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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉


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55/69

55話 澪桜の歌声



「うい〜歌った歌った。くぅ!!!SUI君激ヤバ!!!かっこよすぎて吐きそう!」


大満足の松井はジンライムを一気飲みする


「おっ……おい、お前それはゆっくり飲め!」

山本が慌ててチェイサーを渡そうとする


「?」

結城が首を傾げる

そこに澪桜がコソッと耳打ちして補足した


「あれ、ジンってお酒のほぼロックだからアルコール度数40%くらいあるんだよ。ビールの約10倍」


「じゅっ……10倍!?」

ナイスリアクション。

するとイントロが始まる


「おっと、はじまった」


素早くマイクを取り軽く握るその仕草と横顔に見惚れる。


集中していたらトントンと肩を叩かれた

邪魔をされてイラッとする結城


「……なんだよ?」

目線も合わせず言う


「あいつなかなか上手いからちゃんと聴いて評価してくれよ!くっくっ」


なんか嫌な笑い方だ

こいつ何か企んでるな

そう思うが気にもしない。


曲が始まる


澪桜が一息呼吸を整え大きく息を吸う

結城の心臓が……早くなる


透明感のある声が鳴り響く


「Your innocence makes me want to cry.



結城は目を見開きバッとモニター画面の歌詞に目を向けた


(……英語……?)

もう一度澪桜の方を向くとあまり歌詞を見ていない。


(覚えて……いるの?)


ガラス細工のように美しい歌声に聴き入ってしまう。

感情を込めて大切に歌う姿が印象的で……


無意識に歌詞を追いかけてしまう

意味を追いかけてしまう。

君の声で綴られる……愛の歌



ドクッ

心臓が悲鳴をあげる


艶めいた音色

ネイティブな発音……

美しい表情を浮かべる彼女


何もかも知らない澪桜

結城はずっと目が……離せない


初めて聴く澪桜の歌声に夢中になる

それと同時に英語の堪能さに驚愕した。

聞いてなかったから。

英語が得意だなんて


そしてこの歌

なんでこんな切ない曲を歌うの……?

選んだの……?


悶々としながらも聴き入っていた。


すると……ラストのサビ

ずっと凝視していた結城と


澪桜と目が合う───

結城を見つめたまま……歌う。


心臓の音がうるさいのに

顔が赤くなっていくのが分かるのに……

射抜くような彼女の視線から

目が逸らせない───


『─────────I need you right now

───』


喉が……鳴る……

え……?これ……誰に向けて歌ってるの?

……俺?

動揺する結城


そんな訳ない。

彼女が俺を……?そんな馬鹿な。

だとしたら誰……?

過去の……男……。


冷静になるために持ったグラスに力が入る

想像しただけで気が狂いそうになった

安達さんは未だに誰かを想ってる?

その男を忘れられずに───


そんなの……絶対に嫌だ。

嫌だよ……

耐えられない。

急に俯く結城


少しずつ小さくなるビブラート。


その余韻を楽しむこと無く

歌い終わった途端に澪桜は満足気に演奏停止を押す


「あー!!歌を歌うのは楽しいねぇ!!いひひ!久しぶりに大声出したー!!」

そう言っておしぼりの袋を開けてマイクを拭いていた。

先程のあの切ないバラードは何だったのかと思うほどあっけらかんとした様子でまたココアを飲んでいる。

いやむしろ、ホイップクリームを食べている。

幸せそうに。


「……え?……」

呆然とする結城

そこに山本と松井が寄ってくる


「どうだった!?」

「結城さん!ご感想は!?」

まるでインタビューのように。

オフのままのマイクを向けた


ビクッとする結城……チラリと澪桜を見る。


……ココアを飲みながら幸せそうに揺れてるし……くそぅめっちゃ可愛い。


もう一度2人を見ると……

キラキラと期待した眼差し

はぁ。とため息をついて感想を言う


「上手だったよ。想像以上に。……アリアかと思ったよマジで」

それはお世辞では無い。

本当の評価。

素人のカラオケでこんなに聴き入ったのはお世辞抜きで澪桜が初めて。

それは好きだからとか余計な感情を差し引いてもだ。


2人は目を合わせもう一度結城をみる

「「ちーがー(います)うーよー!!!」」

全否定している


コーヒーを飲もうとしてびっくりする

「なっ……何が!?」


「歌が上手いとか、そんなの知ってるよ!そうじゃなくて!!!安達!ちゃんと英語なの??あれ。」


「そうですよ!!そこですよ重要なのは!結城さんが聞き惚れるとかそんなのテンプレ過ぎてどうでもいいです!」

しれっと凄い悲しいことを言う


何を聞かれているのか分からない

「え?……当たり前だろ?……ん?どう言う意味??」

混乱する


「……ちっ……英語なのか……」

残念そうにする山本


「……弄りがいがありませんね……山本さん」

こちらも残念そう



「……あいつ……あれ、ネイティブな感じなのか?それとも日本人特有の変な癖のあるやつか?」

それでも食い下がる山本


「……ネイティブに近いな。言ったろ?アリアかと思ったって。声と言うより歌い方が凄く近かった。まぁファンでもないからそんな詳しくないけどな。聴いた感じはそう思ったよ。

って……さっきからなんなんだ?お前ら」


「はあああああ。……やっぱそうか。くそ、面白くねぇ」

チッと舌打ちしてハイボールを飲んだ


「そうかー。英語っぽいなーとは思ってはいたんですよね。……澪桜先輩ある意味すごい」

ぐびぐびとジンライム……3杯目。

ツマミ代わりに縁に付いている塩を指で取って舐める。


「……おい、良かったな。お前……ネイティブだとよ。」

山本が澪桜に話しかけた

さっきまでニコニコとホイップを食べていた澪桜が

グルンと結城を見る

ハッと何かに気付いたように


「……え?……待って。結城さんの会社って……そういえば……」


「……外資系。忘れたのか?」

ニヤニヤしながら山本が澪桜に言う

どんどん青ざめていく彼女を見て

結城はオロオロし始める


「えっと……安達さん??」

プルプル震えながら小さな声で聞いた


「……もしかして……英語って……話せたりする?」

「?……はい。一応人並みには……」


結城の肩にもたれ掛かり煽るように山本は言い返す


「嘘つけお前。子供の頃から親と話す時は英語のみだったって言ってたろ?」

「それは!子供の頃だけだよ!しかも年に数ヶ月だろ!?

親ほとんど日本に居ねえし!今は日本語でしか話さねぇよ!」

ウザイ山本を振り払った


「でも仕事じゃオンライン会議、海外支部と結構話してるんじゃねぇの?書類も大半英字なんだろ?」


「それがどうしたんだよ!さっきから意味わかんねーぞお前!!」

つい口調が荒くなり山本に喰ってかかる。

よく分からないけど澪桜をいじめるから


更に小さくなる澪桜

それを見てアタフタする

「あだ……安達さん??」


全然状況が読めない結城に

山本は答え合わせをし始める

ニヤニヤと。

「ブッ……安達、英語わかんないんだよ。耳コピして歌ってんの。」

「先輩、アイハブアペン止まりですよ英語分かるの。」

ぶふーーーっと吹き出す

そして2人揃って言う

「「まあ俺(私)もだがな!(ですけどね)」」


「……え?嘘だろ……?」


耳を疑った

あれが……耳コピ?発音も抑揚も完璧だったのに?

英語が……分からない?


「いや、マジだよマジ!

で、こいつめっちゃ英語歌うし上手いから、これ本当に英語になってんのかなーって前から気になってたんだよ。そしたら丁度良くお前いるじゃん!だ、か、ら、呼んだの!……まぁ結局英語だったみたいでおもろくねぇけどなぁ〜」


「私も英語じゃない方に掛けてたんですけどねぇ〜澪桜先輩の耳コピ凄すぎる」


2人の様子を見るに多分本当の事なのだろう。

だが未だに信じられない。

そんな馬鹿な。

そう思う反面……ホッと胸を撫で下ろす自分がいた。

澪桜に忘れられない人がいなくて良かったと。

チラッと彼女を見ると顔を真っ赤にして凹んでいる

まるで小動物みたいだな

ああ……本当に可愛い。


得体のしれない嫉妬の反動か、愛しさが溢れかえる結城は

俯いたままの澪桜の耳元に顔を少しだけ寄せた


「……本当に上手でしたよ?今まで聴いたことないくらいに。俺本気で聴き入ってしまったよ?」

愛を囁くように深い微笑みで言葉を紡ぐ


プルプルしながら顔を覆い澪桜は言う

「……うぅ。英語ペラペラの君からお墨付き貰えてよ……良かったよ…………でも恥ずかし過ぎて二度と結城さんの前では英語は歌えない……あぁ、私今とても……ダニになりたい」


「ダニ!?どういう事!?」

思わずつっこんだ

そんな返しが欲しかった訳じゃないのに。

というか何でダニ?



「……大丈夫、マダニじゃないよ。イエダニだよ。」

(……いや、ものすごくどっちでもいい)

心の中で盛大に突っ込んだ


澪桜の様子に腹を抱えて笑う山本と松本

ちなみに松井ただいま4杯目。








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