蟻のような誰にも悲しまれない人生は嫌だから
人生ポイント制。
狂った少年の話。
「また、か」
少年は呟く。
悲しそうな顔、しかし、どこか『これが当たり前か』と諦めているかのような。
「やった! 満点!」
その隣で少女は大声を発する。
彼は、ちらり、と『そちら』に目をやる。
「やったじゃん!」「またかよ」「本当にすげえな」
「えへへ」
近寄る友達、遠くから声をかける同級生。
『楽しそうだ』という顔で彼は見るが、すぐに見るのをやめ、教室から歩いて出ていく。
楽しそうな声がする教室。
それを廊下から聞きながら少年は、
「僕は、0ポイント。また、0点だったから。
あの子は、何ポイントかな。
中2の2学期の期末テストだからな、高得点かな」
ため息を吐き、
「このまま死んでも、僕は誰にも悲しまれない。蟻のような人生だ。むしろ、いない方がいいような。
ポイントを稼がないと、1ポイントは」
『人生ポイント制』
そんな、彼の考え。
きっかけは、彼の兄。
2つ上。高校には通っていない。
専業の、ライトノベル作家。
『兄は、産まれたときからイケメン、皆からチヤホヤされている』
それは、産まれる前に、かなりのポイントを稼いでいたから。
『兄は、小1から天才。そして、中学校を卒業するまで、余裕でずっと学年1位だった』
それは、学校の授業をしっかり受けていたから。授業で学力のポイントを稼いでいたから。
『兄は、本を読まず、簡単にプロのライトノベル作家になった』
それは、感動のポイントを稼いでいたから。プロのライトノベル作家に、簡単になれるほど、心のポイントを稼いでいた。
対して、
『弟の僕が、不細工で、勉強ができないで、文章がまるでダメなのは、ポイントを全く稼げていないから』
顔は、諦めている。
文章よりも、勉強。
勉強は、毎日する。平日は、家にいる間は、ずっと。休日は、1日中。点を取ったことは産まれてから1度もない。
できる兄、褒められる兄、人気者の兄。
そんな兄の近くにいた弟の彼は、自然とそう考えるようになっていた。
恨むでもなく、憧れるまでもなく、淡々と。
だからかもしれない、『気味が悪い』と思われ、周りから避けられているのは。
それも、ポイントが足りないからと思っているのだろう。
「つままれ、潰される、そんな蟻。
誰も、悲しまないんだ、死んでも」
呟く。
「兄さんが死んだら、皆が悲しむ。それくらいポイントは貯まっている。真逆だ、真逆」
『ポイントの結果発表は、その人が死んだ後、行われる』
誰が、どのように、どれくらい悲しむか。
いつか、誰かが、彼に『人生はそういうのじゃないよ』と言って、狂ってしまった心を治してくれるだろうか?
「さて。
僕は何ポイント稼いで死ねるかな?」
微笑んで、口にした。
ありがとうございました。




