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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第2章
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108話 心臓鷲掴み



ゴクッ

周の喉仏が動く


『もしもし?澪桜ね?』


少し澪桜に似た明るい声が車内に響いた


「うん。おはよう、朝からどした?」


平常運転の澪桜さん。

うん、俺もそのテンションになりたい。

……絶対無理だけどね


『こないだ言いよったクーラーボックスと竿なんやけどさ、ごめんね〜バタバタしとってからまだ送れてないで。土日着がいいんやったっけ?あ、それとうまかラーメンがいいかねぇ?もっと本格的な豚骨がいいやか?結城さんの好みもあるやろうけん』


早速俺の名前が出て焦る

でも覚えていて頂けてて凄い嬉しい。


「土日着がいい。そうやねぇ〜久しぶりうまかラーメン食べたいけど……本格的なくっさいのも食べたいなぁ〜」


『あんた好きやもんねぇ、お父さんにそっくり。結城さんは?どんなんがいいやか?あっさり系の豚骨のが好みやか?』


「……だって?どう思う?ど豚骨食べてみる??くっさいの!」


澪桜さーーーーん!!!話の振り方が雑!!!

このタイミングで変わる気!?



『え?今一緒におると!?きゃーーーーー!変わって変わって!!直接聞くけん♥』



「だって!ほい☆」



手渡されるスマホ。

また例の変なウインクしてるし。

ほいじゃないんだよ。澪桜さん

分かってる!?俺たち昨日から恋人なんだよ!?

恋人の親御さんとの初電話なんだよ!?


俺、口から心臓でそうなんですけど!


震える声で挨拶を始める


「ご……ご無沙汰しております。お変わり御座いませんでしょうか?」


どう話を切り出す!?

えっと……えっと……


助けを求めようと澪桜さんに目を向けてみた。……下手くそなてへぺろをしている、全然出来てないしねそれ。

……なんかすげー可愛くてムカつく。

うん。頼れない事だけはわかったよ。


『ご丁寧にありがとう、うちは相変わらずよ。澪桜も結城さんも変わりなさそうでなによりやわ。それでね、ラーメンの話なんやけど』



「は……はい。スピーカーだったのでお話は伺っておりました。すみません」


『あ、そうなんや!なら話しは早いね!どんなんがいい!?迷ってからね〜』


「ぼ……僕は九州の味ならどんなものでも……嬉しいです。」


『いやーん♥可愛い!!じゃあお母さんのオススメ、色々送るわ〜』


「あ……ありがとうござ───」


俺がスマホにお礼を言いかけるタイミングでフワッとシャンプーの香りがして固まってしまう

(いっ……いい匂い!?)

澪桜さんがシートベルトを外し身を乗り出して俺の手元のスマホに近づく


(近い!近いから!!)

澪桜さんの無意識な色気に当てられる。


「いやいや、お母さんは私のお母さんであって周さんのお母さんやないやろ!?何言いよると!?前から言いよるやん!他人にお母さん言うなって!」


『あはは〜言いよった?結城さんにお母さんっち!?』


「言いよった言いよった。」


いや、めっちゃどうでもいい話。

やめて?そんなどうでもいい話で俺を翻弄しないで2人とも

やっぱ親子なんだなと変に感心した

そして澪桜さんの方言、やっぱり可愛い。


『ん?……てかあんた、周さんっち……』


「ああ、それね。実は友達の頃から私の初恋の人でね。告白して昨日からお付き合いさせて貰っとるんよ。やけん今は初彼氏!あはははははは!」


おいーーーーーーーー!!!!

俺に言わせろーーーーーー!!!!


ガクッと項垂れる

ここだけは後手に回りたくなかったのに!!

またやられた。


『きゃーーーーー!?あんた……え!?そうなん!?うわーやっぱそうやったん!?お母さん前に電話した時からそうなんやないやかなって思いよったんよ!わー!!!そうなんや〜!!おめでとう澪桜』


嬉しそうな澪桜さんのお母さんの声が響く。

照れたように微笑んで返事をした後俺の方を向いた


「えへへっありがとうお母さん。」


ドキッ

目が合う度に好かれている事実にまだ慣れない俺は動揺してしまう。



『結城さん、澪桜はアホの子やけど仲良くしてやってね。』


「アホの子て。言い方!」


「こ……こちらこそ!というか僕の方からお伝えしなくてはならなかったのに……申し訳御座いません。澪桜さんの事は絶対に大切に致します。」


九州の早い方言の応酬に必死で割り込んで挨拶をする

我ながら本当にかっこ悪い。

もっとちゃんと言いたかったのに。

すると澪桜さんはウンウンと頷きながら言った


「周さんはAIより優しいけん、お母さん安心して」


AIて!!

表現の仕方おかしくない!?

嬉しいような嬉しくないような。俺ずっと人外なんですけど。


『あははは。仲良しでなによりやわ。あんた大切にされとるねぇ、付き合う前からずっと。』


「そうなんよ。私……すごく幸せ」


そう言うと俺の目を見て優しく微笑む

綺麗で……思わずキスをしそうになってしまい

視線を外した


「ぼ……僕も幸せです。」


消え入るような声で呟く


『結城さん、これからも宜しくね。今度ウチに遊びにおいで、澪桜と二人で。』


「ありがとうございます!……その時は必ず、正式にご挨拶させていただきます」


『そんな畏まらんでいいよ!旅行がてら遊びに来たらいいけん。……結城さんが来てくれるの楽しみに待っとくけね。』


「はい。近いうちに……是非。」


"必ず娘さんを僕にくださいとご挨拶に伺います。"

そう含みを込めて伝えた

澪桜さんは相変わらずニコニコしている。

きっと俺とお母さんの会話の意味分かってないんだろう。


『今デート中なんやろ?ごめんね、知らんくて朝から電話してから』


「あ、いえ───」


「そうなんよ!今から鎌倉行くんちゃ!二人でランチすると〜」


『初デートが鎌倉ね?いいや〜ん!楽しんでおいで。2人とも道中気を付けてね!』


「あっあの!お土産お送り致しますので!!」


『そんなん気にせんでいいよ〜。結城さん、本当に律儀で素敵な人やわ〜♥澪桜には勿体ない』


「ふふふ。そうやろ?私には勿体ない人なのだよ」


いや、澪桜さんそこは誇らしげにしたらダメなとこ。

思わずつっこんでしまう。


その後も3人で少し会話をして電話を切った


「さて!行きますか〜!お母さん、周さんのことめっちゃお気に入りやね。」


「……だといいけど。というか澪桜さん、あーゆー場合はもう少し俺の事助けてよ」


ちょっとだけ拗ねて言う

だって丸投げなんだもん。

澪桜さんのご実家に行ってからもこれじゃ、たまったもんじゃない。

完全アウェーな状態で囲まれたら俺、パニックだよ。


「ごめんごめん。なんというか見てて微笑ましいもんだから。……自分の好きな人と親が仲良く話してるのって、なんか幸せでさ。」


困ったように微笑む澪桜さんが愛しくて

血流が一気に上がる


「っ……そんな風に言われたら……俺」


「ん?どうした?」


「…………ずるい。鷲掴まれた」


「何を?」


澪桜は首を傾げた


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