14話
既に見張役にも話をつけていたようだ。
見張役も驚くこともなく、ノクト殿に頷いている。
「やぁ、エルマ嬢」
ノクト殿は微笑みながら、その名を呼んだ。
その様子を映像で見ながら、思わず息を呑む。
……これは、いったい?
彼は、決して攻撃的な人間じゃない。だから友好的な態度には別に不思議を感じない。
でも、この態度は、友好的というよりもーー。
「ノクト様……」
対するエルマも瞳を潤ませて、ノクト殿を見ている。まるで、引き裂かれた恋人同士のようだ。
元は貴人用の牢ということもあって、エルマがあまり精神的に参っていないようでよかったーーのだけど。
どういうこと? もしかして、エルマは、陛下のことが好きなわけではないの?
だったら、エルマはなぜ……。
「ずっと考えていたんだ、エルマ嬢のこと」
甘く微笑むノクト殿からは、エルマを心の底から愛しているように見える。
手札を整えてみたと言っていたけど、これが手札の一つなの?
「私だって、ノクト様のことを考えない日はなかったわ。……私の王子様」
ーー王子?
エルマから出てきた言葉に、記憶を辿る。
そういえば、エルマに取引を持ちかけたときにもその単語がでていた。
エルマにとっての王子が、ノクト殿なら。
でも、それなら、どうしてーー。
「王子……ね」
ノクト殿はその言葉に、一瞬だけ眉を上げたあと、穏やかに頷く。
「まさか、満月を待たずに僕に会いに来てくれるとは、思わなかったよ」
……満月?
気になる言葉だ。何かの喩えだろうか。
「そう……そのつもりだったの。本当は、満月の夜まで、会えなかったはずなの」
「うん、その言葉が聞ければ十分だーーところで」
ノクト殿はにっこりと微笑んだ。
「互恵って大事だと思うんだよね」
「……っ!」
ぎゅっと、手を握りしめる。
その手の中には、金属の硬い感触がある。ノクト殿の誓約魔法の証である鍵。
互恵どころか、私は一方的にノクト殿に与えてもらってばかりだ。
「だからさーー」
急に笑顔を消すと、ノクト殿は、三本の指を立てた。
「知りたいのは三つ。一つ、目的、二つ、手段、最後に、理由だ。……それからなぜ満月の夜なのかも、教えてくれたら嬉しくはあるな」
「答えたら、いいことがあるの?」
エルマの桃色の瞳がノクト殿の金の瞳を見つめる。
「うん、そうじゃないと互恵にならないからね」
ノクト殿は頷いて、エルマを見つめ返した。
そして、ゆっくりと微笑む。
「教えてくれるなら君の言うところのーー王子様とやらになってもいい」
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