表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
一章 私が消えるまで
6/71

6話

「団長……?」

「!!!」


 ――団長。

 その言葉で、過去から現実に引き戻される。

 そうだ、私は――。


「どうしました?」


 俯いていた顔を上げる。

 第3番隊の魔道具開発専門の少年が、私を見つめていた。

「あ、いえ――。ノクト副団長が探してました」

「ノクト殿が?」


 そう言われて太陽を見ると、なるほどたしかに、このベンチに座る前よりかなり傾いていた。


「わかりました、ありがとう」


 お礼を言って立ち上がる。

 私は魔術師団の団長なのだ。

 しっかりしなければ。


 ……本当に? だって、竜王陛下は私のことを――。


「……っ」


 頭の中に浮かんだ考えを首を振って締め出す。


 私は団長だ。

 不純な動機からだとしても、現時点で私がその地位についていることは間違いない。


 だったら、その地位に恥じないひとにならないと。


「ロイゼ団長?」

「――いえ。執務室へ戻ります」


 少年に微笑んで、今度こそ執務室へと歩き出す。


 

 ノクト殿、怒っているだろうな。



 かつて師だった彼のことを考えながら、道を急いだ。





「……」

「団長」

 執務室に戻ると、ノクト殿が腕組みをして待っていた。


「遅くなって、すみません」


 ……これは説教2時間コースかな。


 まぁ、当然だ。

 少しと言っておきながらかなり長い時間席を外していた。団長にしか処理できない書類もたくさんある。

 随分と執務が滞ったに違いない。


 ノクト殿によって防音魔法が展開されるのを感じた。

 長い説教が始まるのを覚悟しながら、ノクト殿を見つめる。

 ノクト殿は、つかつかと私に近寄った。


「……どうして」

「え、ああ、休憩時間が長すぎたことですね。それは、少しぼんやりしていて」


「違う! 僕が聞きたいのは、団長は――ロイゼは、どうして僕には何も言ってくれないんだ」


 それは、初めて見る表情だった。

 魔法を暴発させて私が死にかけていたときよりも、ずっと、苦しげな表情。


「ロイゼ、君は言ったね。絶対に魔術師団の団長になりたいって」

「――」


 言った。

 何度も他の人に馬鹿にされた。

 それでも、私はアレクに竜王陛下に会いたい一心で駆け抜けてきた。


「目標に向かって、努力する君を見ていた。あまりにもひたむきで――触れると切れてしまう糸みたいで心配もしてた」

「!!」


 そう、だったんだ。

 たまに休憩だ、と言ってノクト殿が私にお菓子を持ってきてくれたのは、その心配からだったのかしら。


「……君が僕を越えても、この8年間僕はずっと君をみていた。いつか君が助けを求めたらこの手を差し出せるように」


 ぎゅっと自分の手を握りしめたノクト殿は、ふ、と息を吐き出した。


「でも……君は団長を目指した理由も、今元気がない理由も何も教えてくれない。この8年間で君が見た僕は、そんなに信用がおけない人間なのか?」


 

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ