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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第2章
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116話 佐々木の過信と恋心




周と澪桜が付き合い始めてから2週間が経った頃

6月上旬の金曜日


クレストリンク社内


いつも通り本社からのメールをチェックし、時折スマホと企画書を手に取って確認作業を行っていた。

そこに新入社員の佐々木が近付く


「結城マネージャー、人事部の藤堂マネージャーがお呼びです」


軽く顔を上げ、佐々木の手の方向に視線を向ける


藤堂マネージャーというゴリゴリのイカつい人物が、手を振っていた


パソコンのタブを閉じ


佐々木に向き直る

午後の光に照らされて柔らかな髪が揺れた


「……ありがとうございます。佐々木さん」


優しく微笑んで席を立った


「っ!いえ!!」


顔を赤くする佐々木

カチコチになりながらデスクに戻る


(最近私……どうしちゃったんだろう!?……マネージャーの顔に……後光がさして見える)


ドッドッドッと16ビートを奏でる心臓を抑え

呼吸を整えた


……結城マネージャーってどんな人なんだろう。


オフィスを出た先のフロアがガラス越しに見える。

そこで藤堂と話をしている周に視線を送りながらため息をついた。



お昼頃になるといつも居なくなるし、連絡先知ってる人も皆無。飲み会に誘っても来ないって聞いた。


というかうちの部署には親睦を深めるような行事はないらしい。

マネージャーが就任して早々に、そういうのは行きたい人で個々に楽しんでくださいって通達があったらしい。


その時、彼を狙っていた人は肩を落としたって聞いた。


そして就任前から結城マネージャーと面識のある人達は口々に

「あの人は鬼だ。仏の顔をした般若」

とか


「冷酷無慈悲すぎて泣ける」

とか


「実はAIなんじゃない?」

とまで言う人もいた


あんな優しく微笑んでくれるし、紳士で丁寧で優しいのに……皆、目が節穴なんじゃない?マネージャー可哀想。

佐々木は仕事をしながら思った。


(……仲良くなりたいなぁ。連絡先、私に教えてくれないかな)



ふとデスクの片隅に置かれた小さな鏡に視線を向けた


幅の広い綺麗な二重。大きな瞳。ぷっくりとした涙袋。庇護欲を掻き立てるタレ目。ちっちゃな鼻にぽってりと分厚い桜色の唇。


私なら……彼に似合う。

クスッと鏡に向かい微笑んだ


チラッと入口を見ると周が戻って来る。


(……やっぱりカッコイイ。背があるのに顔が小さくて……歩き方も自信に満ち溢れていて。)


佐々木は周と手を繋いで歩き、まわりからの羨望を一身に浴びる自分を想像して、愉悦に浸った───



その日の夜、佐々木宅



ぼーーーーーっとテレビを見ながら

女の子らしい部屋の中で、佐々木はクッションを抱え、ため息をつく


「はぁ……今日もマネージャーかっこよかったな」


結城マネージャーが入る前からあの部署で働いている、ベテランの先輩達は皆、口を揃えてやめておけと私に忠告してきた。

あのマネージャーにだけは手を出すなと。

その理由も聞いたけど……私は納得できなかった。

告白されてきた人数も聞いたけど……結局告白した女性がどの程度のレベルだったのかも知らない。

ただその人が分をわきまえてなかっただけじゃないの?

マネージャーだって好みがあるだろうし……タイプじゃない女に言い寄られたって普通に靡くわけないじゃない。


佐々木はそう思った。

じゃないと理屈が通らない。


あんな素敵で若くて地位の高い人なんて、そうそういない。

私ならきっと……。


私は若いし大学生の頃からまぁまぁモテてきた方。

自分で言うのもなんだけど、女子力だってそこそこ高いと思う。

顔もスタイルも良い方だし、男性が喜びそうな会話だって……得意な方。


甘えるのも得意。

男を沼らせるなんて簡単だもの。


そう思いながら姿見の鏡に映る自分と目が合う

サラッと艶めいた髪を肩にかける

美しさを確認するように微笑んだ。


佐々木は男からすれば、所有欲を掻き立てられるような……見た目は姫系で小柄な女子。

明るいピンクブラウンの髪を綺麗に巻いている。


今までだって何人もの男たちが言い寄ってきた。

だから、マネージャーも機会さえあれば落とせる自信はある。

それなのに、可能性を口に出しただけで鼻で笑われた。


あの日の先輩の言葉が耳に残る

「あれは(結城)皆の観賞用だからね。触れるなキケン」


勝手に決めないで欲しい。

そんなに彼が、誰かのものになるのが怖いの?

……くだらない。学生じゃあるまいに。


今日、また憐れむように言われた。

気のせいだよ。

マネージャーが佐々木さんに気がある訳ない。

本気にならない方がいい、絶対傷付くから。


なにそれ!初めからフラれる前提で言わないでよ!

失礼すぎない!?

私がブサイクの勘違い女だとでも言いたいの!?

あなた達にそんな事言われる筋合いないんですけど!?おばさんの癖にムカつく!!


プライドをズタズタに傷付けられ、思い返したせいで腹が立ってきた。

クッションをボフボフと殴る


「……ありがとうございます。佐々木さん」


今日、彼に名前を呼ばれた。

優しい目線。

周の甘く低い声が木霊する。


「……っ!!!好きすぎて辛い……」

チャンスがあったら告白したいけど……。

接点がほぼほぼ無い。

どうしたらいいのか分からない。

なんでマネージャーってあんなにミステリアスなんだろう。

いつ来ていつ帰ってるのかすら本当に分からない。

こんなに気を付けて彼の動きを目で追ってるのに……


「佐々木さん───」

妖艶な笑み……

微かに漂う甘い大人な香り……

「きゃぁぁぁぁぁ/////////」

思い出しただけで撃沈した。


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