第98話 決意
僕はヒトとしての性質を持ったまま、ヒトである事を捨てる事を決めた。
ようやく、どうしたらそれが実現できるか見えたんだ。
僕にとって、ヒトとして存在できる意味は何よりも新たな物語を作り出せることだ。
僕は、黒猫くんたちの仲間をこれからも沢山作り出したい。
黒猫くんたち怪異……
彼等は時に隣人であり、悪鬼であり、幽霊であり、呪いであり、異質な異界の住人たちだけど 何故か古来よりヒトは彼らに魅了される。
そして、魅了されたヒトは信徒となり、彼等は益々力を付ける。
だからホラーは無くならないし、心霊現象の話しは無くならないし、都市伝説は生まれ続けている。
つまり、みんな結局のところ、欲しているんだよね
そして、それらに共通するものは、「話」が必ずある、ということ。
誰かの小さなきっかけが、話のタネとなり、噂となって広がり、そうして新たな都市伝説となって花開く。
それは、ヒトとヒトの間に潜むモノ。
それは、ヒトとヒトが交わる場所に密かに芽が出る時を待っている。
僕はその芽を、むしろ種をヒトの間にそっと蒔きたいと思っているんだ。
種から発芽する経緯で、僕の最初の想定と変わる事もあるかもしれない。
でも、それもまた愉しい。
だから、僕は新たな物語を紡ぐ。
◇◆◇◆◇◆◇
「ねえねえ、最近流行っている噂を知ってる?」
「えー? どの噂だろう?」
「最近SNSで流行ってる奴!」
「あーもしかして、とあるアカウントにDMすると自分の物語を作ってくれるってヤツ?」
「そう! それなんだけどさ、なんかポエミーなものから流行りの悪役令嬢仕立てからホラーまで書いてくれるんだって!」
「すごっ! 中の人、実は小説家とか?」
「さすがに分からないけど、出来が良いらしいよ?
しかもさー、そのアカウント見つけたかも!」
「マジ!? 試してみようよ!!」
教室の片隅で盛り上がる女子生徒たちに他の生徒たちも気になって思わず聞き耳を立てていた。
そんな無料で面白い話を書いてくれるなら少し気になる。
自分の物語はどんなものになるんだろうか?
SNSでの評判はそのまま現実にも反映されて
学校で、カフェで、ファーストフードで、ファミレスで、バーで、居酒屋で様々に話題が上がっている。
早速類似のサービスを始めた企業アカウントなども出てきた。
面白がってBOTやまとめで出ている。
そんな中、ひっそりと広がり通ある噂がひとつ。
「コレ見ろよ! とうとうオレの話を書いてもらったぜ!」
「おっ、もしかしてコレって例の?」
「へー! すげー申し込み多くてランダムで順次書いてくって話だよな?」
「……な、なあ、この内容ちょっと怖くね?」
「ははーん、ホラータイプはレアだな! いいじゃん、面白れぇじゃん!」
不安の声を上げた少年は心配そうに友人を見るが
話題はもう別へと変わっていた。
気にし過ぎだろうかと思い、忘れた頃、唐突に少年は友人を失った。
◇◆◇◆◇◆◇
ふふふ、オーナーがとうとう動き出したよ!
オーナーの物語はどうなっているんだろうね?
ボクも全部は知らされてないから
ドキドキしながら見守っているんだ!
さあ、今宵はこちらでお終い。
また次のお話しを楽しみにね!
読んでいただきありがとうございます!




