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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第2章
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105話 石言葉



二人でピザの空き箱を片付ける

ちゃぶ台を拭く澪桜の手に視線が向かう

長くて白い華奢な指先

周の頭を色んな妄想が巡る。


袋に箱を詰める手が止まった


……澪桜さん、今日少し戸惑っていたね。やっぱり俺浮かれすぎか……付き合えたからって一気に畳み掛けるのは良くないよな。

がっついて嫌われるのも怖い。

自重しろとさっき言われたばかりだ、調整しないと。


今日の出来事を全て振り返り後悔してしまう。

大切だからこそ、距離をおいた。

そのせいで傷付け泣かせてしまった。

付き合えたからといって調子に乗って重いこと言いすぎた

冗談まじりにプロポーズまでしてしまった。

……独占欲と嫉妬まで見せてしまった。


人はどんな風に付き合い始めるんだろう。

どんな風に深めていくの?

嫉妬って男がするとかっこ悪い?


「……周さん?」


ハッとして澪桜に視線を向けた

そして首を軽く振り微笑む


「何でもないよ。少し考え事。」


時計に目を向けるともう23時前だった。

まったりしているとあっという間に時間が過ぎる


君との時間はあまりにも短く感じるよ

仕事の時はあんなに長いのに。

ずっと君の隣で過ごせたらどれだけ幸せか。


澪桜がコーヒーを入れてくれていた。


「ほい。周さんの好きなモカだよ!」


これを飲んだら……帰らないといけない。

いつものルーティン。

寂しい。帰りたくない


「……ありがとう」


もう一度澪桜の指に視線をやる

ふと、前彼女が言っていた事を思い出した。


「ねえ、澪桜さん。確か宝石……詳しかったよね?」


パァァァァ!と一気に花開く澪桜の笑顔


「どうしたんだい!?急に!!!」


「いや、どんな宝石好きなのかなって。コレクションとかあるの?」


リサーチしたい。

本心を隠しながら聞く

どんなアクセサリーのデザインが好きなのか。


コソッとスマホをちゃぶ台の下に忍ばせ指輪の制作期間を調べる


「ふっふっふっ……よくぞ聞いてくれた!!よし!見せてあげよう!私のコレクション!!」


嬉しそうに押し入れに向かい木の箱を取り出して

大切そうに抱えて持ってきた


「さあご覧あれ!私のコレクション達を!」


パカッと開ける。

どんなアクセサリーが入っているのか食い気味に箱の中を見た。

…………アクセサリーではない。

小さな箱がズラっと綺麗に重ねて入っている

白い透明なケース。その中をよく見ると小さな石がある。

……ん?


「え?……これがコレクション??」


自信満々に澪桜が言った

「そう!!私のルース達!!ルーペあるからガン見してあげて♥」


思ってたのとちがう!!!

周は心の中で叫んだ

一応聞いてみる


「……アクセサリーは?……指輪とか、付けないの?」


キョトンとした後澪桜は笑いながら言った


「あははは!アクセサリーが見たかったのかい??石だけかと思った!……アクセサリーはあんまり付けないんだよ。だってオシャレしてどこかに行くなんて縁がないし。ワニのピンキーリングならあるよ!あとイモリのリングと……アマガエルの……」


「……わかったから!てかどこで買うのそんなの!!」


「ワニの腕時計もあるよ♥ネットで買うんだよ♥見るかい?」


「いいよ!!要らないよ!……それよりこのケース、触っていいの?」


「いいよいいよ!持ってみて!これがお気に入りだよ!面白い石だから見てみて?」


渡された石は深緑色の石。キラキラとしたブリリアントカット。だが物凄く小さい。


そこにライトを持って傍に寄る澪桜

びっくりしてしまう。

「っ!?……な……何?」


「見てて?」

そう言ってライトを付けた。

すると深緑の石が明るめのボルドーに変化する


「え!?すご!!なにこれ!?」

「綺麗でしょう?アレキサンドライトっていうんだよ。私の好きな石」


幸せそうに眺める澪桜の横顔。

周は意識してしまって動けない


そんな事はお構いなしに色んな石を見せて楽しそうに説明を始めた

少しずつ緊張が解れ石の魅力を語る澪桜の言葉に惹かれていった


「……へえ。そんなに種類あるんだね。オパールって」


「そうなんだよぉ!わたしはウォーターオパールが1番好きだけどね。この位のサイズはね、500円で買えるんだよ!催事フェアとかでね!」


「案外安いんだね」


「クラック(欠け)とかインクルージョン(内包物)とか私は気にしないからね☆」


ニコニコしながら揺れる澪桜

そろそろいいかと周は確信に迫る


「……君の憧れの石って……ある?」


「私の……憧れ?」


ごめんね、澪桜さん。

こんな回りくどいことして。


「あるよ。……憧れの石」


「それってどんな石?」


澪桜は自分のネックレスを触って言った


「……この子の親戚かな。」


「……ダイヤモンド?」


「そう。でもそれはただのダイヤモンドではない。ダイヤの中の10万粒に1粒と言われるほどの希少石。その名もブルーダイヤモンド。」


「ブルーダイヤモンド!?え?ダイヤモンドって無色じゃないの?」


「違うんだな〜色んな色があるんだよ。しかも原色に近いほど希少価値が高い。もちろんこの子はキラキラしてて大好きだけどね。」


周が贈ったネックレスを大切そうに触れる仕草が可愛くて微笑んだ


「そう言って貰えて嬉しいよ。……ブルーダイヤモンドか。そっか。」


澪桜は首を傾げた。

「ところでなんでこんな事聞くの?というか宝石なんて興味無いでしょうに。」


確信をつかれて周は意を決したような表情で話し始める


「……その……もし俺がさ、会社で”君の男だ”って意思表示したら……迷惑?重いかな?」


「……え?」


「さっきのプロポーズの話。冗談めかして言ったけど、本気だったら……やっぱり……迷惑かな?」


「それって……どういう意味?」


「指輪……買わない?明後日……俺と一緒に」


「ゆ……指輪!?」


「そう。婚約指輪と、結婚指輪、そしてそれが出来上がるまでの恋人の証の指輪。……ダメかな」


「恋人の指輪は分かるけどなんでそんな!?」



「エンゲージとマリッジって出来上がるまでに時間が結構かかるみたいなんだよ。だから、早めに頼んでおきたくて。……勿論強制じゃないよ?もし君が嫌なら作らないし、途中でキャンセルしてもいい。」


どこまでも優しい目線が澪桜を包む

白くて大きい手が濡鴉色の髪を耳に掛けながら微笑んだ


「そんな言い方……ずるいよ。断れるわけないじゃないか……」


嬉しくて、少し切なくて俯いた


「良かった。でも本当にもし嫌だったり、デザイン好きなものがなかったら言って?その時はまた別の機会にしよう。……こないだのお店予約してていいかな?」


「予約?……いいけど。普通にお店に行けばいいんじゃないのかい?」


「作ってもらうからね。ちゃんと予約しないと。ちなみにエンゲージ、石の大きさの理想はどのくらい?」


「?……0.1~0.2くらいがいいな。小さい方が好きだよ」


「なるほどね。さり気ない方が好きなんだね。澪桜さんらしい。ちなみに男がつける場合、お揃いで石を入れるのって変かな?」


「……0.01ctとかがいいんじゃないかな?私はオシャレだと思うよ?周さん指綺麗だから映えると思う。個性的だしね。」


「そっか、0.01ctね。了解」


そう言ってスマホを素早く操作し始めた

あっという間に終わる


「これで良し。明後日、ネックレスを買ったあのお店にもう一度行ってみよう。あの店なら君の好きなデザイン、見つかるかもしれない」


「……まさか……さっき憧れの石を聞いたのって!?」


「……ご明察☆あの店には取り扱いあるらしい。少しだけっぽいけどね。」


綺麗にウインクで答えた

顔面蒼白で慌てて澪桜が首を振る



「っ!!!!一体いくらすると思ってるんだい!?だっ……ダメだよ!!!いらない!!!!ただ見てみたいって言っただけだ!!!!」


「……どうして?一生に1度のプレゼントなんだよ?」



「っ!!!!」


「ごめん。押し付けがましい?」


「そうじゃなくてっ……た……高いんだよ……!?」


「知ってる。相場見たからね」


「そんなの……貰えない。要らないよ、欲しくない。」


「価格じゃないんだ。君の憧れを形にしたい……ただそれだけなんだよ。それにね……ブルーダイヤモンドの石言葉知ってる?」


「……?いや……石言葉までは……」


「永遠の絆。永遠の幸せ。絆と愛の象徴。それを見て……俺も欲しくなったんだ。君との永遠を俺は信じたい。もちろんこれはまだプロポーズじゃないけど……その……ごめん。」


切なそうに周は呟く

押し付けがましいんじゃないか、澪桜がドン引してるんじゃないか不安で仕方ないそんな顔で



「永遠の絆……」


澪桜は呟いた

今日付き合い始めた彼氏が

今日私に仮のプロポーズをし

今日……婚約指輪を買おうとしてる。


普通におかしいのに、

未来なんて不確定な物。ずっとそう思って生きてきたのに


何故かそれはそれだけは未定ではなく確定事項な気がした。

この人とは一生離れない。

石言葉そのもののように。

絆は永遠に続いていく。そう思った。


「やっぱり……止める?」


申し訳なさそうに聞いた


「……私も君との永遠を信じたい。」


周の左手の薬指を摘み

澪桜は優しく微笑んだ



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