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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第1章

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44/100

44話 親友……?

43話の結城視点……いや、心情です。



静まり返る車内

車に乗ってから彼女はずっと上の空

いや、何か思考を続けている時の顔。

実際数えられる程度しか会ったことは無い。

だけど俺はずっと、彼女の事を目に焼き付けてきた。毎分……毎秒。


だから分かる。

君の……揺れが。


心配になって名前を呼んだ

「安達さん?」


彼女はびっくりして俺の顔と空気を読んだ。

そして必死に取り繕う。


───何か隠してる。

すぐ分かるよ……君は嘘がつける人じゃない。

まっすぐで純粋で誠実な人。

俺が一番よく知ってるんだ。


俺じゃ頼りない?

俺は他人だから話す価値なんてない?

そう思えば思うほど……苦しくなった。


「……嘘つくの下手ですよね。安達さんって。」


少し不機嫌な口調で思わず言ってしまった。

自分でも驚く程感情がコントロールできない。

普段はこんな事絶対にないのに。


その間も彼女はワタワタと思考しているようだった。

俺に話そうか話すまいか悩んでいるのだろう。

何も役に立てないのがとても辛い。


「……俺には話したくない?」


つい……口から零れる。

自分の不甲斐なさ。

包容力の無さを八つ当たりしてしまった。



彼女は一生懸命言い訳をする。

そんな事ないよと。誰にも話す気がなかっただけだと。情けない話?

それなら余計に俺には話してくれたらいいのに。



なんで?

俺は……友達なんじゃないの?

信用してくれてないの?

俺にとってこんなに特別なのに……君からしたら

山本や松井さんと同じ位置でしかないの?

思わずため息をつく。


「信用してくれてる?」


抑えていたはずの嫉妬が……大きくなる。

不安と焦りから本音がこぼれ落ちた。


「じゃあ俺って……安達さんの何?」


はっ……と口に出したあとすぐ後悔した。

何を言ってるんだ俺は

そんなこと聞いて……安達さんからなんとも思ってないとか言われたら……どうする気なんだ。

もし俺が気がある事に気付かれて距離を置かれたら!?


言った言葉はもう取り返せない。

どうしよう

どうしようと顔面蒼白になる


すると彼女はしどろもどろになりがら言葉を探し始めた


いいよもう。

頼むから何も言わないで。

友達って言われても変化なしかと思って悲しいし

知り合いとか言われたら立ち直れない。

何でもないなんて言われた日には俺は死ぬかもしれない。


半ばパニックになっていると

彼女は口を開いた。


"親友"

そう言った。


俺は目を見開く。

親友。


彼女は言う勝手に昇格させたと。


それは彼女の中で俺の位置が特別なものになったということ。

友達の枠からは出られない……でも。


彼女の中でなくてはならない存在になれたのかもしれない。


この先ずっと共に生きていける。

その未来が現実味を帯びてきている気がして

死ぬほど嬉しかった。


自然と綻ぶ口元。

噛み締めるように呟いた。

「……親友か。」


あまりの嬉しさに澪桜の方を向いて笑った。

先程の言葉は本当か

試したくなる。

少しだけ……わがままを言ってみた。


「じゃあ、その親友に話してよ。俺聞くくらいしか出来ないけど、君の気持ちに寄り添いたい。」


彼女は心を開いてくれるだろうか……

すると彼女は

社会人として情けない話だと遠慮気味に言う。

管理職の俺には聞かせられないような話だと。


そんなの俺には関係ない。

君に幻滅なんて……するわけが無い。

君が話す事全てが俺にとっての全て。

どんな内容だって構わない。


「いいよ。どんな情けない話でもいい。話して?俺は君に幻滅なんかしないから……絶対に。話せばきっと楽になる。」


引かれたら困るから……本音は隠して優しさだけ滲ませる。


それでも彼女は情けない情けないと自分を傷付ける。

俺はそれが苦しくて言い返してしまう。


「その情けない話が聞きたいんだよ……俺は」


すると彼女はゆっくりと

話し始めた。

職場の話。

トラブルに見舞われたと


だがしばらくして

言葉が止まる。


彼女の様子を見ると

少し……強ばっていた。


「……うん。続けて?大丈夫、俺しか聞いてない」


全て吐き出してほしい。

君の弱い部分を見せて欲しい。

そう思ってしまう自分がいた。


無理やり話させる様なことはしたくない。

だけど

話して貰えないのは

信頼されてないようで辛い。

矛盾だらけの気持ちの中


澪桜は黙り込んでしまった。

追い詰めてしまったかもしれないと……後悔した。


「安達さん……ごめんね。もし嫌だったらもう無理に話さなくてもいいよ。強引に聞きすぎてしまったね。」


すると彼女はまた幻滅されたくないと呟く。

俺が君に幻滅なんてすると思うの?

……そんなに俺を失うのが怖い?

……少し優越感に浸ってしまった。


「さっきも言ったでしょ?幻滅なんかする訳ない。だって俺は親友だよ?嫌な話はさ、全部吐き出して半分俺に背負わせてよ。

二人で分けたら……きっと楽になるから」


思わず……甘い言葉を囁く唇

だけどもう……止められない。


"親友"として

お願いだよ俺を頼って……?

支えになりたいんだ。

君の心を支えたい。

辛い気持ちも楽しい気持ちも分け合おう。

君の後悔も不安も傷も何もかも

俺が背負うよ。

君を一人になんて絶対しない。



澪桜を見ると

少し唇が震えていた。


そんなに傷付くなにかがあったのかと

話を聞くと


腸が煮えくり返った。

なんでそんな酷い事が言えるんだ!!!!

社会人にもなってそんな底辺の人間がするようなことを平気で安達さんにするなんて


到底許せない。

佐野の比じゃないと思った。


口を荒らげると澪桜が怖がったらいけないので

怒りを押し殺し

慰めに徹した。

本当はハンドルをぶん殴りたい気分だった。


「……安達さんは何も悪くないよ、それ。転属?高卒?そんなの能力があれば関係ない。確かに社会では通用しない事もある。でも叩き上げられてる時点で結果は出てる。

学歴気にするだけで、まともに仕事も出来ないやつがなんで……安達さんを? ……そんなの馬鹿げてる。」



そんな俺の様子を察した彼女は優しくいつもの調子で話を逸らそうとした。

なんで君は……自分より俺を優先するんだよ

傷付いたのは君じゃないか。


先程聞いた言葉が頭から離れない。

イライラが収まる気がしない。

全然冷静になれない。


「……なんで愛人とか……ヤリ〇ンとか安達さんが言われなきゃいけないんだ!!!!

事実でも何でもない事を……人の集まる休憩室で!?

どんな神経してんだよそいつ!!!辞めるべきはその女なのに!!!っ……絶対に……許せない。」


そんな事されたら……安達さんの居場所が無くなってしまう。

中田ってやつ……なんて卑劣な……

俺はお前を……絶対に忘れないからな。


握る手に力が入りすぎて

爪が食い込む。


すると彼女は冷静に俺を諭し始めた

山本にフォローされたから大丈夫。この事は他言するなと。


それに……俺がいれば大丈夫だと。

俺が君の心の支えになっていれば問題ない。

そんなふうに言ってくれた。


怒りが消えた訳じゃない。

でも彼女がそう言うなら……

そう納得すると

さっきまでのイライラが嘘のように溶けていく。

彼女の言葉一つで俺の心はコントロールされてしまう。


それが何故か心地よくて

少しだけ甘えるように呟いた


「……分かった……煮込みハンバーグ。俺成形くらいならできるよ。野菜も洗うしお米も研ぐよ。早く帰って二人で食べよ?」


彼女を見ると俺に微笑みかけてれていた。

優しくて儚い俺の大好きな……笑顔。


血流が一気に早くなる。

熱くなる。


俺の体は……心はもう

永遠に君のもの。

それ以外は考えられない。



ああ。……これがそうなんだ。

ドラマでよく聞くあの台詞。

俺には無縁だと思ってたのに……


分かってしまった……

知りたくなかった……

気付きたくなかった──────


安達さん……ごめん。

親友って言ってくれたばかりなのに


俺は

君を

──────愛してる。


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