12話
お待たせいたしました!
「選民主義の塊……ですか」
でも、先ほどの魔術師は女神と言っていた。
魔術師は貴族がほとんどと知識にあるから、貴族には優しいのだろうか。
……でも、それならば平民の私とどうして親友だったんだろう。
「うん。だから、君と友人関係だったのは、僕も疑問に思ってた」
……もし。
なんらかの手段で、ずっと前から私が運命の番であることを知っていたのなら。
偽るために、近づいたことも考えられる。
「そうなんですね……」
エルマ・アンバー。
私から見た彼女は、どうだったのか。
日記を強く握りしめる。
黒く塗りつぶされたページたち。
誰にも暴かれたくなかった、私のこころ。
「うん。……そういえば」
ノクト殿が私の持っている日記に視線を落とす。
「はい。日記を手に入れられました」
中身が黒く塗りつぶされていたことには、触れられなかった。
……きっと、がっかりされるだろうから。
「よかったね」
ノクト様は、私の表情で察したのか、それ以上深く聞かずにいてくれた。
「はい」
……本当に、良かった。
心の中で付け足す。
私の大切なこころの欠片。
「それじゃあ、そろそろいい時間だし。……邸まで、魔法で送るよ」
ノクト殿がそういって、手を差し出した時ーー。
「ノクト副団長!」
息を切らして誰かがやってきた。
制服のバッジ的に、3番隊の誰かみたいだ。
「ごめん、すぐに戻るから、少しだけ待ってて」
「わかりました」
転移魔法も今なら私も使えるかもしれない。
でも、慣れないと全く異なる場所に運ばれてしまう危険性もある魔法だ。
待っておいた方が無難だろう。
かつての私がよく休憩時間に、座っていたというベンチに座って、ぼんやりと日記の表紙を眺める。
大事に日々を綴っていたことが表紙からもわかる。
それなのに、黒く塗りつぶした日記。
「何を考えてたのかな……」
何を経験して、どう思ったのか。
全部知りたい。
でも、無理やりに暴きたいわけじゃない。
そう思いながら、表紙を撫でた。
「ロイゼ!!」
突然、大きな声で名前を呼ばれ、思わず俯いていた顔を、あげる。
緑色の瞳が爛々と私を見つめていた。
「っ、あーー」
声の主は、さっきの女魔術師だった。
「あなた、目が紫なのね」
大きな声に驚いて、顔を上げた。
……そんな言い訳をする前に。
彼女は、私の目の前でじっと、目を見つめる。
ーーどんな魔法を使っても、瞳は変わらない。
銀行で、口座を確認するときに思い出した、知識。
「団長と同じね? ねぇ、あなたでしょう。ーーロイゼ団長」
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