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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
五章 私が取り戻せたもの、取り戻せなかったもの

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17話

「……ところで」

 ノクト殿を見る。

 金の瞳は、相変わらず強い意志を秘めていた。

「満月の夜、というのは?」

 エルマが言っていた。本当なら、満月の夜まで会えなかったはずだと。

 満月の夜とは、何かの隠語なのか、それとも――。


「エルマ・アンバーが夢で現れたことがあったのです。夢見が悪かった、といったときがあったのを覚えておられますか?」

 そういえば、私を魔術師団の施設に案内してくれた時に、そのように聞いていた。


「……施設を案内してくれた日ですか?」

「はい。夢かとも思っていたのですが、それにしては妙に現実味があり……。夢か現か確かめたかったのです。そこで、エルマ・アンバーは満月の夜に僕を迎えにくると」


 ――満月の夜に、迎えに来る。

 エルマ以外にも複数の協力者や共謀者がいるとして。

 満月をわざわざ選ぶ理由。

 潜むには新月の方が良い気がするし……、おそらくそこに理由がある。


「わかりました。ところで、今回の件について、陛下にはどこまで報告を?」

「血液検査の件は陛下の依頼ですから、全て報告済みです。他も報告し……満月の件のみ確証が持てなかったので、まだですね」

「そうなのですね。では、満月の件も報告をお願いします」


 満月の夜までにエルマに全て吐き出させるか。

 それとも先に満月の夜が来るのか。


「ロイゼ団長?」

「……いえ。少し、風に当たってきます」





 ノクト殿に快く送り出され、お気に入りのベンチに座る。

 エルマと共謀者たちの考えや目的を考えてみよう。


 竜王国ソフームに女神が与えた加護の一つである『運命の番』。ーー前世で誓い合った恋人たち。

 そして、その中でも竜王陛下の運命の番は特別な意味を持つ。国の栄衰にかかわるのだ。

 そして、私が今代の陛下の運命の番だった。

 ここまでは、間違いない。


 そして、エルマは私の前世のことを知っていた。


 エルマ自身が前世の記憶を持っていて、過去の私の関係者だったーー、という可能性は?

 しかし、前世の記憶を持つということは、エルマにも運命の番がいるはずなのだ。そうでないと、女神は記憶を残さない。


 それに、誰にもこの役を譲りたくないと言っていた。

 つまり、エルマの代わりになり得る人は他にもいる。絶対にエルマでないといけない理由はなかった、ということではないだろうか。


 人の記憶を覗き見る、という魔法は登録されていない。

 登録されていないだけで、存在するーーという可能性が全くないわけではないけれど。もし、そんなものがあるのなら、かなり高度な技術を必要とするはずだ。

 

 思い出すのはエルマを捕まえたときに壊した、力の核。

 核は、魔法で埋め込まれたものではなかった。

 あの核は、魔法とは別の力の流れを感じられたから。

 核はエルマ自身を脅かすーー命を握っているものだった。そして、それを私が破壊してからのエルマはとても元気。


 エルマの力は、核に付随する能力ではなさそうだ。


 でも、きっと同じ種類ではあるのだろう。



 エルマ単独ならまだ「ムカついたから、成り代わってしまって、困らせよう」なんてこともあるかもしれない。

 でも、残念ながらエルマ単独犯ではなさそうだ。

 そして、番に成り代わることで、起こることはこの国の衰退だ。

 だから、私が犯人なら、それが目的。

 そこまで事を大きくしないと、リスクが高すぎる。

 王を新たに立てるつもりか、混乱に乗じて革命を起こすのかーー、あるいは違う場所から攻め込むのか。


「ロイゼ」

 名前を呼ばれて、考え込んで俯いた顔を上げる。

 深青の瞳が私を見つめていた。

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