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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉


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4話 憧れの人

スマホが鳴る。

一瞬視線を向けたがあまり気にも止めない。

わしゃわしゃと風呂上がりの髪の毛をテレビを見ながらタオルで拭いていた。

ふと目線をやるとディスプレイに山本拓海の文字が。


(こんな時間になんだ?……また会社の愚痴か?)


めんどくさー。と思いながらスピーカーにして話す。


「何?」

素っ気ない態度

いつもの事だ


『もしもし?おー。周か?今大丈夫か?例のあの件、OKもらったぞ。』


……!?

例の件

……例の件!?!?

え!?うそ!?


だらぁぁぁっとソファで寛いでいた体制からガバッと起き上がりその場に何故か直立する。

そしてテレビを消した


「え!?ホントに!?」

嬉しさで顔が綻んでしまう。

念願の彼女に……とうとう会える!!


『うん、今隣にいる。』


「……やっとチャンスが来たんだ……あぁ神様……」

感慨深げにスマホを胸に当て天を仰ぐ。

長かったこの3年間……あの日の彼女が脳裏に浮かぶ。


『ああ。そんで今から来れるか?』


呆れたような気怠い返事


「!?……行く!!!行くに決まってる!!!絶対行く!!5分で行く!!!」


食い気味で結城は言った。まるで遊園地に行くのを我慢できない小学生みたいに。


『……分かった分かった。じゃあ地図送るわ。』

子供を窘めるような山本の声はそこで途切れた。


…………


一瞬呆然とする。


これは現実か……幻か……

やばい!!

嬉しすぎる!!


顔がゆるんで止まらない。


バチン!

自分の頬を叩く。


でも直ぐにまた緩む。


そんな自分とガラス越しに目が合った


「……きもっ!」

さすがに今の俺、ドン引きだわ。

28歳の大の大人が……最悪だ。

天を仰いで手で顔を覆う。

でもにやけは収まらない。


憧れの人に会うというだけで……こんなにも知能の低い生き物になるのかと自分で自分が許せなくなった

だけど……3年間も待っていたせいで

どうも感情を制御できない。


そして時間が惜しい。


……早速準備をしよう。

焦るな!!!まずは第一印象が肝心だ!!!


……爽やかで、スマートな感じで……それでいてさりげなく。


急いでクローゼットの前に立つ


「時間が無い!!急げ!!」

几帳面に並ぶ洋服に手をかける


いや、厳密には時間はあるのだが

結城が勝手に焦ってるだけ。


あれでもないこれでもないと服をまさぐりまくる結城


「これは……カッチリしすぎ、これは……色が微妙!これは……ゆるすぎる」


そしてチョイスしたのは白のモダールと綿混のカットソー、その上から鮮やかなネイビーのカーデ寄りノーカラージャケット、そしてパンツはダークグレーのジョガーパンツ。

足元はローカットスニーカー。



……服装はこれで大丈夫だろうか……。

私服で会うのは初めてなので

無難で清潔感重視にして纏めた。


急いで髪の毛を乾かし、歯を磨く。

顔のチェック。

満遍なく顔を見回し、変なとこは無いことを確認。


軽くヘアトリートメントとワックスを馴染ませ緩めにセットする。

あくまでさり気なく登場できるように。


そしてベッドサイドの小さめなキャビネットから香水を取り出し、足首に少しだけ付ける。チェリーとスモークの香り。

普段は付けない香水。個人的にいい香りだと気に入って買ったもの。

いつか彼女に会う時に好印象を残したくて……。


気に入ってくれるだろうか……。


「……この香り嫌いじゃないといいけど……」

やることなすことなんだかダメな気がして仕方ない。


不安と緊張で胸が苦しい。

それと同時にこれまで感じたことも無い程の高揚感で満たされていた。


急いで家を出て駐車場に向かい出庫する。


車に乗りこみエンジンをかけ

フロントミラーを整えて深呼吸した。

先程より緊張が増していってる気がした。

(とりあえず落ち着け……俺。)


静かに走り出す車。

テンパる結城を乗せて

2度目の出会いとなる憧れの人の元へと向かう。

多分現実的に5分は無理。笑

でも気持ちは5分。そんな余裕の無い男。

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