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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉


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57話 チーズ饅頭



夜 10時半


いつもの公園の前に車が停まる


今日はいつもより共に居られる時間が少なくて

物足りない結城

だって、飲み会なんかのせいで週末なのに

傍に居られなかったから


でもわがままを言える立場じゃない事は痛いほど理解している。

俺は安達さんの”親友”であって”恋人”ではないのだから。


精一杯笑って別れを告げる

「……お疲れ様でした。ゆっくり休んでください」


キョトンとした顔の澪桜。



「?……上がって行かないのかい?

まだ10時半だよ?

週末は遅くまでいられるって言ってなかったかい?

それともあれかい?帰って仕事があるとか、明日早朝会議があるとかかい?」


さも当たり前かのように誘う澪桜

結城は嬉しくて

あからさまにウキウキした顔をした


「な……何も無いよ!いいの??上がっても!?

その……疲れてない?お邪魔じゃない?……俺。」


でも澪桜の体調は心配。

配慮しつつも上がりたい気持ちダダ漏れ。


「何言ってるんだい??私はフラストレーション溜まりまくりなんだよ!?

君にサンドバッグになってもらわないと!!

家で背徳様なフィーカと洒落こもう!」


「……背徳様?フィーカ?何それ」


いつもの変な語彙にツッコミながら

車を駐車場まで走らせた。



車を降りて

テクテクと歩く二人


「……今日そんなに嫌なことあったの?」

不安そうに聞いた


「いや、さっきのは冗談だよ。

心配してくれてありがとう

……私は角に座ってご飯食べてただけだからねぇ。何も無かったよ、隣は沙也加ちゃんずっと居てくれたし元々私の周りの席だった人はお酒だけ持って終始何処かに旅立ってたしね。」


サラッと濡鴉の髪を靡かせて歩く

フワッとシャンプーの香りがした。

近くに澪桜を感じて……

目を閉じた


「それなら良かった。松井さんに感謝だね。2人は仲良しみたいだから」



“男避けになってくれた松井に感謝”

本音を隠して結城は言う



「そうだね。沙也加ちゃんはいい子だから。……あの子ね、早く結婚したいんだって、だからいい人探してるっていつも言ってる。

幸せになってほしいよあの子には」


そう言って優しく空を見上げた


立ち止まる結城


「…………安達さんは?」


低く静かな声で聞く



振り返る澪桜


「……結婚……考えたり……しないの?」


真剣に───

どこか淋しそうに聞く

結城の髪が涼しげな瞳を掠める


「……うーん。昔……考えたことがあったよ……でもね、もういいかな。結婚とか恋愛とかそーゆーのは。」



そう言ってイタズラに笑いながら結城の目を捉える。

君がいるからもういい。

そんな風に聞こえた。



余計に……乾く。

聞きたくないのに

知りたい。

我慢出来ない。


「……彼氏は……?」


心臓が早い。

俺の立場で聞くのはおかしい。

分かってる。分かってるけど


ずっと聞きたかった事

過去の……恋。


「1人だけ!何年か前にね。」


「……!!!」


分かっていたのに

覚悟していたのに……

ショックだった。


続け様に畳み掛けてしまう。


「……どのくらい付き合ってたの?」

カンカンと錆びた階段を登る音が

響く。

結城の冷たい声と共鳴するように。


「……1週間!あはは。付き合ったとは言えないかな?」


「……1週間!?」


驚きと同時に少しだけ

気持ちが回復した


(親友の俺より……付き合いも短い。)


「ほら!そんなことより早く入りなよ。続きは中で話すから」


グイグイと押される

ちょっと照れながら中に入る


「お邪魔します。」


「結城さん!もうそんなの言わなくていいよ!家みたいなもんでしょ!?」


そう言いながら荷物を置き

台所で手を洗う


結城は洗面所で手を洗った

「……家みたい……か。」


口角を少し上げ独り言を呟いた。

鼻をかすめる白檀の香り


洗面所から戻ると

いつものように

澪桜がコーヒーを入れていた

結城専用のマグカップと澪桜のマグカップ。


まるで……共に生活しているように。

結城は目を細めた


(元彼より……俺の方が上だよね?)


勝手に勝負し勝手に愉悦に浸る


ジャケットを脱いで座椅子に座った

「ほい!コーヒー。オヤツはちょっと待ってねぇ!昨日良いもん作ったんだよ」


そう言って冷蔵庫から取り出す


「これ美味しいよー!?はい!」


目の前に出された物

丸くて厚みは控えめな焼き菓子。クッキーとも違う。しっとりとした質感


「……これは?なんて言うお菓子?」


「ふふふ。私の大好きな宮崎のお菓子、チーズ饅頭!」


ドヤ顔で言う

聞いてもなお、ピンと来ない結城


「……チーズ饅頭。俺初めて食べる…すごいね。こんなの作れるんだ」


感動しながら可愛い形のお菓子を手に取った


「どうしても食べたくなったからね!ネットで調べてアレンジした!

私はザクザクよりしっとりとした食感が好き!」


食べるのをワクワクしながら待ってるので

期待に応えて口に運ぶ


「……じゃあ、早速いただきます」


1口齧ってみる。

澪桜の言う通りしっとりとした生地に

ゴロッとしたクリームチーズの塊がぎゅうぎゅうに詰まってる。

軽い甘さと濃厚なクリームチーズが口に広がる。

最高の……あまじょっぱ。


「うわ…なにこれ……うまぁ」


語彙力が溶けた


「ひひひっ!美味いでしょ!?ねー??たくさん作ったからいっぱい食べていよ!」


冷蔵庫から大量に出てくるチーズ饅頭。


「これコーヒーにめっちゃ合うね!やば!……止まらない!」


そう言ってパクパク食べる

とても美味しそうに


そんな結城を楽しそうに見つめる澪桜

頬杖をつきながら呟いた


「……ふふ、また作ってあげるよ。いくらでも」


キュン

澪桜に胃袋と心臓を鷲掴みにされ

思わず視線を逸らす


「なんでそんないちいちセリフが男前なの……?俺、安達さんが男じゃなくて良かったって今心からそう思った」



「立ってるだけで絵になってた男が何を言うか!?災害級の顔してる癖に!!!」



「disaster!?むぐっ」



「ネイティブな英語で言うな!なんかムカつく!」


口にチーズ饅頭突っ込まれた。


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