17話
「……ところで」
ノクト殿を見る。
金の瞳は、相変わらず強い意志を秘めていた。
「満月の夜、というのは?」
エルマが言っていた。本当なら、満月の夜まで会えなかったはずだと。
満月の夜とは、何かの隠語なのか、それとも――。
「エルマ・アンバーが夢で現れたことがあったのです。夢見が悪かった、といったときがあったのを覚えておられますか?」
そういえば、私を魔術師団の施設に案内してくれた時に、そのように聞いていた。
「……施設を案内してくれた日ですか?」
「はい。夢かとも思っていたのですが、それにしては妙に現実味があり……。夢か現か確かめたかったのです。そこで、エルマ・アンバーは満月の夜に僕を迎えにくると」
――満月の夜に、迎えに来る。
エルマ以外にも複数の協力者や共謀者がいるとして。
満月をわざわざ選ぶ理由。
潜むには新月の方が良い気がするし……、おそらくそこに理由がある。
「わかりました。ところで、今回の件について、陛下にはどこまで報告を?」
「血液検査の件は陛下の依頼ですから、全て報告済みです。他も報告し……満月の件のみ確証が持てなかったので、まだですね」
「そうなのですね。では、満月の件も報告をお願いします」
満月の夜までにエルマに全て吐き出させるか。
それとも先に満月の夜が来るのか。
「ロイゼ団長?」
「……いえ。少し、風に当たってきます」
ノクト殿に快く送り出され、お気に入りのベンチに座る。
エルマと共謀者たちの考えや目的を考えてみよう。
竜王国ソフームに女神が与えた加護の一つである『運命の番』。ーー前世で誓い合った恋人たち。
そして、その中でも竜王陛下の運命の番は特別な意味を持つ。国の栄衰にかかわるのだ。
そして、私が今代の陛下の運命の番だった。
ここまでは、間違いない。
そして、エルマは私の前世のことを知っていた。
エルマ自身が前世の記憶を持っていて、過去の私の関係者だったーー、という可能性は?
しかし、前世の記憶を持つということは、エルマにも運命の番がいるはずなのだ。そうでないと、女神は記憶を残さない。
それに、誰にもこの役を譲りたくないと言っていた。
つまり、エルマの代わりになり得る人は他にもいる。絶対にエルマでないといけない理由はなかった、ということではないだろうか。
人の記憶を覗き見る、という魔法は登録されていない。
登録されていないだけで、存在するーーという可能性が全くないわけではないけれど。もし、そんなものがあるのなら、かなり高度な技術を必要とするはずだ。
思い出すのはエルマを捕まえたときに壊した、力の核。
核は、魔法で埋め込まれたものではなかった。
あの核は、魔法とは別の力の流れを感じられたから。
核はエルマ自身を脅かすーー命を握っているものだった。そして、それを私が破壊してからのエルマはとても元気。
エルマの力は、核に付随する能力ではなさそうだ。
でも、きっと同じ種類ではあるのだろう。
エルマ単独ならまだ「ムカついたから、成り代わってしまって、困らせよう」なんてこともあるかもしれない。
でも、残念ながらエルマ単独犯ではなさそうだ。
そして、番に成り代わることで、起こることはこの国の衰退だ。
だから、私が犯人なら、それが目的。
そこまで事を大きくしないと、リスクが高すぎる。
王を新たに立てるつもりか、混乱に乗じて革命を起こすのかーー、あるいは違う場所から攻め込むのか。
「ロイゼ」
名前を呼ばれて、考え込んで俯いた顔を上げる。
深青の瞳が私を見つめていた。
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!




