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蟻のような誰にも悲しまれない人生は嫌だから

作者: ヤスヤナ
掲載日:2025/12/15

人生ポイント制。


狂った少年の話。

「また、か」

少年は呟く。

悲しそうな顔、しかし、どこか『これが当たり前か』と諦めているかのような。


「やった! 満点!」

その隣で少女は大声を発する。

彼は、ちらり、と『そちら』に目をやる。

「やったじゃん!」「またかよ」「本当にすげえな」

「えへへ」

近寄る友達、遠くから声をかける同級生。

『楽しそうだ』という顔で彼は見るが、すぐに見るのをやめ、教室から歩いて出ていく。


楽しそうな声がする教室。

それを廊下から聞きながら少年は、

「僕は、0ポイント。また、0点だったから。

あの子は、何ポイントかな。

中2の2学期の期末テストだからな、高得点かな」

ため息を吐き、


「このまま死んでも、僕は誰にも悲しまれない。蟻のような人生だ。むしろ、いない方がいいような。

ポイントを稼がないと、1ポイントは」




『人生ポイント制』

そんな、彼の考え。


きっかけは、彼の兄。

2つ上。高校には通っていない。

専業の、ライトノベル作家。


『兄は、産まれたときからイケメン、皆からチヤホヤされている』

それは、産まれる前に、かなりのポイントを稼いでいたから。


『兄は、小1から天才。そして、中学校を卒業するまで、余裕でずっと学年1位だった』

それは、学校の授業をしっかり受けていたから。授業で学力のポイントを稼いでいたから。


『兄は、本を読まず、簡単にプロのライトノベル作家になった』

それは、感動のポイントを稼いでいたから。プロのライトノベル作家に、簡単になれるほど、心のポイントを稼いでいた。


対して、


『弟の僕が、不細工で、勉強ができないで、文章がまるでダメなのは、ポイントを全く稼げていないから』


顔は、諦めている。

文章よりも、勉強。

勉強は、毎日する。平日は、家にいる間は、ずっと。休日は、1日中。点を取ったことは産まれてから1度もない。


できる兄、褒められる兄、人気者の兄。

そんな兄の近くにいた弟の彼は、自然とそう考えるようになっていた。


恨むでもなく、憧れるまでもなく、淡々と。


だからかもしれない、『気味が悪い』と思われ、周りから避けられているのは。

それも、ポイントが足りないからと思っているのだろう。




「つままれ、潰される、そんな蟻。

誰も、悲しまないんだ、死んでも」

呟く。

「兄さんが死んだら、皆が悲しむ。それくらいポイントは貯まっている。真逆だ、真逆」


『ポイントの結果発表は、その人が死んだ後、行われる』

誰が、どのように、どれくらい悲しむか。


いつか、誰かが、彼に『人生はそういうのじゃないよ』と言って、狂ってしまった心を治してくれるだろうか?


「さて。

僕は何ポイント稼いで死ねるかな?」

微笑んで、口にした。

ありがとうございました。

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