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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
二章 私が消えたあと

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ハロルド 1-5話

「……消失魔法の詳細、ですか?」


 副団長が怪訝な顔をする。


「ああ。それから――エルマ・アンバーの捕縛指示を彼女を護衛している騎士に出しておけ」


 側近の一人にそう告げる。


「しかし、彼女は侯爵家の人間で――」

「竜王の番を騙り、貶めた。理由はそれだけでも十分だ。それにアンバー侯爵の手の者が城へ迫っている。逃がされる前に急げ」


 竜の目は広い範囲を見渡せる。

 実際には瞳には映っていないことも。


「はっ!」


 側近たちがばたばたと出ていったのを確認して、副団長に向き直った。


「それで……消失魔法の詳細を教えてほしい」

「詳細と言われましても、実はこの魔法は、理論がわかっていないのです」


「わかっていないとはどういうことだ?」


 困った顔をした彼に、再度尋ねる。


「魔力でその対象を包み、消えろと念じれば、それは消えるということだけしかわかっていません。どういった仕組みで消えるのか、わかっていないのです」



 ……なるほど。


「では、副団長。今、その魔法を使えるか? 対象物は何でも良い」


 その魔法が、見られればきっと。



「……」


 彼は一瞬顔を歪めた。

 彼はロイゼの消失を間近で見ている。

 だから、心の傷を抉ることになるとわかっている。


 だが、私はどうしても、その魔法を見なければならない。


「――頼む」


 頭を、下げる。


 私に魔法の素養はない。


 だから、彼に頼るより他はない。


「……かしこまりました」


 彼が頷き、私のそばにあった水差しを指差した。


「そちらで良いですか?」

「ああ、構わない」


 

 私が頷いたのを確認すると、彼は目を閉じた。

 その瞬間、ぶわり、と「何か」が水差しを包んだのがわかる。


 なるほど、これが魔力か。


 そのことを意識した瞬間、水差しは消えた。


 そして、きらきらと光が舞う。

 その輝きを漏らさぬように、目で見る。



 ――捕えた。


「そこ、にいるんだな」


 ベッドから降り、窓に近寄る。


「陛下……?」

「副団長、礼を言う。――おかげで、間に合いそうだ」


 私の言葉に、はっと彼が瞬きをする。


「では、ロイゼは――」

「あぁ。――生きている。かなり危うい状態だが」



 彼の顔に、希望の光が灯る。

「……っ、ロイゼ。ロイゼは――」

「悪いが、これ以上説明する時間が惜しい。失礼する」


 そう言って窓から飛び出して、羽ばたく。



 ――ロイゼ。

 ひとりぼっちで、あんな場所。

 寒かっただろう。

 辛かっただろう。



 ――早く、早く、早く、早く。



 ロイゼの命の灯火を感じる。

 それは、徐々に細くなっている。

 このままでは、本当に消えてしまう。




 ――早く、早く、早く、早く。





 翼が折れても構わない。

 それでも、君の元へ急がねば。



 冥府に連れ去られてしまう前に。

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