100話 愛してる
澪桜の手を握ったまま俯いて肩を揺らす結城を見て
泣きながら笑った。
「なんで……結城さんがまた泣くの?」
「だって……だって……
安達さんを泣かせてしまったから
俺が酷いことしたせいで……」
ゆっくり顔を上げ
ポロポロと結城は涙を流す。
澪桜は愛おしくて胸が軋んだ。
「違うよ、嬉しくて泣いたんだよ。私は傷付いてない、だから、泣かないで?それに、もう謝らないで?お互い様なんだから。」
そう言って安心させる。
澪桜の手は今もずっと、大きくて綺麗な手に包まれたまま。
その手を見つめ
「……これから先ずっと一緒にいられるんだね。」
ぽつりと、自分に言い聞かせるように呟いた。
幸せそうに、嬉しそうに。
結城は切なくて、未だに信じられなくて思わず呟いた
「……安達さん……本当に俺の事」
澪桜は笑顔で頷く
「うん、好き。」
結城は……更に聞く。
「……っ友達としてではなく?その……恋愛として?」
「そうだよ。」
震える唇で今まで言いたくて仕方なかった言葉を口にした
「……俺も……安達さんが好き」
「うん。」
「好き!!大好き!!!」
「うん。」
安達さんが肯定してくれる。
俺の気持ちを受け止めてくれる。
夢じゃない。
嬉しい……嬉しい。
結城の心の蓋が全て剥がれ落ちた
「っ……安達さん」
「……なんだい?」
いつもの優しく深い微笑みを浮かべて見つめる
澪桜の大好きな微笑み。
ずっと変わらない彼の笑顔
その表情のまま、今まで聞いた事もない低くてとても甘い声で囁いた
「死ぬほど……君を愛してる」
「っ……/////」
包み込んだ手に少しだけ力を込めて
気持ちが溢れ出したようにもう一度囁く
「……愛してる」
「わっ……わたっ私もっ……」
(あまっ……甘い!!!なにこれ!?)
結城との初めての甘い空気に、
澪桜は動揺しすぎて耐えられなくなり目線を外す。
一瞬で耳や首筋まで紅潮した。それでも手は離してもらえない。
優しく、そっと包み込まれたまま。
片時も離れたくない。
そんな結城の心が滲み出る
紅潮する彼女を眺めながら
言葉だけではなく仕草でも想われていると肌で感じていく
幸せが心を満たす
澪桜が可愛くて愛しくて仕方ない。
「どうしよう、嬉しい……愛してるって伝えられる日が来るなんて。一生伝えられないって覚悟してたから。……俺今幸せすぎて………ヤバい。」
ふにゃっとテーブルに溶けた。
見たこともない結城の無防備な姿。
澪桜の手を包み込んでいた大きな手が少しだけ緩む
そこから片手を抜き出した。
「……っお……大袈裟だなぁ。」
澪桜はそんな結城が愛しくてたまらず、そっと手を伸ばす
柔らかくしなやかな結城の髪に初めて触れた
隙間から覗く切長で艶めいた瞳が澪桜を射抜く。
ドキッ!!
心臓が跳ねる。
思わず目が泳いだ
(私は……何を)
「ねぇ、安達さん。」
溶けたまま甘く囁く結城。
視線をずっと澪桜に固定したまま
「なっ……何?」
しどろもどろになる
「……名前で呼んでいい?」
目を見開いた。
私と同じ気持ちだったのかと。
「……うん、いいよ。」
「……澪桜さん。」
呼ばれた瞬間……心が暖かくなる。
思わず微笑んだ
「はい。」
「……俺の名前も……呼んで?」
「……もう、呼んだよ」
「……え?」
「絵に向かってだけどね。フライングしちゃった。」
照れながら言った
「……それはちょっと妬けるな……あいつ俺より先に名前呼んでもらったんだ。」
「ごめんね。呼べないと思ってたから」
「……いいよ、俺の自業自得だから。
でももうこれからはアイツを名前で呼ばないで欲しいな。
それは俺だけの特権だから。……だからお願い、俺の名前呼んで?」
体を起こしながら強請る結城。
( 一度でいいから呼んでみたかった結城さんの名前。
君の目を見ながら呼べる日がくるなんて )
薄く唇を開き……囁く。
「……周さん。」
一瞬固まる結城。
次の瞬間、ブワッと毛を逆立て顔を真っ赤にする。
「っ……!!!!どうしよう嬉しい!!……俺今日……死んでもいい…………」
両手で頬を押さえ噛み締めた。
本気で言ってる結城の顔に澪桜も嬉しくなって返した
「あはは。これからいくらでも呼んであげるから死ななくていい。」
そう笑いながら
「……あ」
幸せの余韻そこそこに、何かを思い出した結城。
「?」
不思議そうに見つめる澪桜。
「もうひとつ、お願いがあるんだけど。」
「なんだい?言ってみて?」
「LINU、戻して貰えないかな。俺、澪桜さんのスマホに居ないの悲しいよ。」
「あ!ホントだ!!ごめんごめん。すぐ戻すよ」
急いで操作する澪桜を見つめた。
ワガママを言っても聞いてくれる。
それが嬉しくてたまらない。
「……ねぇ、俺って……今日から澪桜さんの彼氏?」
向かい合っていた結城はそっと澪桜の座る方に移動した
少しでも傍にいたくて。
もっと肌で感じたくて。
2人の距離は0cm。肩と肩が触れる
お互いが夢にまで見た……距離。
「……じゃあ私は……周さんの彼女だね」
そう言って結城の肩にもたれ掛かり、幸せそうに微笑んだ。
心地よいアンバーの香りに包まれながら。




