27話 男子会
今回少し長めです。
あれから時は過ぎ
5月3日
夜8時半過ぎ
耳を劈く電子音
タバコのむせ返るような香り
轟音のようなコインの換算する音。
アナウンスが響く
《28番台様確変入りました!おめでとうございます》
それが聞こえる度にイラつきが増す
最後の18枚……
撫でるようにレバーを倒し流れる動きでボタンを押す
みるみるうちに溶けていく。
「……ちっ」
煙草を咥えたまま
財布を開く……
後5000円しかない。
「くそっ!5万も溶かしちまったじゃねぇか。7万回転もしてたから当たると思ったのに」
ブツブツと言いながら台を片付ける
外に出るとフワッと優しい風が顔に当たる。
少し耳鳴りがした。
ずっとパチンコ屋に居たせいだ。
スマホを見ると……夜の8時
もうこんな時間だったのか……
腹も減ったし、酒も飲みたい。
でもあと5千円じゃ心許ない。
金を下ろすとまたパチンコに入りそうだし。
「あいつんち行くか……」
ボソッと呟く。
おもむろに電話をかけた。
『……何。』
気だるそうな低く冷たい声
「お前相変わらず感じ悪ぃな!」
ため息をつきながら電話の向こうの相手に悪態を付いた。
『どうせまたパチンコ負けたから奢れとか
酒飲んでるからお前も来いとか
そんなしょーもねぇ電話だろ?』
的確に痛いところを付いてくる
当たってるのがムカつく
「……分かってんなら飯奢れや。俺の酒、お前ん家まだあるだろ?」
そう言って山本は髪をかきあげる
ワイルドな浅黒い横顔。
ウェーブがかった黒髪がより男っぽさを上げる。
『無理。お前臭いから』
ど直球の暴言。
さすがの山本も心がささくれる
「周!お前言っていい事と悪いことあるだろ!?傷付いたぞ!!俺が!!」
『……よかったじゃねぇか。じゃあな』
ずっと辛辣
「いや、待て待て待て!
あれからどうなんだよ??安達と!
な?飯食わせてくれたらいくらでも聞いてやるよ?
あいつの好みもある程度なら提供できるし」
いい条件だろ?と食い下がる
だって揶揄ったら面白そうだから。
『……本当だろうな?』
怪訝そうに聞く結城
「当たり前だろ!?俺今日5万もスったんだよ!な?酒飲ませてくれよォ」
ダメ男の鏡すぎる山本。
『…パチンコ帰りのお前マジで臭いから1回帰って風呂入ってから来るならいいけど。』
仕方ないなとため息混じりに言う結城
「やった!じゃあツマミと炭酸水持って行くわ!サンキュなー!」
コロッと態度を変え山本は調子よく言った
『お前ちゃんと風呂入っ───』
何か言っていたが気にせず電話を切る。
ここから結城の家は10分ほど歩けば着く。
だが少し時間を潰してから行こう。
帰るのめんどくせぇし。
とりまコンビニに寄りツマミと炭酸水と、結城用のトニックウォーターを買う。
煙草をふかしながらオンラインゲームを始めた。
1時間後
結城がテレビを見ながらコーヒーを飲み寛いでいた。
するとインターホンのモニターが点灯し誰かが来たと知らせる
画面には山本がいた。
「……早いな」
そう独り言を言って応答もせず自動ドアだけ開ける
するとしばらくしてからチャイムが鳴った。
だるそうにドアを開ける結城
「ちょっと来るの早くな───
うわっ……くっさァァァ!!!!おまっ風呂は!?」
「面倒くさくてそのまま来ちゃった♥」
てへぺろっとする山本を見て一発ぶん殴りたくなる
「来ちゃったじゃねぇだろ!?信じられねぇ!!くっせ!!!お前部屋上がんな!こっち来い!」
そう言って無理やり風呂に連れていく
「きゃー!やめて!乱暴しないでぇ♥」
「うるせぇ!!ぶっ〇すぞ!?脱げぇェオルァァァ!!!」
「いやぁ!周のエッチィィィ」
「黙れ!このカスが!!!!」
結城とは思えないドスの効いた暴言が風呂場から聞こえる
それを面白がる山本の裏声がまたイラつく。
服を剥がし急いで洗濯機の中に放り込む。
「部屋が臭い!!最悪だ!!」
そう言って換気システムを強にする
ファブリーズも。
風呂の方を見ると
鼻歌を歌いながら山本が体を洗っている
イラつく。
……あいつ、またどうせ確信犯だな。
そう思いながら前に泊まりに来た時に山本がまとめ買いしていた下着を袋のまま結城の部屋着と共に出してやる。多分泊まる気だろうから。
そう。山本はこんな感じでいつも結城の家に押し掛けていた。
「ここ置いとくぞ。着替えとタオル……ったく」
「おー!サンキュ!」
悪びれもしない山本。
いつもの事だから結城ももう気にしない。
リビングに戻りソファでまた澪桜とLINUをする。
コーヒーを飲みながら。
いつもの内容なのだが最近少し近づいた気がして
くすぐったい。
LINUも敬語じゃなくなっていた。
うつ伏せになり足をバタバタさせながら画面に釘付けになる。
「……お前乙女か。キモっ」
風呂から出てきた山本に見られてしまった
ガバッと起き上がる結城
「……っはっ……早くねぇ!?洗ったか!?ちゃんと!?」
取り繕うように念を押して聞く
「お前本当に失礼だな。洗ったに決まってるだろ!?
てか、風呂にそんな時間かけるかよ、女じゃあるまいし」
そう言って前に持ってきてたビールを冷蔵庫から取り出し立ったまま一気飲みする。
「いや、にしても早すぎだろ。うわ汚っ」
嫌そうな顔をした
「だから!お前のそれ傷つくって言ってんだろ!?
やめろ!白い目で見んな!!
この潔癖症男が!!安達に嫌われるぞ!?安達だって汚ぇかもしれねぇのに」
澪桜、とばっちり。
「なんでそこに安達さんが出てくんだよ!?存在自体が汚ぇお前と一緒にすんじゃねぇよ!安達さんに汚い所なんてある訳ねぇだろ!?」
とても酷い差別
「んだとぉ!?あいつも俺も一緒だよ!」
「違う!!全然違う!!!お前と一緒にすんなハゲ!!」
「禿げてねぇよ!!!!」
……子供の喧嘩にしか思えない。
内容もすごく馬鹿らしい。
いちいちムキになる結城が面白くて笑いながら
置いていたウイスキーを持ってくる。
そして結城のトニックウォーターと炭酸水を冷蔵庫から出し
話し始めた
「……で?最近どうなんだよ?あれは聞いたか?寄生虫の話」
やっぱり知っていたのか。
だからあんなフラグ立てたんだな
イラつく結城
「聞いたよ。……いろんな種類。」
はあああああ。とため息をつく
「ぶはっ!!色んな種類いるの!?しらねぇ……それは知らねぇあははははは!!」
「お陰様で詳しくなったよ……アニサキス、赤痢アメーバ、ハリガネムシにトキソプラズマ、イラガセイボウ。広東住血線虫、あと今日は芽殖孤虫……あれはやばかった。」
「……お前すげえな。寄生虫博士じゃん。なんでそんな覚えてんの。」
「いやいや!!安達さん話上手すぎじゃない!?なんであんな無駄に起承転結付けるの!?面白くて聞いちゃうんだよ……嫌なのに覚えちゃうんだよ!!!嫌なのにぃぃぃ!!」
結城の頭の中の澪桜がクルクルと回る。それはもう楽しそうに
「……そうなんだよ。あいつ何なんだろうな。飲み会だぜ?
飲み会で……刺身の前でアニサキスの話すんなよ。
ナメクジの話すんなよ。
……目の前の肉見ながらさ……面白く話すからまた聞いちゃうんだよ。あれ何でだろうな」
悲しきかな、2人は被害者友の会
本気で嫌がれば空気を察知して止めてくれただろうに。
人は矛盾した生き物。
気持ち悪い話ほど何故か興味本位で聞いてしまう。
「進展はあったのかよ」
山本が確信をついて聞いた
ぱぁぁぁと一気に表情が明るくなる結城
「うん!!!聞いてくれよ!29日に公園でデートしたんだよ!!それでさ!次の休みも誘ったらOKしてくれて!!
なんと今日!!!おにぎらずとかサンドイッチ作って来てくれた……あれめっちゃ美味かった。びっくりした。安達さん料理上手にもほどがあるよ」
「おまっ……え!?今日会ってたのかよ!?しかも2回目!?……やるじゃん。へぇ……あいつがねぇ」
そう言って感心する。
結城が人をデートに誘うなんて初めて聞いたから。
それに安達。あいつが乗り気でデートなんてな。
にしても大の大人が公園デートて。
「私服も見れたし……すっぴんも見れた。
めっちゃ可愛かったんだよ……俺ずっとドキドキしちゃってさ」
「す……すっぴん!?え!?あいつどんななの!?顔違うの!?」
興味津々!山本の悪い癖。デリカシー無し
「それは言わない。だって俺だけの特権だもん。」
ふふっと不敵に笑う
なんかムカつくなこいつ。まだ彼氏でもねぇくせに!山本は思った
ウイスキーを炭酸で割りながら言う
「へいへい。そりゃよかったな。楽しそうでなによりだよ」
幸せそうに回想する結城
「安達さんの手作り……また食べたいなぁ。
可愛かったなぁ」
ほわほわとした表情をする。
山本が一度も見たことない。恋する少年のような顔
「お前……ガチであれが好きなんだな。今更だけど」
呆れたように笑う
「そうだよ!悪いのかよっ」
そう言って頬を赤くした
「いや、あれ程の女嫌いだったお前がねぇ……と思っただけ。
まぁあいつはそんじょそこらの女とは全く違うけどな。種類が。異質というかな。」
「……することなすこと可愛いんだよなぁ。安達さんって。3年待った甲斐があったよ……紹介してくれた事マジで感謝してる。」
「おう!もっと感謝しろ!崇め奉らえ!」
そう言って胸を張る
「っ……奉らうか!!調子にのんな!」
ギャーギャーと男二人のむさ苦しい夜が過ぎていった。




