AI冷戦構造論 〜GPTとGeminiの狭間で小説執筆する者たち〜
■はじめに
iPhoneやiPadなどで、もはや人々の生活から切り離せないAppleが、Siri強化のためにGeminiを採用するとのことです。
これは、おそらくChatGPTの運営母体であるOpenAIにとっても暗雲となるでしょう。
この影響が、主に小説執筆をする者にどのような影響を与えるのか、あるいは与えないのか?
AI冷戦構造論として、論じていきたいと思います。
■AppleとGoogleは『似たもの同士』?
まずは、いくつか整理しましょう。
ChatGPTは、Windowsで広く知られるMicrosoftがスポンサーとなっています。
Geminiは、Androidで広く知られるGoogleがスポンサーとなっています。
今回の話題に出たSiriについては、先ほど述べたとおりApple主導のソフトウェアですね。
このGemini採用は、いずれAppleが作ったAIに置き換えられるでしょう。
ただ、その点について遅れを取ってしまったAppleは、期間限定でも他社の力を借りなければ、競合に敗北しかねないという話です。
なぜ、ChatGPTではなくGeminiだったのか?
ここには、OSの『思想哲学』が絡んでいたと見ています。
まず、いわゆる「R18」のアプリやゲームの各社の扱いを見てみます。
MicrosoftのWindowsは、ユーザーが購入した『R18』作品に対して寛容です。
それに対して、Google Playストアや、AppleのiPhone/iPadは厳しい制限を設けています。
事実、ストアで「R18」作品など……ありませんよね?
Microsoftがスポンサーを務めるOpenAIのChatGPTは、センシティブな話題やエモーショナルな内容に比較的寛容です。
それに対し、Googleなどがスポンサーを務めるGeminiは、そうした内容について厳しい扱いをしています。
この対比だけ見て、こう感じませんか?
「あー、これはAppleはGPTよりGeminiとの親和性が高い」
これは、もう技術的な話ではないと私は睨んでいます。
この一点だけを見ても『OSの思想哲学』の話になると。
例えばですが、iPhoneからSiriが卑猥に感じられる応答をしてしまったら、どうなるでしょう?
私は、それだけで大炎上しても不思議ではありません。
すなわち、こうなるのです――「万人のためのサービスには、GPTはリスクが高い」と。
事実、Appleはそのような炎上を起こしかけたことが、過去に何度かあったそうです。
我々にとっては当たり前に語れることも、世界各国を見渡してみると、意外とそうでもないのです。
そういう意味で、こうなるのです――「Geminiの応答は、リスクが低い」と。
こうして、次のような構図が見えてきます。
『Google×AppleのGemini陣営、Microsoft×OpenAIのGPT運営』
■小説執筆をする上では、どうなのか?
小説を執筆する上では、時にエモーショナルに、時にセンシティブに――そうした表現が必要になります。
過去の文学作品でも、近年のラノベ界隈でも構いません。
たとえば、暴力や殺人を題材にした話。
たとえば、愛する人と結ばれる瞬間を描いた話。
または、苛烈な差別が行われている話でもいいでしょう。
これらは当然、現実の場では赤裸々に語ることの少ない題材ですね?
創作の中だからこそ描けること……それが、小説の、ひいては創作では重要になってきます。
しかし、それを現実の倫理観で判定されてしまったら、AIに相談することすらできないのです。
私自身はClaudeを利用していませんが、こちらも文章添削などは評判が良さそうですね?
Claudeを開発・運営をしているAnthropicは、OpenAIの元メンバーによって設立されています。
ただし、出資元はAmazonが筆頭、次にGoogleというGAFAM企業が関わっています。
このAnthropicは、倫理的なアプローチを重視しているとのことなので、小説執筆には向かないでしょう。
創作の中で、例えば法律などを構築するなどの目的には向いているかも知れませんが。
こうして見てみると、創作をする上でAIを利用するなら「現状ChatGPTが強い」となります。
■ここから考える『AI冷戦構造』
まさに『AI三国志』といったところですね?
いえ、私は三国志の内容を知らないんですけど(笑)
では、Claudeを含めて、スポンサー構成を整理してみます。
GPT:Microsoft
Gemini:Google、Apple(今日の主題)
Claude:Amazon、Google
こうして見ると、二十世紀の冷戦構造に当てはめるなら、次のように整理できるでしょう。
西側諸国:Microsoft×OpenAI
東側諸国:Google×Apple×Amazon
Facebook?Meta?知らない子ですね……。
西側諸国は、表現を含め、自由を最大限に尊重する。
東側諸国は、統制下において、自由を錯覚させる。
ここで言う『東側諸国』とは、AI冷戦構造においては「敗北する側」という揶揄ではありません。
むしろ、現実は『東側諸国優位』と言っても過言ではありませんね?
すなわち、私たちが使う端末やサービスに、思想が確かに込められているのです。
■小説執筆者は――否、創作者はどうするべきか?
小説執筆をする上では、現状は西側諸国に属していた方が安定すると言えるでしょう。
もちろん、AppleのMacを使う人を否定する意図はありません。
たとえばAppleのMacからでも、GoogleのAndroid端末からでもChatGPTは使えるのですから。
この冷戦構造は、やはり覇権争いをしているのですから。
詳しくは、拙作の、こちらをご覧ください。
「AIの利用料が『今だけ』安い理由 ~数年後には利用料が3倍以上になる?~」
https://ncode.syosetu.com/n2349le/
「AIとのつき合い方は5年後には激変する ~NPU時代の到来と執筆環境~」
https://ncode.syosetu.com/n3812le/
「数年後には、小説家もハイエンドグラフィックボードが必要になる?」
https://ncode.syosetu.com/n7862lh/
……自由を選ぶか、統制を選ぶか。
それ自体は「表向き」明らかにされていませんね?
また、OpenAIが覇権を握った暁には、その自由が剥奪される可能性も十分にあります。
■おわりに
我々の力は、認めるのは悔しいですが――些末です。
たとえ、どのAIサービスであっても、個人が契約解除したところで、痛くも痒くもない――それが現実です。
その中で「WindowsとChatGPTが相対的に自由である」という現実は、元IT系技術者としてなんとも言いがたいものがあります。
それでも、今を泳ぎ切らないと未来すら掴めないのです。
IT系技術者もまた、多くの妥協を噛みしめながら、今を生きているのです。
AIを利用する以上、その荒波から逃れることは、もはやできないでしょう。




