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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
四章 私の望み

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7話

 約束の午後、笛をもう一度鳴らすと、ノクト様がやってきた、

「やぁ、ロイゼ」

 そう言って微笑むノクト様の顔色は、あまり良くないように見える。


 ただでさえ忙しいのに、時間を作ってくれたのだ。

 申し訳ない。

 

「すみません、ご無理を言ってしまいましたね」

「そんなこと――……もしかして、僕、変な顔してた?」

「変……というより、疲れた顔をされています」

「あぁ、それなら違うよ。単純に夢見が悪かっただけ。ちょっとした、悪夢にうなされてね」


 ……本当かな。

 でも、さらりと言われてしまっては、これ以上追求できるはずもなく。


「お時間を作ってくださり、ありがとうございます」

「そんなに畏まらないで。ロイゼが僕を呼んでくれて、頼ってくれて、本当に嬉しいんだ」


 本当に幸せそうにノクト様は、笑う。

 前の私は、ノクト様を頼らなかったのかな。いや、魔法を教わる時点で十分過ぎるほど頼っているだろう。

 ……とすると。


 やはり、ノクト様と前の私との間にあった『何か』のせい?



「あの……」

「ん?」


 聞きたいと、知りたいと思う。

 私たちの間に何があって、何がそれほどまでにノクト様を駆り立てているのか。


 ……でも。


「いえ、なんでもありません」


 首を振る。

 隠された理由を暴き立てたところで、今の私には過程が抜け落ちている。

 そんな私が知ったところで、きっと意味はない。



「そう? そういえば、手紙でも話した通り、姿を変えてもらうことになるけどいいかな?」


 私の今の姿では、魔術師団に混乱を招くということで、魔法で姿を変えるのだ。


「はい。それでは、魔法を使いますね」


 姿変えの魔法。

 記憶を探ると確かにある。

 やっぱり、魔法は私の財産だ。


「――どうですか?」


 魔法で見た目とついでに声も変えて、ノクト様に確認してもらう。身長は、歩いた時に違和感が出ないように今と同じ。

 瞳は魔法を使っても変えられないのでそのままだ。

 顔立ちと髪型と髪色を変えるだけでも、雰囲気が変わるかなと思ったのだけれど……。


 ノクト様は、じっくり私の爪先からてっぺんまで見つめて――。


「……天才だ」

「――え?」


「あぁ、ごめん。やっぱりロイゼは、凄いね。君の知識にもあると思うけど、姿変えの魔法は調整が難しいんだ。姿を変えようとしても、どうしても前と似た姿になってしまうからね」


 ノクト様の言った知識を確認しつつ、髪をつまむ。

 金色の髪も全然違うし、顔立ちもイメージ通りなら、今とはかなり異なるはずだ。



「細部までイメージしていないとこうはならない。記憶がないのに、ここまで別人になれるとは思わなかった」


「ありがとうございます。……師匠」


 きっと、師匠の教え方が良かったのでしょう。


 そう続けて微笑むと、ノクト様は驚いた顔をした。


「……」

「ノクト様?」


 黙ってしまったノクト様の顔を覗き込む。

 ノクト様の顔は耳まで真っ赤だった。


「ロイゼは……ほんっとうに」

「? はい」

「    」

 首を傾げる。

 唇だけを動かした言葉は、わからなかった。



「ノクト様?」

「ううん! よし、それじゃあ、後は――」

 

 ノクト様が指を鳴らすと、私の服が変わった。

 以前着ていた魔術師団長の制服と似ている――けど、ローブに入った模様が違うし、色も違う。


「これが、魔術師団員の一般階級の制服だ」

「そうなんですね」


 なるほど。

 くるりと回って確認する。

 ドレスよりも動きやすい、いい制服だわ。


「それでは、行こうか。ロ――いや、名前も変えた方がいいね」


 何にする?


 ……そう言われて、ふと浮かんだ名前は。

「そうですね、フィア、でお願いします」

「わかった。じゃあ、フィア。行こう――君の職場に」


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
フィアって…ロイゼの前世の名前のミルフィア(だったはず…)から取ってってことですか…!?すごい…!
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