62話 箱根とすね毛
「箱根だぁぁぁ!!」
嬉しそうに駐車場で両手をあげる
車をロックし結城は背伸びした
「んー!思ったより早く着いたね!箱根なんて何年ぶりかなぁ……」
「運転お疲れ様でしたっ!休憩がてら何か飲み物でも飲みに行く?それとも先にランチでもする??少し早いけど」
時計を見ると時刻は現在11:21
結城は少し考える
「いえいえとんでもない。
そうだな……あ、でも足湯しながら温泉卵食べたいんでしょ?
ランチなんかしたら安達さん、食べられなくなっちゃうよ?少食なんだから。」
自分よりまず澪桜の胃袋を心配する
「……たしかに……でも結城さん食べないでしょ?温泉卵。だったらランチ先のが───」
「一緒に食うよ。まぁ、1個でいいけどね」
「なんかネットで見たらお土産屋がズラーッて並んでるところもあったから私も1個だけにしよう。
あれ?……ここはなんか自然豊かだけど。」
今更見回す澪桜
そんな抜けてる彼女を見て
クスッと笑う
「どうせなら景色のいい場所で足湯したいでしょ?だからね。……行こう?こっちだよ。」
おいでおいでと手招きをする。
小走りで寄ってくる澪桜
結城のスマホを覗き込む
「どこどこ??……ここを直進かい?」
「っ!!」
不意を突かれる結城
(近い近い近い!!!……あ、いい匂い……じゃない!!!ぐっ……可愛すぎる!!)
内心パニックで目線を逸らす
「……っなんか……カフェメニューもあるし、ランチとかもあるらしいよ。……ほら、行こ……」
しどろもどろになりながらも誘導する
「ほう??……温泉卵あるかなあ!?泉質はどうなんだろう?アルカリ性単純泉かなぁそれとも硫黄泉!?」
(温泉まで詳しいんだ。……安達さんて本当謎だなぁ)
テクテク歩きながら結城に泉質を聞く澪桜
「……泉質は分からないけど、源泉かけ流しの美人の湯で有名なとこらしいから足ツルツルになるかもね。」
「おおおお!美人の湯?それはいいねぇ!!むしろ普通に浸かりたい!ほら、結城さんの分のタオルも持ってきた!ぬふふ!!」
持ってきたハンドタオルを両手で振り回し澪桜は楽しそうに言う
(っ……湯上りの安達さん……)
一人で変な妄想をして鼻血が出そうになる男をほったらかして。
─────────
「おお!ここか!!!……オシャレだっ」
入口を見上げる澪桜
和と洋を調和したような門構えに感動している。
笑みを深める結城が先に門に手を触れる
「ふふ。……最近出来たらしいよ?はいどうぞ」
さりげなくエスコートし
趣きのある透かしの引き戸を明け澪桜を先に通した
「うわぁ……既に絶景」
美しい庭園が広がり眼前には絶景のパノラマ。
結城からしても想像以上の美しさだった。
しかもこの日は晴天。
青と緑のコントラストが素晴らしかった
「……こんなに綺麗だとは俺も思ってなかった」
「いらっしゃいませ。……お二人様でいらっしゃいますか?」
年配の女性が案内に来る
目線を落とし結城は穏やかに対応する
「はい。……足湯をしながら食事も楽しめると伺いまして。」
「あ、はい!ホームページご覧になられたお客様ですね?ありがとうございます。……こちらにどうぞ!」
敷地内は広くレストランも併設され、宿泊施設まであるようだった。
「わー!ここ館内だけで1日楽しめそうだよ」
キョロキョロ見回しながら結城に話しかけた
「……今度泊まりに来てみる?」
サラッと髪を靡かせ首を傾げて答えた。
言った後……一人で止まる。
自分で咀嚼して
顔を真っ赤にさせた
(っ……バカか俺は!?やばい!!軽蔑され───)
焦って澪桜を見る
……あれ?
「ここ!見て!!!メダカがいる!!!すごい数だ!!!」
石で出来た鉢をまじまじと眺めていた。
(聞いてねぇぇぇぇえ!!!!危ねぇ!!良かった……いや?良くない……?ん?ん?)
一人で混乱する忙しい結城。
クスクスと笑いながら店員が誘導してくれた場所はそこ1番の絶景スポットだった。
20mほどの足湯があり、カップルや家族連れなどが点々と座り楽しんでいた。1番左端に結城と澪桜は座る
眼前にはそびえ立つ山々。東京では絶対に見ることの出来ない景色
早速靴下を脱ぎズボンを捲る。
「結城さん!早く早く!!」
「安達さん!?なんでそんな早いの!?ちょ……ちょっと待って!!」
いそいそと靴を脱ぎ準備する
「うわぁぁぁぁ〜良きかな良きかな。くぅうぅぅぅ……湯が噛み付くねぇぇぇ♪」
もう足湯始めてる。待つ気ゼロ。
そしてセリフがおっさん過ぎ
「待ってって言ったのに。もう!」
そう言いながら結城も足を浸ける
「うわぁ……気持ちいい。なんか……蕩ける」
運転の疲れなど無いと思っていたのに
体が解れていく
「気持ちいいね〜……景色も綺麗でサイコー」
「本当だね。サイコー」
ふたりでポケーっと景色を眺めた
まったりと過ぎていく時間
何のドラマもない
だけど2人にとってはかけがえのない一時だ
(このままずっと一緒にここにいられたらいいのに。)
結城は一人幸せを噛み締める
楽しそうに澪桜は脚をチャパチャパさせた。
隣の結城の足にコツンと当たる
「あ、ごめん。」
「!?……えっ……いやっ」
(落ち着け!足がっ……当たっただけだろ!?)
柔らかい足の感触に動揺した。
気付くと澪桜がずーーーーーーっと結城の足を見ていた
「…………ん?」
「…………すごい。結城さん、本当に男の人だったんだね。」
感心するように澪桜は呟く
「んん?……いや、前から普通に男してますけど??」
意味がわからないからとりあえずつっこんだ。
「……足が…大きい。何センチ?」
「ああ、そういう意味ね。28cmだよ。」
横に並べて測る
3cm以上差があった
「私より3cm以上でかい。すごいね!ちゃんと筋肉もついてる。……ひょろろだと思ってたのに」
「……ひょろろって何。ちゃんとあるよ筋肉くらい……こうすればほら」
ふくらはぎに力を入れる
脛の辺りとふくらはぎの筋肉が引き締まり隆起した
「おおおおおお。すごい凄い!!」
「もう、ひょろろとは言わせませんからね。」
フフンと勝ち誇る
「……いやぁ、意外と筋肉もしっかり付いてるし、美意識も高くて凄いねぇ。」
更に感心しているみたいだがなんの事かやはり分からない
「……美意識?なんの事?」
「足がツルツル。お父さんのゴワゴワ、チクチクの足と違う。」
比較対象が父親。
それ以外知らない。
「ああー。すね毛の事?生えてるよ、色素薄いからパッと見分からないんだよね。量も薄いし。」
パシャっと足を上げ見せる。
光に透けてうっすら見えた
「……本当だ。うわ!すごい!!羨ましい!!色素の薄さ!!」
さわさわと触る
「っ!!!ちょ!安達さん!?」
「わー。サラサラしてる!毛並みがいい!あはははは!」
撫で回されるふくらはぎ
どんどん顔が赤くなる
耐えられず顔を隠した
「……ううぅなんか恥ずかしい……勘弁してください……」
ひとしきり結城の足を堪能した澪桜は
満足気に言う
「それより結城さん!温泉卵は!?早く店員さん呼んで注文しようっ!!」
パシャパシャと楽しそうに言う
恥ずかしそうな様子のまま復活出来ない結城が
さっきの店員さんから受け取ったメニューを眺め
思わず声を漏らした。
「あ。」
「え?……なに?」
「……温泉卵……ない。」
「ええええええええええ!?そんなぁぁぁぁ馬鹿なぁぁぁぁ!?」
澪桜の声がやまびこになってこだました。




