番外編3 図書館の日常
平和ないつもと変わらない日だった。
黒ツグミが一羽ボロボロになって帰ってきた。
その黒ツグミが言うには黒服に野鳥では無い事がバレたそうだ。
仲間の二割は消されたけど、八割は四方八方に逃げ潜んでいる。
誰かは帰還しないと不味いので自分だけこっそりと帰ってきたとの報告だった。
そうか、大変な目にあったね。ご苦労さま。
とでも言うと思った?
優しげな笑顔のままオーナーは手に持っていたペーパーナイフで黒ツグミを貫いた。
グアッ! ナ、ナゼ……!?
何故? 当たり前だと思うんだけど?
オーナー、それじゃあその愚か者には伝わらないよー!
そう? 仕方ないな……黒猫くんがそう言うなら説明するけど
僕の作った可愛い可愛い黒ツグミは仲間を危険に晒すリスクを負うはず無いんだよ。
あの子達はそれなら君たちを全て巻き込んで自爆することを選ぶ、高潔な子なんだよ。
ク、クルッテル!
そうかなあ?
仲間が大事なだけだよ?
僕が居なくてもこの図書館は守れるけど、暫くは苦労するかもね。
でもさ、僕らは死なないんだよ。
消えないの。君たち人間が絶滅するか、人類全ての記憶を操作して消さない限り。
それなら死を厭うより、生きている君たちを消すよね?
それにあの子たちからの注意喚起は何日も前に来ていたんだ。
君たちがあの子たちを捕まえるのは不可能だろうね。
だから、こんなお粗末な式神を用意したんでしょ?
ざーんねん! ボクらのオーナーが対策を取らない訳無いじゃない?
黒ツグミは数を増やしつつ、新たな仲間がとっくに生まれているよ!
ふふ、黒猫くんの言う通り。
さてと、お喋りに付き合ってくれてありがとう。
君の魂は捕獲させてもらったよ。
君はどんなお話が好きかな? 楽しみだな〜。
ではではオーナー、本日のデッキセットはこんな所でいかがでしょう?
ふーん、うん。良いセレクションだね、黒猫くん。
じゃあ、あとは任せるね。
鳥籠に囚われた偽黒ツグミは黒猫が何処かへと連れて行った。
図書館はまた平穏な静寂が戻った。
けど、この日は来客が多い日だった。
図書館の監視範囲に仔猫が映った。
仔猫が扉を潜った瞬間
仔猫の足は全てペンで貫かれ、無数の紙で出来た鋭いナイフが警戒している。
すると、仔猫から低い、嗄れた声が聞こえてくる。
手荒い歓迎じゃのう。
ワシは呪術師じゃ。主に会いたい。
オーナーは囚われている仔猫を見ると、
あまり興味無さそうに話しながら応接室へと入って行った。
あの存在はその内そっと追い出されるだろう。
オーナーは呪いを作り出すのは好きだけど
同じものにはあまり興味がないんだ。
そして図書館にはまた新しい話がもたらされる。
オーナーは黒服たちとの追いかけっこもそこそこ楽しいようで、わざと居場所に繋がるヒントを与えることもある。
もちろん、辿り着かれる前に嫌がらせのメッセージを残して安全に去る。
だから図書館は本気で危機を覚えたことはまだない。
何故なら図書館さえも、既にひとつでは無いから。
オーナーはこの混沌とした話が常に生まれ続ける環境を愛している。
そして、生まれた話もまた可愛く思っている。
かつてオーナーは言った。
世界に一つだけのものなんて、リスクしかないから僕は欲しくないよ。
僕は自分の大切なものはね、常にバックアップを取って、リスクヘッジするべきだと思っているんだ。
葉を隠すなら森の中と言うだろう?
オリジナルに意味はそんなに無いけど
やっぱり君と黒猫くんは特別だからね。
君たちを失う愚は犯さないさ。
だから、ミラーリングはちゃんとタイムスケジュール通りにね。
相手も巧妙になって来てるから、僕は警戒を怠ることはしないよ。
でも、そんな中でも新しい話が生まれる瞬間は見逃せないね。
僕が夢中になってしまっている時は、君がちゃんと教えてね。
お客様が来てくれないと困っちゃうけど
いらない来客ばかりだったから今日はそろそろ店じまいとしようか。
黒猫くんと君のお勧めのお話をみんなで楽しもう。
夜明けの日が昇ろうとする頃、僕たちはまた眠りについて行く。
明日もきっと黒猫とオーナーが楽しそうにしているだろうと思うと
それだけで満たされる。
狭間に揺蕩う図書館には古今東西の話が集められているので
いつでもお客様をお待ちしています。
ただし、魅入られるかどうかは自己責任でお願いいたします。
おしまい。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
図書館はこれにて閉館になります。
また別のお話でお会いできますと幸いです。




