56話 擬似告白
少し改稿しました。
「お前飲み過ぎだ!!!アホが!あれだけ言っただろ!?勝手に注文しまくりやがって!何杯飲んだ!?」
澪桜と共に肩を貸す山本
「……6杯れすかれ〜」
「ハズレ。8杯だよ。飲んだ記憶すらニフラムかい」
澪桜は呆れる
「ヘイタクシーー!わらしかえりたいれすウップ」
何かが込み上げる松井
地面に平行に手を挙げる。
……もちろんタクシーは止まらない。
「……俺車取ってくる。松井さんがリバースしないように……山本しっかり保護しとけよ」
無茶を言う結城
「えええええ!?無理だよ!人の内臓まで俺、管理出来ねぇよ!!」
げんなりしながら松井を支える
「同じ上司の立場から言わせて貰うが、お前の監督不行届。
そして俺を英語採点機能として召喚した罰だ。
車の中でリバースしたら……クリーニング代はお前だからな。」
まだ根に持ってる。
結城の車は高級車。……クリーニング代は計り知れない
「ええええええええ!?そんな金ねぇ!!!」
慌ててタクシーを呼び止め急いで松井を押し込む
「俺は上司として!
責任もってこいつ送り届けるわ!
今日はお疲れ!!!
お前らも気を付けて帰れよ!?」
タクシーのクリーニング代の方が安く付くと一瞬で判断した山本。
逃げるように自分も乗車する
「……送り狼だけはやめてくださいよ?私の可愛い沙也加ちゃんを……」
ギロリと睨む澪桜
「はぁ!?するか!ボケェ!!!」
ブチギレる山本
顔が真っ赤なのは珍しい
2人はネオンの向こうに消えていった
「……嵐のようだなあの二人はホント」
ボーッと見送る澪桜
フッと笑って結城が返す
「……俺達も帰りましょうか。」
当たり前のように。
結城は微笑んで言う
それに頷き澪桜が返した
「そうだね。駐車場どこに停めたんだい?」
テクテクと歩き始める
それに寄り添い結城は歩幅を合わせる
人一人分開けた感覚のまま。
「この先の曲がったところ。すみません。歩かせるつもりじゃなかったから……ちょっと離れてて。」
申し訳なさそうにした
「いいよ!食後の運動!カラオケも一曲しか歌えなかったし!……しかし結城さんの歌も聞けなかったのはかなり残念だよ」
あの後もう一曲歌った松井がヘドバンとジンライムの相乗効果で即死したのだ。
「俺は歌下手くそですからね。助かったと言うべきかも」
困った顔で笑った
結城を見つめ微笑む
「……それでも聞いてみたかったなぁ〜。」
残念そうにする澪桜。
その横顔が綺麗で目が離せない
俺の歌声が聴きたい……?
どうして……。
ドクッ
また……心臓が
……苦しくなる
「そして私の耳コピ英語聴かせてしまったからねぇ……よりによって英語堪能な結城さんに……あぁ。一生の不覚」
また思い出して勝手に凹むその姿が
可愛くて愛しくて……
どんな仕草も表情も好きなんだと改めて自覚した
あの歌が本当に耳コピか確かめたい。
不意に衝動に駆られる
足を止め
呼吸を整えて
結城は……口を開いた
「I fell for you three years ago, and it never stopped.
俺は三年前から君に恋をしてる。
その気持ちは、一度も途切れたことがない。
From that day on, everything started revolving around you.
あの日から、世界の中心は君になったんだ。
At this point, I honestly can’t imagine my life without you.
今となっては、君のいない人生なんて想像できないよ
…Were you aware of that?
……君は知ってた?」
ドクッ
ドクッ───
緊張が走る
……もし……もし……言葉が分かったら
親友じゃ……なくなる。
どうしよう、俺はなんて事を……
言った後に後悔が押し寄せた。
目を見開き……振り返る澪桜
2人は立ち止まる
息を飲む結城
澪桜の唇をひらいた
「すごい……外国人みたいだ。」
キラキラとした笑顔を向けた。
「なんて言ったの!?すごい!!結城さん!本当に英語出来るんだね!!すごい!!」
尊敬の眼差しで結城を見る
(……良かった。英語が分からないのは本当だったんだな。)
ホッと胸を撫で下ろした。
だけど少しだけ残念にも思ってしまう。
そんな卑怯で情けない自分が悲しい。
複雑な気持ちで結城は切なそうに……笑う
一度目を閉じて言った
「……でしょ?いつもかっこ悪いとこ見せてるからね。たまにはカッコつけないとね。……見直した?」
エッヘンと胸を張る
心の内を必死に隠して───
「カッコイイよ!!見直した!すごい!!外国人だ!!」
「いや、日本人だよ。何言ってんの。……でも俺がいたら翻訳機になるから海外でも安心だよ?便利でしょ」
ニヒヒっと少年のようにイタズラめいた顔で言う
「……私、地面から離れられないがね。」
「……あーーーー!!そうだったぁぁぁ!」
忘れてた!と結城がショックを受けたまま
駐車場の精算機に先に向かった
ピタッと止まる澪桜
「…………でも。まぁ……結城さんとなら、海外行ってみてもいいかもしれないね。」
結城はびっくりして振り返った
あれだけ怖いと言っていたのに、信じられなくて。
すると優しく微笑んだ彼女は更に言う
「親友の君となら……例え事故で死んでも……後悔は無いかな」
…なんで……そんな事言うの……?
切なくて
苦しくて
何も返せない。
嬉しい
君のそばで死ぬのが……俺でいいなんて。
そんなの……ズルいよ。
「……でも墜落事故で死ぬととても痛そうだね!
せめて高高度から落ちてる途中で2人とも意識不明になるように祈ろうね!」
身も蓋もない追撃に
ガクッと肩を落としつつ
結城は愛しさを精一杯表現した
「……それでも君と死ねるなら俺はいいかな。寂しくないから。」
「そうだね!孤独死より安心だね!」
嬉しそうに笑って言った。
俺の気持ちは届かない。
でもそれでいい、それがいい。
太陽のような眩しい笑顔を向けてくれる君を……
俺は愛してるんだ。




