマダラカミキリは害虫だから駆除対象だなぁ。でもあそこには居座らないよ。産卵の目当てになる木がなかったから。」


即答する澪桜……


なんでそんな詳しいの……

触れないクセに

俺はそんな君の不完全なとこが好きなのかな。


虫の話を聞きながら結城は思う


2人は

ちょこちょこと食べ歩きしながら散策を楽しんだ


「……ふー!お腹がはち切れそうだよ!!」


苦しそうに澪桜が言う


「……だから止めたのに!何でもかんでも買って食べるから」


結城はまだ余裕がありそう。


「だって……美味しそうだったんだもん……そして美味かった!全て!!」


「そうだね。……頑張って歩いて消費しないとね」


「だね!……て……あ!結城さん!結局何にするか決めた??」


「?……何が?」


「ほーらー!車の中で賭けたじゃん!忘れたの?1つだけ何でも言うこと聞くって!」


思い出したように結城はいう


「ああー!そんなこと言ってたね……あれは冗談だよ。気にしなくていい、ただのゲームだったんだから」


そう言って首を振った

不服そうに澪桜が返す


「……なんかずるいぞその大人な対応。」



「……そう?……じゃあ……そうだな……買い出しは明日にしてくれる?今日はこのままゆっくりしようよ。」


少し考えて

結城は言った


今日帰ってから買い出しに行く予定だった2人。

1日でも多く一緒に居たい結城はさりげなく願いを言う

ささやかな……願い。


「……そんな事でいいの?」


「うん、それがいいな。……お願いできる?」


「いいよ!明日買い出し行こう。」


快く了承した。

少しだけ残念そうにしていたのだが結城は気付かなかった。


「ありがとう、今日は思いっきり楽しもう?」


「そうだね!……あっあの店見て!!行ってみよう」


はしゃぐ澪桜の後ろ姿を眺めながら結城の髪が……揺れる


安達さん

ごめんね、俺……ウソついてた。


本当は……お願いしたいことがたくさんあったんだ。


毎週日曜日も傍にいたい。

夜はもっと遅くまで話していたい。

君と手を繋いでみたい

ふたりでくっついて写真を撮りたい

絹のような髪に触れてみたい


そして……


……彼氏に……して欲しい。


だけどどれも言えなかった。

言ったら……きっと全てが終わってしまうから。


一生そばに居るって約束したのに。

そんな馬鹿な真似出来るわけがない。

君を失う訳にはいかないから。


楽しそうに店を回る澪桜を目で追いながら

包み込むように……切なそうに微笑んだ


「こんなに箱根を満喫出来るなんて、最高のご褒美だよね!」

振り返って満面の笑みで言う君を見て

俺は胸が痛い。


「……うん。本当にそうだね。」


違うよ。

箱根なんか……関係ない

笑顔の君が見れただけで俺はもう既に最高のご褒美を貰ってたんだよ……安達さん。


そう心の中で呟いた



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