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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
五章 私が取り戻せたもの、取り戻せなかったもの

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9話

「だから、危険なことをしてほしくない。でも、私は君が魔術師団長であると知っている。その努力を実力を、直接見たわけではなくとも、ずっと報告を受けていた」

 そこで言葉を切ると陛下は、一度ゆっくりと息を吐きだす。

 そうして微笑んだ。

「君の魔法を信じている」

 ゆっくりと頭の中で言葉を噛み締める。

「――はい」

 強く、頷いた。


 ただ、私を信じているなんて言われたらきっと受け入れられなかった。

 でも、魔法なら。魔法を認めてくれるというのなら、それはこれ以上なく……。


「お任せください」

「ああ。緊急時に備えて、少し休む」

 頷くと陛下はベッドに横たわった。


 この部屋は城で一番安全な部屋。竜王陛下の居室だ。

 その守りをより強固にするため、魔法を使う。


 そのために、礼をし、立ち上がった。

 まずは、この部屋の結界を張りなおさないと。

 そして、魔力の糸をこの城全域に張り巡らせて、万一悪意ある者が侵入できた場合に、知らせが来るように。


 目を閉じて意識を集中させる。


 体内をめぐる魔力は、以前の生――ミルフィアにはなくロイゼだけにある力だ。

 ロイゼの記憶がなくても、ずっと一緒にいてくれたこの力。でも、今の方がもっとずっと近くに感じられる。

「――……」


 魔力を解き放った。

 体から魔法に使った魔力が抜けて、そのかわりに感覚がより鋭くなる。

 結界は完全に張りなおした。

 それにこの城中が私の魔力の糸を通して視える。脳に直接映像として浮かび上がるのだ。


 ……うん。今のところ、何もないわね。


 そういえば、エルマはそろそろ目を覚ました頃かしら。


 エルマの姿を探す。

「彼女を捕虜牢へ」

 ちょうど、ノクト殿がエルマを引き渡すところだった。

 まだ、エルマは完全に目覚めてはいないようで、ぼんやりとした目で瞬きをしている。


 現在、捕虜牢には誰も捕らえられていない。

 捕虜と言っても、もともとは貴人用の牢だから、そんなに不便はないはずだけど……。


 でも、エルマは一度脱獄したと聞いている。

 だから魔法封じの腕輪だけでなく、対策を取るべきだろう。


 そう思っていると、エルマを牢にいれたあと、ノクト殿が魔法を使った。

 内から外へはでられない結界を張っている。

 ……ノクト殿の魔法なら、安心だわ。


 エルマの件は、問題なさそうね。

 そう思いながら、糸から視える映像を切り替えようとすると、ノクト殿が振り向いた。


 映像越しに目が合う。

 ノクト殿は、私の魔力の糸に気づいている。

 魔術師団の中でも私の糸に気づけるのは、ノクト殿だけだ。彼は、私の師でもあったから、私の魔力も魔法も熟知している。



 思い出すのは、届くことなく宙をかいた指先。


「…………」


私の師で友でライバルだったあなた。

 だからこそ、彼と話さなければ。



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