46話 PM6:30
「澪桜せーんぱいっ!一緒に下に行きましょう!」
腕にくっつく松井
フワッと女の子らしいフローラル系の優しい香りがした
「……うん。一緒に降りよう」
すごく可愛いなぁ、羨ましい。
……と思いながらされるがままに歩く
「……今日の私!どうですか!?可愛いですか!?」
軽やかに離れクルッと回ってみせる松井
薄ピンク色の花柄があしらわれた白いワンピースにアイボリー色のショートジャケット。
童顔で愛らしい松井にピッタリだ。
「うん。めっちゃ可愛い。あれ?今日平日なのに合コン??」
するとギラリと豹のような鋭い目つきになり松井は言う
「そうです!!!今日はなんと……外科医です!!!」
「げっ……外科医!?平日なのに大丈夫なの!?」
「……はい。なんか大きい病院の人で今日は非番とか何とか……よく分かりませんけど」
とても曖昧な情報。
どこからそんな繋がりを毎回毎回見つけてくるのだろう。
感心する澪桜
「へえええええ。凄いね相変わらず。どうやって知り合うのか私には意味不です」
そう言いながらエレベーターのボタンを押す
「友達の旦那さんの友達?が呼吸器内科のお医者さんらしくて、そこの総合病院の。
だから今年入った新入社員紹介したいみたいな。
しばらく……医者と合コン続きそうです……ふふふふふ」
不敵に笑う
狙っている!確実にこの子狙ってる!!
でも新入社員?医者なのに?
……まぁ細かい事は気にすまい。
「……健闘祈る。」
澪桜は親指を立てた
「はい!!!玉の輿!狙います!!!」
松井も親指を立てた
チーン
エレベーターのドアが開く
「……澪桜先輩はあれからどうなんですか??」
「ん?どうとは?」
「……結城さん。あの壮絶なイケメン。」
「……壮絶。人に使う言葉じゃない。ぶふっ」
笑いながらも確かにと思う澪桜
「いや、笑い事じゃないですよ!!!で!?あの人外とはどうなったんですか!?」
結城、酷い言われよう。
でも多分褒められてる。それがツボにハマった
「じっ……人外!?ぶっははははははははは!!確かに!!!」
腹を抱えて笑う
「だーかーらー!!!答えてくださいよぉぉぉ!!」
澪桜を激しく揺する
ガクンガクンしながら澪桜は答えた
「えー……あー……親友になった」
止まる松井
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
ものすごい驚いている。
進むべき方向性が変だから当たり前。
「友達から親友になった。私、とても気が合うんだよ結城さんと」
「いやいやいやいやいやいやいやいや!!!おかしいおかしい!!!それおかしいから!!!」
「いやぁ、彼はいい人だよー。人外だけど!あはははははははははは!!!じっ……人外!後で結城さんに教えよう」
涙を流しながら笑う澪桜
松井はアタフタとして口止めする。
「だっダメですよ!!あたしが言ったとか絶対言わないでくださいよ!?……ん?後で?ん?」
エレベーターが1階に着く
「はあー。面白っ」
「おもしろじゃないですよ!結城さんと親友って意味が分かりませんから!……で、あの人って笑ったりするんですか!?爆笑とかするんですか!?」
余りの衝撃に松井、質問の方向性がズレる
「するよー。ぎゃははははは!とか腹抱えて笑ったりするよ〜。あと虫を見たらぎゃあああああ!って裏声で悲鳴上げるよ。なんか抜けてるしね!あの人。ぶふふふ!」
結城の残念な場面の数々を思い出し笑いする澪桜
想像出来なさすぎて松井は頭を抱えた
「待って!イメージできない!無理!!!結城さんてそんな感じだった!?」
そして二人でエントランスを出た
柔らかな夕暮れの中、とてもスタイルの良い男性が立っていた
「お疲れ様です。安達さん」
優しく甘いテノールが響く。
儚く微笑む結城
「!?!?!?!?」
思わず2度見する松井
澪桜は慣れた感じで手を振る
「お疲れ様ー!結城さん!」
「……松井さんも、お疲れ様です」
松井に気付いた結城は少しだけ目線を移して薄らと微笑みながら挨拶した
「おっ……お疲れ様です。」
しかし近寄ってきた澪桜にすぐ視線を落とし
優しく包み込むような笑みに変える。
丁寧なのは変わりないが、まるで違う雰囲気。
あからさまとはこの事だ。
「安達さん。さあ行きましょうか。買い物とかは今日無かったですか?足元気を付けて。」
そう言いながら、さりげなくエスコートし、助手席に澪桜を誘導する。
松井はシラフで結城と会うのは初めて。
正直あまり覚えていなかった。
なんか凄いの来たとしか。
こんなに落ち着いた雰囲気の色気を纏う男だとは思ってなかった。しかも澪桜先輩にだけ……甘い。
(……改めて見たけど……結城さんて……思ってた以上に壮絶な破壊力。)
ぼーっと2人を見つめる
「ありがとう!いつも悪いねぇ。
んー。今日は無いかな。……あ!沙耶香ちゃん!また明日ね!」
慣れた感じで会話をしながら
乗り込む前に松井に手を振り挨拶をした
その言葉に結城も振り返る。
「……では。松井さん、失礼します」
松井に向かって微笑み優雅に頭を下げる
とても大人な対応だがどこか線を引くような結城の視線
颯爽と車に乗り込む様子を見て
いちいち絵になるから癪に障るわこの人
と松井は思う。
助手席側の澪桜はニコニコと手を振っている。
「はい……どうも。」
独り言のように動き出す車に向かってポツリと呟いた
親友……?どこが!!
小さくなっていく車に手を振りながら心の中でツッコんだ。
「……な?凄いだろアイツら」
気付くと隣に山本が立っていた
「っ!!!あれ!!!どうゆう事ですか!?」
ガバッと見上げる松井
ヒールを履いても160ほどしかない小柄な彼女。
「……知らねぇよ。なんかあれらしいぞ。毎日弁当箱作ってやって、夜飯も一緒に食べて、土曜日はデートしてるらしいぞ」
「はああああ!?それもう付き合ってるどころの騒ぎじゃないじゃないですかっ!!半同棲ですよそれ!!」
意味がわからなさすぎて捲し立てる
「俺に言うなよ……あいつらアレで友達だと思ってんだからよ。」
「……信じられない。意味わかんない。……でも確かに澪桜先輩親友だって言ってました。」
「クックックッ……親友ねぇ。……アホだなあいつら」
「いや!なんでああなるんですか!?澪桜先輩は……人を好きになったことないから例外として……結城さん!なんでさっさと告らないんですか!?初日からアレだったじゃないですか!!!完全に!!!
今日なんか凄かったですよ!?好きがダダ漏れ!!!見てるこっちが恥ずかしいくらいに!!!なにあれ!!!溺愛!?甘すぎて歯が溶けるわ!!しかも私に対する温度差すごい!!!!あからさますぎるわ!!!」
肩を揺らし
息切れするほど突っ込む。
「……まぁ、そう言ってやるなよ松井。
童貞と処女じゃあなぁ。……仕方ねぇよ」
遠い目をして山本は言う
それを聞いて唖然とした
「……え……?…………は?」
「……あ、言ってなかったか?アイツ、彼女いない歴年齢だぞ。」
「はああああああああああああああああああ!?!?!?何その少女漫画みたいな設定!!!!!!!!」
信じられないと大声で叫ぶ
「設定言うな!可哀想だろ!!お前!絶対に言うなよ!?がっははははは」
爆笑する山本
一応念の為口止めする。
「いやいやいや!!おかしい!おかしい以外ない!!!……あの外見ですよ!?……あんな落ち着き倒した雰囲気……なのに……はぁ!?
……言いませんよ!言えるわけないじゃないですか!?」
がーーーーん!!!とショックを受ける
自分の常識が覆された
「だから最初に言ったろ?人嫌いだって。
……要は女嫌いだったんだよ。だから一度も彼女もいない。
そんなあいつが3年前安達に一目惚れして、そんで俺に紹介しろってずっと言ってたんだよ。ま〜、しつこかったぞアイツ」
あはは。と笑いながら何でもないように言う山本
「うっ……羨ましすぎる……URだ!!!
初めての恋で一目惚れ。しかもエリートと来たもんだ。どんだけ課金して回せば手に入るんだそれ!」
ガチャのように比喩した
「な?スゲーだろおれの友達。」
胸を張って自信満々に言う
「……こないだからなんで山本さんがドヤるんですか?
あああああああ!あたしもあんな優良物件捕まえたい!!
……ってこんなことしてる暇無いんだった!!
今日!外科医と合コンなんですよ!!
……じゃあ!あたし絶対今日こそ玉の輿すんで!!」
一瞬で気持ちを切り返え、機敏に挨拶をする
ビクッとして山本が返した
「お……おう!……頑張れ!」
「はい!!!必ず落とします!!!」
肉食女子ここに極まれりである。
走り去る松井を見送り……色々と呆れた山本が呟いた
「…………なんかタバコ吸いてぇ。」




