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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第2章
114/118

113話 頭突きとエセ騎士の指輪

今回長くてごめんなさい!

どうかお付き合い頂けたらありがたいです。





「周さんの長い指に似合うね。腕時計以外にアクセサリー付けてるの初めて見たけどカッコイイね」


頬を赤らめて周が返す


「っ……澪桜さんのが似合ってるってば。……この指輪に決定でいい?」


「うん。この指輪がいい。」


試着したまま愛でている2人

メビウスリングに決まった事を確認し、女性は説明を始めた


「お選び頂いたこちらのマリッジリングなのですが、エンゲージのセットはあるものの、残念ながらサンプルはございません。

このメビウスリングに合わせて樹がインスピレーションで仕立てる物となり、毎回微妙にデザインが変わる為です。……エンゲージの方、いかが致しましょうか?」


「なるほど、世界に1点のみのオートクチュールになる……そういう認識でよろしいですか?」


「左様でございます。」


「重ね付けは可能なんですよね?」


「勿論重ね付け可能でございます。メールでご連絡頂いた通り、エンゲージのペアリングの方も樹に確認済です。」


「では……見せて頂けますか?」


「かしこまりました。」


一度深くお辞儀をした後、女性が部屋を出ていく

澪桜は軽く会釈した後彼女の後ろ姿を見送った

だけどなんの事かよく分からない


「ん?……何??」


「……ダイヤモンド。見せてくれるって。」


ドキッ!!!!

心臓が跳ね上がる

ついに……この時が来た


一生見る事も叶わないと思っていた石

それが今からここに……


強くカットソーを掴む

ポンと頭に手を乗せ優しく微笑んだ


「緊張しなくて大丈夫、ただの石だよ。」


「たっ……ただの石じゃないよ!!何言ってんの!」


「地球上で偶然出来た、ただの綺麗な石。そう思って好きなの選んで?君に選ばれた石はきっと本望だから」


「そんな訳ないよ!私なんて───」


澪桜の唇に指を当てて言葉を遮った

今ここで、ここだけは自分を下げる言葉は言って欲しくない。

俺にとって最上位で唯一無二の君には相応しくない言葉だから。


「こんなに石を理解して、敬って、愛してくれる人は君しかいない。……他の考えは知らないよ?ただ俺は心からそう信じてる」


真剣に伝える

もう、怯えないで。

金額なんか考えないで自由に選んで欲しい。


「……ごめん。私、ブルーダイヤモンド見たい癖にずっと後ろ向きだったね。そうだね、周さんだって軽い買い物じゃない。覚悟して来てくれてるのにね。」


「そうだよ。本当は膝ガクガクだよ。」


「え?……本当に?」


そっと膝に手を乗せた……確かに小刻みに震えてる。

……スンとした顔とはギャップがすごくて笑いが込み上げてきた


「ぶっ……あははははは!ホントだカクカクだ!!」


「笑うなよ!当たり前だろ!!指輪なんか買うの初めてなんだもん!!こんな応接室に通されるなんて思ってなかった!」


「あははははははは!かっ……かっこ悪ぅ」


周の優しさで緊張が解けてきた

やっぱりずっと一緒にいるならこの人がいい。

そんな風に思う。


コンコン

ドアがノックされ、ピシッと姿勢を正す2人。


女性が白い手袋を付け、ルースの入った黒いケースを持ってきた。

思わずゴクッと喉を鳴らす


「お待たせ致しました。当店で確保しているブルーダイヤモンドのルースでございます。ご確認ください」


そっと手袋を渡され装着する。

そして無垢のローテーブルに置かれた小さなケースに目を落とした。


「き……綺麗。……こんな綺麗なんだ」


澪桜が目を奪われる。

周はその初めて見る様子に頬を緩ませた


(本当に憧れてたんだ。……連れて来れて良かった。)


「……本当に綺麗だ」


澪桜に向けて囁く

周と目が合った瞬間、泣きそうな顔をする

感動しているのだろう。


そっと頷いて髪を小さな耳にかけた。


「非加熱のルース全てとなります。どうぞ手に取って近くからご覧ください。」


女性に視線を向け、頷いた後もう一度ルースに向き直り


震える手でルースに触れる。

淡いブルー、輝きが凄くて白っぽい物、パライバを思わせる明るい青の物、そして───


ゆっくり手に取る

グリーン混じりの深い青。そばかすのようにインクルージョン(内包物)がチラチラと見える

カットと透明度は素晴らしく、眩い輝きを放つ碧い石。


女性は納得するように微笑み、澪桜に話しかけた


「……その石は、インクルージョンが見え隠れする品ですが、青さと輝きは特級で私共の提供出来るブルーダイヤモンドの中でもトップクラスのルースでございます。

インクルージョンが多めなのであまり好まれない石ではありますが───」


「こんなに可愛い石なのに。そばかすがあるだけで嫌煙されるなんて。色味も本当に綺麗です」


女性の説明の途中、独り言のように呟いた澪桜に

一瞬言葉を飲み込み

優しい声で女性が返した


「はい、私も心からそう思います。」


同じ事を思っていたのか心から笑っているように見えた



「……澪桜さん、その子が気に入った?」


周がそっと澪桜の持つルースに目を向ける


「うん、こんな素敵な碧が自然に発生するなんて奇跡だよね」


「浅瀬の海の色みたい。吸い込まれそうな綺麗さだね」


一度目を閉じ深呼吸した後

澪桜は意を決して周に聞いた


「……周さん、この子に決めていいかな?」


フッと深く微笑みゆっくり頷いた


「……いいよ。」


そう言った後、女性にルースを手渡す


「……あ。」


澪桜の声に振り向く周


「どうしたの?」


「これ……見て。」


周に手渡す小さなケース。その中にとても小さなルース。よく見ると……先程の石とほぼ同じ色味だった。ただ輝きが桁違いのとても美しい石。


「そちらは、同じロッドで入手した物です。ペアにされるとの事でしたのでお持ちしておりました。」


「じゃあ俺はこれにしようかな。……お願いします」


「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」


後ろに控えていた別の店員がルース2つを受け取り静かに出て行った


「それと、例の件は大丈夫でしたか?」


「はい。ご試着もご準備させて頂いております。ちょうど樹のデザインの新作がございますのでお試しになられませんか?」


「はい、是非」


するとテーブルの下に置いてあったケースを出してきた


「今人気のファッションリングでございます。……樹の手がけた物はコチラです。」


質感のざらっとした、プラチナの指輪。独特のデザインだ


「うわぁ……ザラザラしてますね。」


「ね……ねぇ、周さん、例の件って何?」


試着しながら周がウインクをした


「エンゲージ達が出来るまでのつ☆な☆ぎ☆……いるでしょ?澪桜さんも付けてみなよー♥」


「ホントだぁ!スターダストみたいで可愛い。……じゃないんだよ!指輪ばっかりいらん!!!」


「じゃあこれにしようね♥……これもお願いします」


「聞いてない!この人聞いてないよっ!!」


「……かしこまりました。サイズは先程お調べした15号と7号で宜しいでしょうか?」


マリッジの際に調べて貰った号数。女性に確認され周は機嫌よく頷く



一通りのやり取りが終わったあと、女性が周に最後の提案する


「それではお支払いのご相談をさせていただきます。

当店では無金利のローンが36回までご選択頂けるのですが」


「ローンは結構です。」


そう言ってカードを差し出す

女性は一瞬だけ目を細め


その後もう一度確認する


「かしこまりました。お支払い回数は───」


「一括で。」


「……少々お待ちくださいませ」


静かに部屋から出て行った女性

それを確認した後澪桜が物凄い勢いで周に言う


「さささささささささささささささっきのカード!!!!戦車買えるやつ!!!!!!!」


「うん、戦車は買いません。なぜなら僕は戦車の運転が出来ないからです!それに車道をキャタピラで走行したら……ぶっ……お巡りさんに怒られちゃうよ!あはははははは!」


「違うわ!そこを広げたくて言ったんや無いわ!笑いすぎやろっ!!」


「あはは、方言可愛い♥」


「あんなカード初めて見た。しれっと出すなしれっと。」


ノックの後女性が戻ってきた


「結城様、こちらの方にサインを」


サラサラと慣れた手つきでサインする周に見蕩れる


(カッコイイ。……意外に大人だ……)


サインなんて書留が届いた時くらしいかしない。

クレジットは持ってるけど、ICチップ翳すだけだから。


会計が終わったあと女性が領収書とファッションリングを手渡し

あ、予約票を忘れました!と言って慌てて戻って行った


「さあ、終わった。予約票受け取ったら帰ろうか……ほら指貸して?」


受け取った小さな紙袋から白いジュエリーケースを取り出す


「ん?」


その場に跪いた周

さながら何処かの国の騎士のような滑らかな動きで

そっと澪桜の左手薬指に指輪を嵌めた


先程ついでと言いながら買った星屑を散りばめたようなあの指輪だった。


「 Will you marry me?」


「んなっ////////」


「あ、しまった流石に意味分かっちゃったか?」


「当たり前だろ!?だからそれがプロポーズなんだよ!!!そしてなんかムカつくからオシャレな顔して英語で言うな!!!」


不覚にも物凄くときめいてしまった自分が恥ずかしくなり

思わずつっこんだ。

だが真っ赤になった顔を隠す術が無い


それを見てヘラヘラ笑いながら立ち上がる周

照れ隠しだと完全にバレてるのが余計に腹立つ。


「違うよこれはただの練習であって……痛っ!!」


「鉄槌じゃあ!!」


エセ騎士に盛大な頭突きをかましてやった。



……なんか今回のタイトル、どこぞの映画のタイトルみたいになっちゃった。笑

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― 新着の感想 ―
(某魔法学校のサブタイトルかな?) 金額じゃなくて、非日常的な特別な空間に緊張してる周さん。 完璧じゃないのが尚更良い男すぎます。 あと澪桜さん。頭突きはワイルドで良いですね(褒めてます)
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