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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
一章 私が消えるまで

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5話

 ――翌日。

 私は魔術理論の教本を抱えながら、女子寮から学校へと走っていた。


 教本は難しく、何度も何度も遡って前の頁を確認しながら読んだ結果、寝坊したのだ。


 全て読み切ることはできたし、頭の中には入ったけれど、授業を欠席すれば意味がない。


 授業が始まるまで、あと2分。


 ……全速力で走り続けられれば間に合う。

「あと、少し――」


 息を切らしながら走っていると、上から歓声が聞こえた。


 走りながらそちらに視線を向ける。

 他の生徒たちが校舎の窓から身を乗り出して私を見ていた。


 どうやら、貴族が多いこの魔術学校では、平民が爆走している姿が物珍しかったようだ。


「まだ間に合うぞー!」

「間に合う方に俺は賭けたからな!! 走り切ってくれよ!」


 応援してくれる声の中で、嘲る声が聞こえた。


「見て、あの顔」

「はしたないわ、さすが平民ね」


 かっと頬が熱くなる。


 少しでも早く学校に着いて、この声を止めたい。そう思って走る速度を上げようとした。


「――っ!?」


 それがいけなかった。

 無理に回転速度を上げたせいで、足がもつれる。


「……あ」


 それでも、ノクト様から借りた教本があるから手をつけない。


 地面が、近づく――。


「!!」


 衝撃に備えて目を閉じる。


 その瞬間、ふわり、と体を風が包んだ。

「え――」

「大丈夫?」


 ――鈴を転がしたような、声だった。

「ふふ、ぎりぎり魔法が間に合ったわね」


 楽しげな声に目を開ける。


 まず目に入ったのは、陽光を受けて輝く、金の髪。

 そして、特徴的な桃色の瞳。


「あなたの走り、見事だったわ!」

 そういう桃色の瞳に嘲りは感じなかった。

「……助けてくれてありがとうございます」


 体がふわっと浮いた魔法、すごかったわ。

 ――私はまだ、あんな魔法は使えない。


「ううん。私はエルマ、エルマ・アンバー。アンバー侯爵家の次女よ。あなたの名前は?」


 彼女は――エルマは微笑んで私にハンカチを差し出した。スノードロップの刺繍の入った、可愛らしいハンカチだった。



 そのハンカチをありがたく受け取りながら、微笑み返す。


「私は、ロイゼ・イーデンです」


 ――これが、のちに親友となるエルマとの初めての出会いだった。

 


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悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
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